第12話:魔大陸イントゥーラス
「おい。」
アレクシアがリュウスケを鋭い眼光で睨みつけ、トバーロンを手に持って脅迫した。俺から見てもこれは少しやりすぎな気も……しなくはない。いっそ、もっと金を要求してみるか。
「 お金をもっとジュショー。それとも警備隊を呼ぶか?」
「あ、ああ! いやいやいや! 悪かった、金、金出すから、ほら。」
あれ? 誰も止めないな。異世界の警備隊はそれだけ恐れられているのだろう。ただそれだけだ。おかげで銀貨2戦を余分にぶんどることができた。
金貨:100万円。
銀貨:10万円。
銅貨:1万円。
石板貨:1000円。
異世界の貨幣をこちらの価値に換算すると大体こんな感じだ。正直、俺もよく分かってない。俺たちは依頼費として銀貨3戦を受け取り、さらにボーナスとして2戦追加でもらった。
「アレクシア、もういいですよ。」
ティアが淡々と言った。
「ちぇっ、苦労させといて逃げようとした奴なのに。」
アレクシアは名残惜しそうにリュウスケの胸ぐらを離した。『今度またこんな真似したら、マジでタダじゃおかないからな』という目つきだった。恐ろしいな。
俺たちはそのまま家に帰った。
「アレクシア、先生。」
俺は二人を呼んだ。俺たちは毎晩、母のシルフィアに祈りを捧げている。自分でも気づかないうちに涙が出そうになることがある。
「あ、はい。」
「うん。」
アレクシアも最低限の礼儀はわきまえている。母シルフィアに祈りを捧げる時が、普段はめちゃくちゃ騒がしいコイツが一番静かになる瞬間だ。
ただ感謝するばかりだ。母親を失う悲しみがどんなものか、アレクシアは痛いほどよく知っている。アレクシアも、全く同じ目に遭ったからだ。アレクシアの過去を詳しく話すことはできないが、両親がアレクシアの代わりに処刑台に送られたのだ。俺が話せない理由は、アレクシア自身がそのことを一切口にしないからだ。
そうして祈りを終えた。
「今夜は誰の番ですか?」
俺の大好きな時間。それは、ティアと一緒に寝られる時間。
「俺!」
俺は元気よく叫んだ。アレクシアが睨んできた。なんだよ、今夜は俺の番で合ってるだろ。
「はい。行きましょう。」
ぴょんっ!
ベッドへと飛び込んだ。今日は色々なことがあった。だからなのか、いつもより眠気が早く襲ってきた気がした。
***
朝、俺が目を覚まして最初にすることは、すやすやと眠っているティアを眺めることだ。肌がもの凄く白い。
それからアレクシアのところへ行き、シャドーボクシングを始める。
「ハッ! フッ!」
本気で一発殴ってやりたい。
「うーん……」
アレクシアが目を覚ました。
「てめぇ、何してんだ……?」
ヤバい、逃げなきゃ。
「身代わりの茨 !」
俺は全力でクローゼットに向かって走り、その中に隠れた。頼む、見つかるな。
「お前、見つけたらタコ殴りだからな。」
見つかったら、俺の顔は紫色に染まるだろう。そう怯えていたその瞬間。
「見ーつけた。てめぇはマジで終わりだ。」
クローゼットが開けられ、アレクシアの凶悪な笑みが覗いた。こうなったら、前にティアに教わったあの茨の技術を使うしかない。
「バンドのとげの木!」
俺はトゲを排除した状態で、純粋な茨の蔓だけでアレクシアをぐるぐる巻きに縛り上げた。原理は簡単だ。トゲのない茨を頭の中で想像して、魔力を放出するだけでいい。
「くっ……」
「今だ、逃げろ。」
結局、俺たちは朝から部屋をめちゃくちゃにしたせいで、起きてきたティアにこっぴどく叱られる羽目になった。もう二度と、あんな悪ふざけはしないと心に誓った。




