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めぐる季節は麦の道

めぐる季節は麦の道 三 秋灯り

作者:まーサンタ
最新エピソード掲載日:2026/09/04
夏が終わり、秋の気配が深まり始めた頃。小学三年生の伊達麦人は、父・将とともに祖母・恵子の暮らす団地を久しぶりに訪れる。

少し理屈っぽい麦人は、何かにつけて「どうして?」と尋ねる。将はそんな息子に、「そういうものだから」と答えることはない。危ないことをしてはいけない理由も、人を傷つけてはいけない理由も、自然を大切にする理由も、一つひとつ丁寧に説明してきた。

ある夕暮れ、麦人は山の中に奇妙な灯りを見つける。ひとつ、またひとつと増えていく小さな灯り。

「恵子さん、あれ何?」

恵子は山を見つめ、静かに呟く。

「……秋が来たんだね」

将もまた、その灯りにただならぬものを感じていた。かつて夢で見た大蛇の神楽舞。そして、若い頃に墓の前で出会った、神々しい着物の女性。説明できない不思議な体験を重ねてきた将には、今回の灯りにも何か意味があるように思えた。

やがて三人は、山中の古い祠と忘れられた墓地へ辿り着く。そこには、秋になると灯る小さな灯りの言い伝えが残されていた。

祭りの夜、山に無数の灯りが浮かび、神楽のような音が響く。

麦人は知る。

不思議なものは、簡単に「良い」「悪い」と決められないこと。怖いから逃げるのでも、珍しいから近づくのでもなく、知らないものには敬意を持って向き合い、必要な距離を取ること。

そして、将がいつも理由を説明してくれた意味にも気づき始める。

それは、いつか麦人自身が考え、自分で判断できる人になるためだった。

秋が深まり、山の灯りは静かに消えていく。

「まーさん。来年も、この灯り見られるかな?」

「分からない」

「またそれ?」

恵子が笑う。

「分からないから、また見に来られるんだよ」

麦人も笑った。

「じゃあ、来年も来よう」

落ち葉の山道を歩く三人。

灯りはもう見えない。

けれど、三人の心には、それぞれ小さな灯りが残っていた。

過去から現在へ。祖母から父へ。父から子へ。

受け継がれていく大切なものを照らす――秋の灯り。

――『めぐる季節は麦の道 三 秋灯り』。

それは、不思議な灯りを追う物語であり、家族から家族へ、心から心へ受け継がれる「灯り」の物語である。
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