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リブートライフ  作者: フロ
黒薔薇の洗礼
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第1話 : 黒薔薇の洗礼

いつものように、俺は本を読んでいた。前世の怠惰で情けない俺ならとっくに投げ出していただろうが、異世界に生まれ変わったからには過去を猛省し、全力で生きると決意したのだ。だからこそ、この退屈な書籍も我慢して読み進めることにした。


「魔法とは、全心から気をもみ出し外へ押し出すもの……」


本に書かれている不親切な解説を睨みつけながら、俺はすぐに窓辺に手を伸ばした。全身の感覚を研ぎ澄まし、体内の見えないエネルギーを指先に集めようと試みる。


「水魔法、氷弾! ……これ、本当にいけるのか?」


しかし、指先からは冷気の一片すら生まれなかった。やはり俺には魔法の才能が欠片もないらしい。あまりの理不尽さにため息を漏らそうとした、その瞬間だった。


手首の皮膚の内側から、焼け付くように激痛が走った。肉を裂き、骨を侵食するようにして、黒く禍々しい植物のいばらが雷のような速度で飛び出してきたのだ。


「ウウォーー!」


叫び声と同時に放たれたいばらは、俺の意思を完全に無視して暴走した。鋭い棘を無数に生やした蔓は、地下室の強固な石壁を易々とぶち壊し、深く刺せばそのまま反対側まで突き抜けた。このままでは部屋ごと圧殺される。


「止まれ! 止まれってんだ!」


俺は自分の手首から溢れ出る悍ましいいばらと、文字通り命懸けの死闘を繰り広げた。前世の執念と、絶対にここで死ねないという本能を爆発させ、必死にその力を押さえつける。血を吐くような抵抗の末、ようやく制止に成功した。だが、体内の魔力を使いすぎたせいか、胃のあたりがひっくり返りそうなほどの激しい悪心に襲われる。


「マジで……ベッドに……──」


限界を迎えた俺の身体は、這うようにしてベッドへと向かい、そのまま倒れるようにして深い眠りに落ちて気絶した。


* * *


どれほどの時間が経っただろうか。次に重い瞼を開けた時、俺の視界には見慣れた天井が広がっていた。精神が戻り、静かに目を瞬かせていると、頭上から聞き覚えのある声が聞こえてきた。


「ハギョカン ユウカワも本当に、こんな床で眠っちゃうなんて。」


俺が地下室の床で無様に気絶していたのだと、言葉で教えてあげたかったが、まだ3歳に満たないこの身体では思うように声が出ない。


ふと視線を向けると、そこには銀髪に青い目をした我が母、シルフィアがいた。見た目はあまりにも若々しく、とても母親には見えない美少女だが、驚くことにこれで20代後半なのだという。この世界で大人の扱いを受ける年齢は、およそ10代後半なのだろう。


お袋や親父は、俺が魔法の練習に夢中になって知恵熱でも出して倒れたと思っているようだ。だが、俺の頭脳は冷静だった。あぁ、小説の地下室にはもっと何かが隠されているという話を思い出す。あの悍ましくも圧倒的な力を秘めたいばらの正体を知るためにも、もっと魔神語の勉強をしなければならないと強く誓った。


俺はまだ気怠さが残る身体を再び起こし、書斎へと向かった。


「コンロック、コッロック……!」


放置された高書を開くと、部屋中に積もっていた埃が一斉に舞い上がり、激しく喉を刺激して、思わず激しい咳が溢れ出た。


「クナジョナ、本当にめちゃくちゃだな。」


目の前に広がる古びた魔導書をめくりながら、俺は毒突いた。正直、これらの本が前世でよく読んでいたライトノベルのように、分かりやすく面白いエンタメ小説なら良かったのに。だが文句を言っても始まらない。俺は必死に魔神の本を探し求めた。


そこから3時間ほど、周囲の音を遮断して没頭し、一文字一文字を脳裏に刻み込むように集中した。その結果、ようやくその本に書かれた全ての文字を読み終えることに成功した。しかし奇妙なことに、この分厚い本全体を通して配置されている文字は、わずか12個しか存在しなかった。


「ただ、飲むだけなのか……?」


解読した奇妙な一節を口の中で呟く。魔法は使えない。だが、俺の手首から出たあのいばらの鞭、そしてこの本の秘密。俺はこの世界の謎を解き明かすための鍵となる、その12個の文字を頭の中に完璧に刻み込んだ。


* * *


そして、一日の終わりと共に、俺が最も嫌い、最も恐れる悍ましい時間がやってきた。


「ユウカワ、どこにいるんだい?」


静まり返った屋敷の廊下から、あの不気味な父親カーナマンの声が響いてきた。時計を見ずとも時間が分かってしまう自分が呪わしい。この時間になると、カーナマンは決まって俺と一緒に寝ようと部屋に押し寄せてくるのだ。


前世では31歳の引きこもりだった大人の男が、今や自分よりも遥かに年下の男からパパを自称され、過剰なキス洗礼を受けなければならない地獄。男である俺が、同じ男のあごヒゲの痛みに耐えながら添い寝を強要されるこの絶望。これ以上の精神的苦痛が他にあるだろうか。いっそその添い寝の相手がシルフィアお袋ならどれほど救われるかと思うが、シルフィアはあまりにも美人のため、逆に母親と呼ぶには若く見えすぎた。せいぜい20代後半だし、この世界で大人になる年齢はおそらく10代後半なのだろう。


ダルカン──


重々しい音を立てて扉が開き、カーナマンが侵入してきた。俺は前世で培った引きこもり特有の危機回避能力をフルに発揮し、右端の本棚の隙間へと、気配を殺して滑り込んだ。


「ふぅ……もう行ったか?」


心臓の鼓動を抑えながら本棚の隙間から伺うと、暗がりにカーナマンの顔が現れた。


「ユウカワ、パパと一緒に寝ようね〜」


その執念深い声に、俺は全身の毛が逆立つような恐怖を覚えた。


* * *


昨日もやはり、あの耐え難いキス洗礼の嵐の中でようやく意識を失うようにして眠りについた。

翌朝、時計の針が8時を指した瞬間に目を覚ました俺は、カーナマンの拘束から逃れるようにして腕の中から這い出た。そのまま逃げるようにして地下室へと向かう。


そうして4時間ほど、本の世界にどっぷり浸かっていたその時、上の方からシルフィアお袋の澄んだ声が響いてきた。


「ユウカワ!」


「はい!」


俺は我に返り、大きな声で返事をしながら、地下室の薄暗い階段を急いで上がっていった。そこには、俺を優しい眼差しで見つめるシルフィアが佇んでいた。彼女は静かに口を開き、俺にこう告げた。


「あなたに魔法を教えてあげようかと思うのだけど、どうかしら?」




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