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呂布が行く  作者: あひるさん
第5章

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35/36

第35話 袁家(一)

ご覧頂きましてありがとうございます。

ご意見・ご感想を頂ければ幸いです。

差し支え無ければ誤字・脱字の指摘もお願い致します。

「袁術様、呂布の遣いを名乗る者が対面を願い出ております」

「呂布の遣い?」

「はい」

「諸葛玄、どうするべきだ?」

「会われるべきです。呂布は何進と懇意の仲。断れば何進の不興を買う恐れが」

「そうだな。袁紹と争った事で目を付けられているからな」


 諸葛玄は高順を迎える為に部屋から退出した。部屋の外には武官の長を務める紀霊が待機していた。


「諸葛玄殿に来て頂いて助かった」

「貴殿から書簡を受け取った時は卒倒しそうになった」

「陳蘭と某で何度も諫めたが、分家に屈しろと言うのかと一点張りで」

「何進の後ろには御上が居る。加えて呂布とも協力関係にある。敵に回せば…」

「董卓の二の舞」

「加えて王允を筆頭に関係があった者は一掃された。それも御上の勅命によってだ」


 執金吾を務めていた丁原の追い落としを画策した董卓は朝廷高官に金銭をばら撒いて協力させようとしたが、戯志才に証拠を奪われて計画は未遂に終わり自身を始めとする関係者は大半が失脚するという結末になった。


「呂布の意図は?」

「殿の不始末を糾弾して腹を切らせる」

「拙いな」

「この場を上手く収めて呂布に直談判するしかないだろう」

「確かに」


 二人は袁術の失態を嘆きつつ高順が待つ部屋に向かった。


*****


 高順は袁術との対面に臨んだ。その席には諸葛玄と紀霊の姿もあった。


「呂布殿から伝言を預かったと聞いているが」

「袁家の内輪揉めが原因で洛陽を混乱させたのは大失態。責任をどのように取られるつもりか?」

「何進の意思も含まれているのか?」

「そんな事は己で判断されよ」

「儂は袁紹と争う気は無い。奴が執金吾の立場を利用して洛陽の統治に介入しようとしたので止めようとしただけだ」


 発言の内容は事前に聞いていた情報と合致していた。袁術の非を詰るより今後の事で釘を差しておく方が有効だと考えた。


「呂布の伝言を伝えておく。次は無いぞ」

「どういう意味だ?」

「袁家の内輪揉めが原因で洛陽に呼び出された我々の事を考えてみろ」

「…」

「我々も幷州でやるべき事がある。御上と丞相の命令はそれを放り出してでも遂行しなければならない。真っ当な理由なら我々も納得せざるを得ない。今回はどうだ?やるべき事を成せなければ幷州に住む民の暮らしに支障をきたす。そうなった時の尻拭いをするのは誰だ?」

「…」

「我々だ。貴様らに出来るわけが無い」

「済まない…。儂が意固地になったばかりに迷惑を掛けて済まなかった」

「その言葉、呂布に伝えさせてもらう」


 高順は対面を済ませると直ぐに屋敷を後にした。袁術たちも高順を酒席に誘っても来ない可能性が高いと思って何も言わなかった。


*****


 高順が立ち去った後、袁術は諸葛玄と紀霊をその場に留まらせた。


「諸葛玄、あの対応で良かったのか?」

「謝らなければ呂布との全面対決、条件を出しても呂布の機嫌を損ねるだけ。無難な対応だと思われます」

「高順と名乗っていたが、あの老人は一体何者なのだ?凄まれた時には生きた心地がしなかったぞ」


 高順に凄まれた時、袁術は死を覚悟した。紀霊が近くに控えていたが、高順に勝てるとは思えず三人揃って首を刎ねられると思っていた。


「幷州軍の要と言われている騎馬隊と焔陣営はご存知ですな?」

「知っている。幽州の白馬義従ですら相手にならなかった。真正面からやり合って勝てる軍は存在しないともっぱらの噂だ」


「焔陣営を率いているのが先程の高順です」

「十常侍の反乱を鎮圧した立役者があの老人だったのか…」

「幷州牧呂布の盟友であり、呂布が耳を傾ける数少ない人物だと言われております」

「あのまま送り出して良かったのか?」


 呂布との関係を悪化させない為にも高順と何らかの繋がりを持つ必要があったのではと袁術は考えた。


「高順は質実剛健、主君の申される饗応を好まないと聞いております。必要以上の事をして心証を悪くすれば後に響いてくるでしょう」

「それなら仕方ない。儂は河南尹の職務に集中して袁紹の挑発に乗らないようにする。二人には手間を掛けるが、この事を兵卒まで周知させてくれ」

「承知致しました」

「心得ました」


 一人部屋に残った袁術は力が抜けたように座り込んだ。殺気を剥き出しにしていた高順との対面は袁術の精神を削り自分本位だった性格を改めさせるのに十分なものになった。

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