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ペアリング

太陽の光に照され、街全体が宝石箱のように輝いていた。

ショーウィンドウには色とりどりのドレスや帽子、ティーカップ、時計、花々が並び、どこを見ても胸が躍る。


まるで物語の中に迷い込んだみたいだ。

結奈(ゆいな)は思わず笑みを零した。


「すごい……本当に綺麗」

「ねー!」


リリーナは結奈の腕に擦り付く。


細身のパンツスタイルにおとなしいジャケット。

その姿は貴族令嬢というより、不思議な国を気ままに歩き回る案内人のようだった。


「ルーちゃん!次はアクセサリー屋さんに行こ!」

「分かった」

「それでね!」


リリーナはさらに結奈を強く抱き締める。


「お互いに、お互いのためのペアリングを選ぼ!」

「……ペアリング?」


結奈は目を丸くする。


「そう!友情の証!」

「……いいの?」

「もちろん!」


リリーナはぱっと笑う。


その笑顔は太陽みたいなのに、どこか猫みたいに悪戯。


「ルーちゃんとお揃いが欲しいもん」


その一言で結奈の胸が熱くなる。


(……嬉しい)


こんな日が来るなんて思わなかった。

友達と笑って、友達と手を繋いで、友達と、お揃いの指輪を選ぶ。


そんな普通が、結奈にとっての夢だった。


「ありがとう……リリーナちゃん」

「へへっ!」


微笑ましく笑い合う二人、そしてそんな二人を街の住人達は見つめた。


「何という美しさ…まるで絵画のようだ…」

「素敵…これが世に聞く楽園(百合)という物…」 「目がぁ!!目がぁ~~!!」


町中は二人の輝きにより騒がしくなるが、結奈とリリーナは二人の世界に入っているため、二人はこの騒がしさに気付いていなかった。


「…………楽しそうだね…」


…勿論、不気味に二人を…否…結奈をニタニタと見つめ続ける一人の少女の声にも、二人は気付かなかった。


………


二人は無事アクセサリー店に入ることが出来た。

そして結奈は様々なアクセサリーに目を奪われた。


金、銀、白金、宝石も様々。

まるで星空を切り取ったようだった。


「よし!じゃあここからは別行動!」

「え?」

「その方がサプライズみたいでいいじゃん!」

「た、確かに!」

「じゃあ十分、また十分後に店の外に集合!」

「うん」


そう言うと、リリーナはスルリと猫みたいに消えていった。


「……早いね」


結奈は思わず笑ってしまう。


(本当に猫みたい)


………


「うーん……」


結奈は指輪が入ったショーケースの前で腕を組む。


(リリーナちゃんっぽい指輪……)


太陽みたいで、元気いっぱいで、でも時々、誰にも分からない所でこちらを見透かしているような、不思議な笑顔を浮かべる。


(そんな指輪……)


その瞬間だった。一つの指輪が結奈の目に入った。


黄金色に輝く宝石。まるで小さな太陽のようだった。


「綺麗……」

「気になりますか?」


背後から店員が優しく声をかける。


「はっ、はい!」


結奈はビクッと肩を揺らした。


「ふふ、申し訳ございません。

改めまして、こちらはイエローダイヤモンドです」

「イエローダイヤ……」

「幸福、絆、そして希望を意味する宝石でございます」


希望、その言葉だけで結奈の胸が締め付けられる。

そして結奈は静かに宝石を見つめた。


(リリーナちゃんにぴったり)


どんなぬ暗い場所でも、誰かの心を希望で照らしてしまう。結奈から見たリリーナはそんな子だ。


「これにします」

「ありがとうございます」


店員は柔らかく頭を下げた。


………


「ルーーちゃーーん!!」


十分後、外で待っていた結奈にリリーナは勢いよく抱きついた。


「わっ!」

「選べた!?」

「うん!」

「わたしも!見て!じゃーん!」


二人は同時に小箱を取り出した。


「はい!」

「ありがとう、はい、リリーナちゃん」


二人はお互いが持っていた小箱を交換した。


結奈はさっそく包装を開けた。


すると中には青く透き通る宝石がついた指輪が入っていた。


海のような、静かな青。


「……綺麗」

「へへっ!」


リリーナは自慢するように笑っあ。


「わたしから見たルーちゃんって、海みたいだから」

「え?」

「優しくて、綺麗だけど、奥深くの方は全然見えない」


その言葉に、結奈は心臓がどくりと鳴った。


(……見えない…ね、もし、リリーナちゃんが中身である私を見ちゃったら……いや、リリーナちゃんはそんなの気にしないって行ってくれた!…けど)


「……」


自然と結奈の笑顔が曇る。


すると、コンッと音がしたと同時に、結奈の額が少しだけ痛んだ。


どうやらリリーナが軽くデコピンをしたようだ。


「また難しいこと考えてるでしょ?」

「…え?」

「今日は考え事禁止!」

「…ふふ……」

「笑った!」

「うん…笑ったよ」


結奈は素直に言った。


「私、今日は、リリーナちゃんのおかげで幸せだよ」

「本当!?わたしも!ルーちゃんのお陰ですっごく幸せ!ねぇねぇ!この箱開けていい?」

「うん」


結奈がやったように、リリーナも小箱を開ける。


「わぁ…!」


黄金色の宝石が太陽を受けて輝く。


「すっごく綺麗!」

「リリーナちゃんっぽいと思って……」

「本当?」

「本当、リリーナちゃん、太陽みたいだから」


その瞬間、リリーナは照れ臭そうに笑った。


「そんなこと初めて言われた!…ねぇ!」

「?」

「指輪着け合いっこしよ!」

「いいよ」


結奈はリリーナから箱を受け取り、指輪を取り出すとそっとリリーナの指へはめ込んだ。

リリーナも同じように丁寧に結奈の指へはめる。


すると、二人の指輪が静かに光る。

まるで最初からそこにあったみたいに。


「ふふ」

「へへっ!これでずーっとお揃いだね!」

「……うん」


結奈は指輪を撫でる。



(これで繋がっていられる)


そんな幼い考えが頭に浮かぶ。




(お願いだから、離れないでね、リリーナちゃん。私の一番長いお友達。これからも……よろしくね)


その願いは、指輪の輪のように静かに結奈の心を締め付けていた。


その時だった。


パシッ。


「きゃっ!」


誰かが結奈の腕を酷く掴んだ。


スッとリリーナの笑顔が消える。


「……誰?」


空気が一変する。


どうやら楽しかったお茶会は終わりを告げ、不思議の国に新たな来訪者が現れようとしていた。

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