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着いたところは異世界でした.  作者: 千野恵
 第一章  異世界にこんにちは
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11.物語を語ろう

 サラジェン伯の屋敷で眠りについた俺は、次の日昼過ぎになって起きた。

 一緒に寝ていたファンに起こされるまで夢も見なかった。


 『 いいかげんにおきろー。ねぼすけー。おひるだよー。』


 ファンに足で額を直撃されて、何事かと飛び起きて、ああ、異世界だと理解したくなかったけれど、分かった。

 目の前で羽ばたく妖精がいるなんて・・・、俺の妄想世界の住人のはずだったのに・・・、夢ではなくこれは現実だ。


 「おはよう。ファンは早いな。もう朝か。」


 寝ぼけ眼で俺が言うと、ファンがプンプンした様子で俺の頭で飛び跳ねた。


 『 おひるなんだよ。クレスチンがそろそろこさなくてもだいじょうぶか、ってしんぱいしてたよ。』


 「ああ?昼だって?」


 思わず外を見ると、日は天高く昇っている。

 貴重な一日がもう半分も過ぎたのか?

 まずい。色々とクレスチンに聞きたいこともあるし、あのジャンプも見ておきたいし、言葉も覚えなきゃいけないし、等々気持ちばかり焦って取り留めもなく働かない頭で考えた。


 『 あさごはんもたべてないから、クレスチンがしんぱいしてたの。あたしもたいくつだからおこしにきた。はやくおきてあのえほんよんでよ~。それであめもちょうだい。』


 「あれは絵本って言っても、続き物だから分らないのが多いよ。ワンピースなんて途中もいいとこだし、ほとんどが連載物なんだ。だからあれを訳して読んでも、チンプンカンプンだと思うよ。飴は後でな。ご飯食べてからだ。」


 『 え~。じゃあ、スシローがしってるものがたりがあるなら、きかせてよ。』


 う~ん。グリム童話とか、アンデルセン童話とか、施設の子どもたちに読み聞かせてやってたから、そういうのは得意だけどな。今日は、言葉も少し覚えたいんだがなあ。


 「そうだな。いくつか知ってる物語を聞かせようか。お姫様が出てくる物語がいいか?」


 『 おひめさまはいっぱいいるよ。アコウフックのくにでもおうじょがいるよ。スシローはおうじょをしってるの?』


 「いやそうじゃなくて、物語の王女の話があるんだ。ま、いいや、知ってる物語をありったけ思い出して、ファンに聞かせてやるよ。」


 『 ほんと?やった~。じゃあ、はやくごはんたべて。』


 現金な子だな。もうニコニコしてるよ。

 じゃあ、ファンのご希望に添えるようにサクサク食事して物語を語りましょう、っと。


 昨日の食堂で朝兼昼食を食べていたら、食後に広間に来てほしいとクレスチンからお呼びがかかった。

 なんだろうと思って広間に行くと、大勢の人がぎっしりと詰めていた。

 なんと、領主やクレスチンや使用人も、ファンに聞かせる物語を聞きたい、と言うのだ。

 どうやらファンが俺が物語を聞かせる、と言ったことを皆に言いふらしたようだ。

 でも、子どももいるけど大人の方が多い。

 「子供用の童話なんで、大人が聴いても面白くないと思うんですけど、いいんですか?」


 『 ここでは娯楽が少ないのだ。ドウワと言うのが何かわからないが、目新しい物語を聞かせてもらえるのなら、どんな物語でもそれが聴いたことの無い物ならば何よりの娯楽となるのだ。我々にもどうか聞かせてもらえないだろうか。』


 なんか凄く下手したてに出てお願いされてしまった。

 期待されるのは嬉しいけど、責任重大だ。

 ここにいる人たちが満足するような話が出来るかな。悲劇はやめとこう。

 「シンデレラ」とか「白雪姫」とか、女の子用の話をしようとか思ってたんだけど、大人の男性もいるし大丈夫かな。日本の「桃太郎」とか、「一寸法師」と「かかぐや姫」とかも考えてたんだけど、何がいいだろう。

 「アーサー王と円卓の騎士」は、・・・だめか長すぎるな。「ロビンフット」も長いか。

 そうだ、映画のディズニー作品なら老若男女に受けてたから、それでいいかな。


 「シンドバッドの冒険」とか「アラジンと魔法のランプ」でもいいな。

 何が気に入るか分からないから、取りあえずこの二つのどちらかを話してみようかな。


 頭の整理をして、ストーリー展開を考えて、っと。


 よし、整理がついた。「アラジン」にしよう。


 「では、地球のある国の物語を語りましょう。」


 そして俺は、語りだした。

 ファンはよく通訳してくれた。

 途中、意味の通じない言葉もあったが、説明しながら話を進めていった。


 集まっていた人たちの反応を見ていると、真剣に聞いてくれている。

 俺は人々のノリがいいので、子どもたちに語り聞かせる時のように、声に抑揚をつけたりジェスチャーを取り入れて話をしていき、一時間くらいで物語を話し終えた。


 「・・・・めでたしめでたし。終り。」


 俺がそう締めくくり、ファンが通訳し終えると、一斉に拍手があった。


 『 すごいね。アラジンよかった~。』


 良かった~。ファンにも何とか満足してもらえたみたいだ。


 『素晴しい。知らない世界の話だが、ワクワクさせられる物語だった。他にもあるのかね?』


 「はい。まだ沢山あります。」


 『おお、そうか。では、疲れているところを悪いが、もうひとつだけ聞かせてもらっても良いだろうか。』


 気に入ってもらえて何よりだ。

 俺に異存があろうはずもない。喜んで話そうじゃないか。

 みんなが満足する話ね。神話系なら日本だけじゃなく、中国でもギリシャでも北欧でもたくさんある。

 さて、次は内にするかな。


 顧客相手にプレゼンする時のように、物語を話すことに軽い興奮を覚えながら、メモ帳に話をリストアップして、何をどう話すかまとめて次の話を語ることにした。

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