第9話「新入り交換留学」(後編)
LRAの属する時野谷財閥内の企業同士で新入社員を一か月入れ替えて派遣する「新入り交換留学」。これは財閥内の企業が一丸となって人材を育成するためのプログラム。
しかし、ベニコとナツの二人と入れ替わりで来る二人、サカエ(平子榮)とアカリ(新妻燈)は超がつくほどのクセモノで…。
―――――リルモンテ北大通り・末柄ビル前―――――
サカエ(平子榮):あー!ここが末柄さんちー?
アカリ(新妻燈):よく地方都市にある感じの六十年代的なビルだねー。
ベニコ(末柄紅子):その魔界感ゼロな感想…。
サカエ:一番上なんでしょ?毎日昇り降りしてるのー?
ベニコ:うん。別にめんどくさくはないよ。
サカエ:まーそうだろうねー。別にそうは思ってないけどー。
ベニコ:(じゃあなんで聞いた!)
サカエ:末柄さん煽り耐性ないから面白くってー!
アカリ:サカエに悪気はない。地でこういう性格。
ベニコ:余計めんどくさいってそれ!
ベニコたちは会話をしながらビルの階段を上る。
サカエ:ねーねー。リノベ自由物件にすればー?一階でお店やる人とかいないのー?
アカリ:なんかリルモンテってティーリアより田舎だねー。いがーい。
サカエ:ねー。せっかく特急も停まるのに全然さっぱりだよねー。
ベニコ:ステレオ放送で人の地元ディスんなって!寂れてるからこそLRAの出る幕があるんだっつーの。
サカエ:お!かっこいー!かっこいいよー紅子ちゃーん!
アカリ:おーっ!末広がりで大手柄!
ベニコ:煽りにしか聞こえねー!つーかナツのヤツまた要らねーこと吹き込みやがって…。
サカエ:お店始めたら呼び込み役やるよー!私やアカリが呼びこみすれば取れすぎたキャベツばりにおじさんいっぱいだよー!
アカリ:稼ぐだけ稼いだら畑にすき込んじゃえー!
ベニコ:なんでおじちゃん限定なんだよ!しかもノリがぼったくりバーと同レベじゃねーか!
アカリ:だってー。お金持ってて若い女の子にホイホイついてきちゃうしー。紅子ちゃんも武器は使った方がいいよー。
そんな他愛もない物騒な話をしながら、ベニコたちは五階へと到着した。
ベニコ:というわけで、ここが末柄ビル五階、つまり私の自宅…
サカエ:千里眼で見てるー!わー…!おしゃれー!ブルックリンスタイルっぽくていーないーないーなー!!
ベニコ:覗くな!覗くな平子ーッ!まだドア開けてねーっつーの!それに片づけてないからマジでやめてくれ!つーか〇代じゃねーんだからやめろ!!!すぐに片づけるから待ってろー!!!!!
ベニコはサカエとアカリを玄関先に待機させ、胡散臭い起業家が億単位の金を秒速で稼ぐような速さで自宅の片づけをはじめる。と、思ったのも束の間。
ベニコ:はあ…はあ…おまたせ。どうぞ。
サカエ:はわわ…速ーい…
アカリ:追い込まれると実力の倍以上の力が出るタイプなんだね…
サカエ/アカリ:…ドン引き…。
ベニコ:お前らが煽ったんだろ!
アカリ:違うよー。いまさら与〇〇を地の文に出してきてウケを狙おうとする寒い感性にドン引きしてるんだよー…。
ベニコ、左手で頭を抱えつつ二人を招き入れる。
―――――(末柄ビル5階・ベニコの自宅)―――――
サカエ:いい!すっごいいいー!
アカリ:ホントに学生時代にやったのー?
ベニコ:リノベ雑誌やウェブを見ながら自分好みな感じで頑張ってみたー。
サカエ:このレトロな蛍光灯いいよねー。
アカリ:真ん中の小ぶりなシャンデリアがステキー。
と、突然ナツが両手に大きな買い物袋を提げて現れる。
ナツ:電気工事士法違反末柄紅子容疑者(23)の自宅はこちらですか?
ベニコ:いきなり人んちに上がり込んで私に濡れ衣を着せるな。
ナツ:女子の一人暮らし。鍵くらいちゃんとかけておきなさい。というわけで今日は平子・新妻両氏の歓迎パーティだ!
サカエ:わーい!谷田貝なっちゃん優しー!
アカリ:うれしー!なっちゃんイケメーン!!
ナツ:末柄君!ピザを焼くためのオーブンを要求する!
ベニコ:お、ピザまで作ってきたんか!焼くぞ焼くぞ!
そして、唐突に始まったサカエとアカリの歓迎パーティ。徐々に酒も入りナツが買ってきた食材やベニコの冷蔵庫に入っている食材で闇鍋、タバスコ入りシュークリームのロシアンルーレット、ナツが買ってきたスピ〇タスで火吹き芸…などなど火曜日の夜だということを忘れ、末柄ビル最上階は野放図な大盛り上がりの様相を呈していた。
ナツ:ねーベニコ!ギンミヤ飲みたいギンミヤ!
ベニコ:今日はハレの日だ!ガンガン行っちまえ谷田貝!
サカエ:あー!末柄さんの大好物!ついに本丸攻めちゃう感じー!!!平子新妻もガンガンやっちゃうよー!!!
アカリ:ギンミヤロックをみんなでイッキー!
ナツ:まかせろー!!!!
アルコールと群集心理で完全に気が大きくなっている女子四人。なんと火曜深夜、いや水曜未明だというのにアルコール度数25度の焼酎をロックで一気…下界もといこちらの世界では絶対に制止されるような行為を酒の勢いで始めてしまった。
下界の善良な読者の皆々様は 絶 対 に イッキ飲みはやめましょう。そして…。
―――――(翌朝)―――――
朝のリルモンテ。末柄ビル5階。ナツの携帯が鳴る。画面には上司の名前を表示しながら。
ナツ:・・・・・・目覚ましうるさいなあ…。この音電話だったような…うーん…。・・・電話?
ナツ、携帯を手に取り画面を見る。サキからだ。同じようにベニコの携帯はアイミからの着信の真っ最中であった。
サカエ:ふええ・・・すごい量飲んだ気がする…えーっと・・・安良岡さんて常務さんだよね…?
ナツ:…はい……。
サキ(大出咲):おはようなっちゃん。あなたはいまどこで何をしていますか?
ナツ:この空の続く場所にいます…。
サキ:今手もとに時計ある?
ナツ、時計を見る。…時刻は9時半を指していた。
ナツ:!!!!!!!!!!!!ベニコ!起きろ!9時半過ぎてる!遅刻!遅刻してるから私たち!
ベニコ:!…9時半!平子さん!新妻さん!起きて!!!つーか4人もいてなんで全員遅刻するまでつぶれてんだ!
サカエ:ふえええええ遅刻ーー!!アカリ!起きてー!
アカリ:……吐きそう……。
ベニコ:玄関の脇の右手の突き当りの手前がトイレ!絶対その辺でぶちまけないでよ!
まさに“後の祭り”という言葉が似合うような騒ぎっぷりなのはご覧の通り。当然ながら、末柄・谷田貝・平子・新妻の4人は舘野はじめ上役・上司たちからこってり絞られたことはここに書き記すまでもないだろう。




