第18話:魔大陸イントゥーラス
今日は依頼がある日だ。今日も朝早くに目を覚ました。最近、これが新しいルーティンとして定着しつつある。
……なんて、誰もが私の殊勝な成長でも期待したかもしれないが、残念ながらそんなことはない。
「くぅうううああああ!」
「ユウカワ、早く起きなさい」
一体全体、なんで依頼なんて行く必要があるのだろう。手元には金貨が4枚もあるというのに。
「今日の仕事は銀貨3枚です」
「えへへー。金貨が4枚もあるのに、どうしても行かなきゃダメですか?」
「行きますよ」
ティアの冷徹な返答に、私はすっかり意気消沈してしまった。
「はぁい……」
*
道中は険しかった。紆余曲折の末にたどり着いたのはジャングル。
「なんで目的地がどこなのか教えてくれなかったんですか?」
あっ。これ、どう考えても来る場所を間違えた。
「その顔を見るに、教えていたら当然来なかったでしょうね」
私の視界に広がっていたのは、数え切れないほどのバナナだった。
「見えますか? 『茨の能力』は使わないでくださいね。あの事件以来、私たちを密かに尾行しているという情報を掴んでいます」
「……」
『オージスティール』という名前を聞くだけで、鳥肌が立ち、身の毛がよだつ。
「はい……」
冷や汗が流れた。あの時の記憶が、再び脳裏をよぎる。
「これらはすべて『炎弾』で燃やしてください。慎重に燃やすんですよ。魔力が尽きそうになったら、その場ですぐに言ってくださいね」
「はーい……」
返事と同時に、肩ががっくりと落ちた。アレクシアを連れてこなかった理由が、今になってよく分かった。さすがにアレクシアは過激だから、この森を丸ごと焼き尽くしていただろうし。
「火の魔法——『炎弾』!」
ティアがまずお手本を見せるかのように、バナナの皮を燃やした。いや、よく見るとバナナじゃないな。一体何だ、これ?
「この森には変態の猿が住んでいます。私を守ってくださいね」
「え?」
急に何を呆れたことを言い出すんだ、この人は。変態の猿って、一体どういうことだよ。
ただの冗談だろうと思いながら、四方に散らばるゴミを適当に燃やしていった。
「ふむふむ。とても上手です」
ちょっと待って。肝心のティアはどれくらい燃やしたのかな、とそっと首を傾げて覗き込んでみたら……。
「全然進んでないじゃん!」
「私は自分の身を守らなければなりませんから」
ティアは戦闘態勢を取った。どこか頼りない構えに見えるが、威力だけは強力そうだ。
まさにその時だった。
「ああ! ドンキー○ングだ!」
ティアが言っていた、まさにあの『変態の猿』が現れた。
「わ、私のパンツを返しなさい!!」
「クソ野郎! それは未来の私のものなのに! 絶対に許さないんだからああ!!」
「え?」
今のは、間違いなくティアの声だ。
私はその声を無視し、変態の猿の後ろを猛然と追撃した。




