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呂布が行く  作者: あひるさん
第5章

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第25話 引退(一)

ご覧頂きましてありがとうございます。

ご意見・ご感想を頂ければ幸いです。

差し支え無ければ誤字・脱字の指摘もお願い致します。

 幽州の西部五郡を併合した并州軍は呂布と張遼を現地に残して并州に帰還した。現地に残った呂布は冀州に備えて涿郡に駐屯、張遼は幽州に備えて漁陽に駐屯して両者とも防衛線の構築を始めた。その一方で晋陽に帰還した郭図は薛蘭と鍾繇に結果報告を行うべく席に座った。


「郭軍師殿、ご苦労様でした」

「詳細は先に送った書簡に記載している通りです。こちらが五郡割譲の証明書になります」


 郭図は公孫度との間で取り交わした和睦の合意文書を差し出した。文書には漁陽郡と右北平郡の郡境を并幽の州境に変更すると書かれており郭図と公孫度の署名に加えて血判も押されていた。


「呂布将軍と張遼将軍を冀州と幽州への備えに配属致しました」

「両将軍なら安心して」

「これは暫定的な配置になります」

「暫定的?」

「今回、張燕・華雄・趙雲の三将軍が配下に加わった事で人材が充実しつつあります」

「確かに」

「次は冀州または涼州との戦いになると思われますので人員配置の見直しを提案致します」

「具体的には?」

「この件については某が説明致します」


 郭図から話を引き継ぐ形で鍾繇が幷州の地図を机に広げた。鍾繇は予てから統治が安定している地域については太守一人で複数の郡を担当しても良いと考えており郭図に話を投げ掛けて同意を得ていた。鍾繇は各郡からの報告書を熟読しつつ計画案を作成しており郭図が幷州に戻った直後に二人は顔を合わせて薛蘭に結果報告を行う際に提案する事で同意していた。


「これなら問題は無いと思います。幽州五郡の方は大丈夫なのですか?」

「幽州は漁陽を押さえておけば対応は可能です。冀州については涿郡に主力軍を配置、雁門に後詰させれば問題はありません」

「分かりました。両名には丁原様への説明に同席してもらいます」


 薛蘭は用意周到だった二人に驚いたが指摘するような点もなく上策だと判断して承認した。しかし丁原への説明が必要である事から二人にその役目を負わせる事にした。


*****


「二人の提案は了承した。異動する者に対して誤解が生じないよう入念な説明を加えてくれ」

「承知致しました」

「実は戯志才を別室で待たせていてな」


 三人が訪れる少し前に戯志才が見舞いを兼ねて訪ねてきており、世情について説明を聞いていた。


 呼ばれた戯志才も部屋に入ってきて幷州における文官上層部が勢揃いした。


「儂はこれを機会に州牧を退任する」

「お待ち下さい。唐突過ぎませんか?」

「儂の体調がこれでは話にならん」


 丁原は洛陽での激務が原因で体調を崩しており帰国後も療養に努めているが年齢的な事もあって回復に手間取っていた。予てから政庁で指揮を執れないなら身を引くのが最善だと考えていた事から重臣が揃ったこの機会を見計らって話を切り出した。


「いつまでも代理を立てる訳にいかないのは承知しておりますが」

「それなら交代するのが筋というものだ」


 四人は驚いて丁原に翻意するよう説得しようとしたが、退任する意志は固く覆す事が出来なかった。


「後任は誰が良い?」

「高順殿か呂布殿」

「薛蘭はそう考えたか。鍾繇はどうだ?」

「高将軍か呂将軍でしょう」

「なるほど。郭図は?」

「高順殿か呂布殿です」

「戯志才はどう見ている?」

「高順殿か呂布殿の二択になります」


 丁原は少し考えた後、明日もう一度集まるように指示を出してその日は結論を出さず解散した。


*****


 同じ日の夜、丁原は高順を私邸に招いた。


「丁原、薬湯は飲んでいるのか?」

「飲んでいなければ今頃はあの世に行っているぞ」

「御種人蔘様々だな」

「確かにな」


 二人は数十年来の付き合いがあり、私的な場ではかなり砕けた口調で会話をする。


「で、話とは何だ?」

「州牧を退く」

「考え直せと言いたいところだが、お前の性格を考えれば…」

「そういう事だ」


 丁原が一本気な性格である事を身内以外で一番理解している高順としては翻意させる事は不可能で思うようにさせてやる事が最善だと考えた。


「お前の後釜に座る気は無いぞ」

「となれば」

「呂布一択だな」

「分かった。薛蘭には話を通しておく」


 丁原は酒代わりの薬湯を、高順は酒を飲みながら戦場で暴れ回った若い頃の思い出を語り合った。 


*****


 呂布と張遼は丁原から帰国指示を出されたので晋陽に帰還した。挨拶と報告を兼ねて政庁に顔を出すと各地に散らばっている面々を含めて全員が揃っていたので何事かと二人は訝しがった。


「二人とも良くやってくれた」

「ありがとうございます。大将、何かあったのですか?」

「察しが良いな。儂の後任について話し合っていたのだ」

「大将が州牧を退くと?」

「体調が元に戻らん以上州牧の地位に留まれん」

「何とかならないもんですか?」

「儂を殺す気か?」

「それを言われると諦めるしかない」

「お前にしてはあっさりだな」

「親代わりの大将を死に追いやれば俺は終わりですよ」


 前世では丁原を殺害して親殺しの悪名を付けられたので現世では絶対に避けなければならない事の一つだった。

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