第11話:魔大陸イントゥーラス
「あ、あの、リュウスケ様!」
ティアが依頼人の名前を呼びながら、扉をコンコンとノックする。だけど、中からは何の返事もない。
「あ、すみません!」
扉が開いて出てくるのかと思いきや……まさかの後ろから現れた!?
「ちょっと買い出しに出ていまして……」
それは困る。いっそ、報酬の上乗せでも要求してみるか?
「じゃあ、報酬をもう少し、うわっ!?」
アレクシアの鋭い手刀が、俺の脳天に容赦なく振り下ろされた。こういう時だけ無駄に勘が鋭い。
『まだ依頼を達成してないでしょ!』という強い視線が突き刺さる。
「ええ、ご存知の通りトバーロンです。信じています、どうか見つけてください」
そんなに純粋に信じられると、逆に困るんだけどな。
「お任せください!」
アレクシアが自信満々に胸を張る。おいアレクシア! 俺は全く自信ないからな!?
「ユウカワ?」
ティアが俺を呼んだ。
「はい?」
「アレクシアと一緒に、まずは市場を見て回ってください」
***
「先生と一緒に来ちゃダメなんですかー?」
アレクシアがぶつぶつと駄々をこねる。これだから一緒に行くのは本当に気が進まないんだ。
「ダメです。アレクシアは私と一緒に来てください」
ティアの断固とした言葉を聞いて、俺は内心すっかり怯えていた。
(あぁ……なんでお前が来るんだよ……)
「アレクシア、いい加減にしなさい。耳にタコができるわ」
「ちぇっ」
俺たちの仲の悪さは、普段からこんな調子だ。
***
「見つけたっ!」
アレクシアが大声を張り上げた。その声につられて、周囲の視線が一斉に俺たちへと集まる。
トバーロンは地面に突き刺さっていた。……一体どうやってあんなところまで行ったんだ?
「しっ、静かに、静かに、静かにっ!!!」
俺は慌ててアレクシアの興奮をなだめた。強力な魔獣たちが棲むイントゥアレス大陸にはトバーロンが生息していないから、むしろ見つけやすかったのだろう。
「これで私は先生に褒められるもんねー♪」
正直、ちょっと羨ましい。ティアが褒めてくれる時は、いつもぎゅっと抱きしめながら、その華奢な手で優しく頭を撫でてくれるのだ。
俺たちは急いでティアのもとへと駆け戻った。
「あ、はい。見つかりましたか?」
だが、ティアは戻ってきたトバーロンには目もくれず、ただ魔法の杖をじっと見つめている。
「先生……」
ここで、新たな問題が発生した。依頼人が逃げやがった。……探しに行くか。




