傷だらけの再会
血に塗れ、荒れ果てた大地を一台の馬車が駆け抜けていた。車輪が石を跳ねるたび、馬車は大きく揺れる。
その中に乗っているのは、ルイゼン、グイユ、アルバン、そしてロセの四人だった。
激しい揺れにルイゼンは窓枠を掴み、グイユは顔をしかめる。ロセも椅子へ手を添えて体勢を保っていた。しかしそんな中、アルバンだけは腕を組み、どっしりと座ったままだった。
………
レミーラ王国とフメル王国が戦を始めてから、一週間が経過した頃、リリーナから届いた報告は短かった。
『作戦に不安があります』
その言葉を受け、ルイゼンとグイユは前線へ向かう準備を進めていた。
だが、その途中でアルバンとロセが現れた。
「私たちも同行します」
最初、グイユは反対した。しかしアルバンは真剣な顔で言った。
「傷はもう動ける程度には治っております。医者からも許可は出ています」
続いてロセが一歩前へ出る。
「ロセは幼い頃から、お嬢様を守れるようにとグランドマスター様に剣術を叩き込まれておりました。未熟ではありますが、足手まといにはなりません」
その言葉を聞いたアルバンが、ふっと懐かしそうに笑った。
「毎日泣きながら木刀を振っていたくせにな」
「グ、グランドマスター様!その話は……!」
アルバンの暴露に珍しくロセが慌てる。
グイユはそのやり取りを見て、なんとも言えない顔で折れた。
「……分かりました。同行を許可します」
………
馬車の中で、アルバンがぽつりと呟く。
「……リリーナ、無事だろうか…肝心な時に守れない父親で、情けないな……」
「………」
その言葉にロセが下を向き唇を噛む。
するとアルバンがロセに気付いたように低い声で呟いた。
「ロセ……自分を責めているな?しかし気持ちは分かる。だが責めすぎて自分を嫌いにだけはならないように」
ロセは目を伏せたまま、小さく頷いた。
するとルイゼンも静かに口を開く。
「…ロセさん…俺も、同じです。メルーナの婚約者なのに、守れなかったどころかその場にすら居なかった…」
その声には自分への怒りと深い後悔に満ちていた。
そんなことをしているうちに、馬車は森へ到着した。四人は慎重に外へと降りる。
森は不気味なほど静かだった。鳥の声も少ない、風が葉を揺らす音だけが聞こえる。
「……この森、妙ですな」
「ええ、複数の魔法が張り巡らされています」
グイユが草へ触れる。
「…でも…こんなにも沢山の魔法…しかもこの森全体にだなんて…人間どころか魔獣ですら難しいだろうに…」
「一体何なんだ……?」
しかしどれだけ考えようとも答えは出ない。四人は再び歩き出し、セーフゾーンに向かった。
………
十分ほど歩いた頃、ようやく森の奥にテント群が見えた。
すると外にいた兵士がアルバンへ気付き、目を見開く。
「軍団長様!?」
その声にテントの中が一気に騒がしくなった。
そして奥から現れたのは所々に包帯を巻いたリリーナだった。
「……父様?何でここにいるの?」
アルバンは娘を見るなり顔を歪めた。
「リリーナ……!」
アルバンはリリーナに駆け寄り、大きな手で娘の頭を優しく撫でた。
「よく頑張ったな」
リリーナは少しだけ目を逸らした。
「……こんなの大したことないって。それより父様の怪我は?」
「もう問題ない」
その答えに、リリーナは小さく安堵した。
そこへロセが近づく。
「リリーナ嬢、少し失礼します」
ロセはリリーナの包帯を解き、傷へそっと手を当てる。
すると、淡い光が溢れ、温かな風のような魔力が広がった。
「リリーナ嬢、痛みは?」
「……ない…!」
あっという間にリリーナの傷は綺麗に塞がっていた。
そんな光景を見ていたアルバンが感心したように頷く。
「相変わらず見事だな、ロセ」
「ありがとうございます…」
ロセは照れ臭そうに笑った。
「ロセさん」
リリーナがロセに声をかける。
「他にもいっぱい怪我してるヤツがいるからよかったらソイツらの治療もして欲しい」
「分かりました」
ロセはテントの中へと入っていった。
それを確認したリリーナはルイゼンへと視線を向けた。
「王太子殿下、宜しいでしょうか?」
「あぁ」
ルイゼンはゆっくりと頷く。
「まず、第一の話をしますと、我々の行動は全て敵に見透かされている状態で、何をしようとすでに対策されています。そして敵の数が想像以上で、兵たちも疲弊しています」
ルイゼンは静かに頷いた。
「なるほど...どう進もうと見透かされている...分かった、もう一度作戦を立て直そう」
ルイゼンの言葉にアルバンとグイユも同意する。
そして四人はテントの中へ入っていった。
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