↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
41/44

白雪は歪な林檎を好む

「どこが好き?」


もしそう聞かれたならば、私はこう答える。


「…いつも何かに怯えてるとこ、弱々しいとこ、愛に餓えてるとこ、可哀想なとこ、他にも沢山あるよ」

「いつから好きなの?」


私は懐かしむように思い出し答える。


「小学生の頃からかなぁ?」

「どうして歪んだ林檎(アノコ)に執着するの?」

「…愛してるから」


これ以外に理由ななんて必要ないでしょ?


………


(かなで)生まれつき特別だった。

教室に入れば、人が集まる、笑えば、皆が笑う、泣けば、大人は放っておかない。


誰もが自然と、奏を好きになってしまうため、いつも奏は誰かしらに囲まれて暮らしていた。


「かなでちゃん!今日一緒に遊ぼ!」

「うん、いいよ」

「あー!!ダメ!かなでちゃんは今日わたしと遊ぶの!」

「はぁー?先に約束してたの?」

「…してないけど、でもわたしと遊ぶの!」

「………」


二人は教室で奏の取り合いをし始めた。

しかし、等の本人はそれをニコニコと見続けるだけだった。


「二人共!喧嘩は良くありませんよ!」

「「先生!」」


それを見かねた教師は二人の争いを止めに入った。


「先生!わたしが先にかなでちゃんと遊ぶ約束したのにこの子が邪魔するの!」

「違う!邪魔してない!かなでちゃんと遊びたいだけ!」

「落ち着いて…奏ちゃんはどうしたいの?」

「……二人と一緒に遊びたいなぁ」


奏は可愛らしく首を傾げ媚びるように瞳をうるうると揺らす。


「奏ちゃんは二人と一緒に遊びたいんだって」

「…分かった」

「一緒に遊ぶ」

「うん、仲良く遊んでね」


教師はそう言うとその場を離れ、その様子を見ていた別の教師に話しかけた。


「…やっぱりです」

「…でしたか…()()奏ちゃんを…」

「はい、また子供達が華奏ちゃんを()()()()()喧嘩していました」

「…うーん」


教師達は頭を抱えた。

実はこのように他の子達が奏を求めて喧嘩するのはそんなに珍しい事ではなかった。


「…あの子、とんだ大物になるでしょうね…」

「間違いないです。あの魔性は見てて本当に恐ろしい…」


………


奏はお金持ちで優しい両親に恵まれて育っていた。


「奏、貴女は今日も可愛いわねぇ、私の自慢の子よ」

「だな、今日はこんなに可愛いんだ、明日はもっと可愛いぞ」

「ありがとう」


奏は子供らしからぬ完成された笑顔を両親に見せる。


「そういえば奏、今度ピアノの発表会があるんだろ?新しいドレスを買いに行かないかい?」


父親は奏に買い物へと誘った。


「…んーんいらない、ドレスはいつものを着る」

「あら、また?あのドレスはもう古いわよ?」

「……だって、おとーさんがお誕生日に心を込めてアタシの為に買ってくれたから、だからあのドレスが好きなの」

「奏…」

「…いい子ね…」


………


「……はぁ」


奏は一人でとぼとぼと公園へと向かう。


(…皆うるさい、アタシ一人が好きなのに誰もアタシを一人にしてくれない、ウザイ)


奏は心の中で文句を垂れる。


「…やっとついた」


奏は誰一人としていない古い公園のブランコに飛び乗る。

ギギッと錆びた鉄が擦れる音をならしながら華奏は満足そうな子供らしい表情をする。


奏は古い物、壊れた物が大好きだ。


錆びたブランコに、使いまわし続ける古いドレス、そしてすぐに壊れる友情。


奏はそれらに異常なほどの執着を見せるのだ。


「♪~~」


上機嫌な奏は鼻歌を歌う。


その時、近くから小さな足音が聞こえた。

奏が足音の方を向くと、そこにはボロボロな身体、ボロボロな表情でうつむく少女がいた。


少女は奏に気付いていないのか、座り込み、声を押し殺しながら泣き出した。


奏はそんな少女に目を奪われた。


(…可哀想)


しかし華奏の顔は笑っていた。


奏はブランコから降り、少女に話しかけた。


「ねぇ、何でそんなにボロボロなの?」

「ひぅっ…うぅ」

「…あ」


少女は人がいたことに驚きその場から逃げてしまった。


(…可哀想…♡)


………


そこからは早かった、奏はお得意の可愛らしい態度で少女の特徴を色々な人に話し、知ってるかを訪ね続け、そしてすぐに少女を見つけ出した。


「ゆいなちゃんかぁ~可愛いお名前~♡」


その日から奏は結奈(ゆいな)にこっそりと執着し始めたのだ。


………


「ねぇねぇ、貴女⬛⬛⬛ちゃんだよね?」

「え?…あっ!か、かなでちゃん?!

うん!そうだよ!どうしたの?」

「…貴女、ゆいなちゃんとお友達なんでしょ?」

「え?うん」

「……ごめん、やっぱりなんでもない」

「えぇ~?!どうしたいの?教えてよ~」


奏は相手が話しに食い付いたのを確認すると、まるで悲劇のヒロインのような表情を浮かべる。


「…実はね、ゆいなちゃんが貴女の物を盗んでいるのを見ちゃって…」

「え?!」

「ゆいなちゃん、盗んだ後、自分のランドセルに隠してて…お友達だっていうから、お話しするの悩んだんだけど…」

「…そうなんだ…話してくれてありがとう、かなでちゃん…わたしゆいなちゃんのランドセル見てみる!」

「うん、そーした方がいいよ」


奏はニヤニヤと口角をあげた。


………


「⬛⬛⬛ちゃん!今日も遊ぼ――」

「やだ」

「え?」

「もう遊ばない」

「……どうして?」

「わたしかなでちゃんに聞いたよ」

「え?」

「ゆいなちゃん、人の物盗んでるって」

「……え?」

「そんなことやってないよ…」

「嘘だ!わたしこの前ゆいなちゃんのランドセル見たよ!わたしのなくなった物、いっぱい入ってた!」

「知らないよ!私じゃない!」


「嘘。わたし、ゆいなちゃんのこと、大好きだったのに」



「んふふ♡可哀想なゆいなちゃん♡」


もちろん結奈は盗んでなんかなく、奏が事前に仕込んどいたのだ。


それからも、奏は自身の愛され体質を利用し、少しずつ結奈を貶めていった。


………


大人になった奏は人気のないバーで、酔った結奈の元上司の向かいへと腰を下ろした。


「こんばんは」

「あれ……お嬢さん、見ない顔だね」


元上司は酒臭い息を吐きながら笑う。


「ねぇ、何か悩み事でもあるんですか?」

「悩みぃ? あぁ、あるさ」


元上司はグラスを揺らし、不満そうに鼻を鳴らした。


「前にいた部下がな。大げさな理由で辞めやがって」

「大げさな理由?」

「ちょっと距離が近かっただけだ。今どきの女はすぐ騒ぐ」


奏は困ったように笑う。


「そうだったんですね」

「そうだよ。俺は悪くない」

「……ふふ」


奏のその笑みは元上司には優しさに見えたのか、元上司は他にもベラベラと情報を喋りだした。


翌日。


元上司の会社では、一通の匿名メールが役員全員へ送られていた。


添付されていたのは、バーでの録音音声だった。


さらに数日後には、取引先にも同様の音声が届くられていた。


「どういうことだ!」


元上司は青ざめる。

調査が始まり、これまで軽く扱われてきた数々の相談も掘り返された。


「あれは誤解だ!」


そう叫んでも、もう誰も耳を貸さない。

社内では距離を置かれ、役職を外され、やがて会社を去ることになった。

噂は業界にも広がり、再就職もうまくいかない。


「どうして俺だけが……」


しかし、結奈の時同様、誰も答えなかった。


………


「結奈ちゃんを泣かせる権利があるのは、アタシだけなんだけど♡……準備も出来たし…そろそろかなぁ…」


その甘い独り言だけが、静かな夜に溶けていった。


………


「はぁっ……はぁっ……!」


そんな結奈の息使いが奏の耳に入る。


結奈は必死に奏から逃げる、しかし、奏は一歩、また一歩と確実に結奈へと近づく。


そして……


「つぅ~かぁ~まえた!」

「きゃあっ!!」


奏は結奈の腕を強く掴み、勢いよく地面へ押し倒した。


「やっ……いやっ! 離して!! 助けてぇ!!」


結奈は必死に叫ぶ。

しかし今いる場は人気のない裏路地、誰も来ないし、誰にも届かない。


奏は騒ぐ結奈の上に跨がる。


「ふふっ……やっと捕まえた…」


奏は結奈の涙でぐしゃぐしゃになった顔を見つめ、心から嬉しそうに微笑んだ。


「可愛い……本当に可愛い……♡」


奏は愛おしさで胸がいっぱいになった。


「だ、誰なの……!? 私が何をしたっていうの!?」


結奈は声を震わせながら、奏に問う。

しかし奏はただ愛おしそうに結奈の頬へ触れるだけだった。


「ずっと会いたかった…」

「いや……」

「ずっと見てた…」

「やめて……!」

「ずっと、アタシだけのものにしたかった…」


奏はそんな言葉を結奈にかけ続ける。


しかし、その瞬間。


奏の視界いっぱいに白い光が溢れた。


眩しい、何も見えない。


そして……






……気づけば、奏はフメル王国の第一王女兼聖女に転生していた。

応援したい!と思ったらブックマークやいいね、下にある⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎評価等をよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。