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呂布が行く  作者: あひるさん
第4章

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第23話 厄介な連中(四)

ご覧頂きましてありがとうございます。

ご意見・ご感想を頂ければ幸いです。

差し支え無ければ誤字・脱字の指摘もお願い致します。

 候成と張遼は劉備の亡骸を載せた馬を引いて一騎打ちが行われている場所付近に戻ってきた。


「どうだった?」

「一騎打ちは続いております」

「軍師殿から余力があるなら加勢するようにと言われているが」

「邪魔をされた形になり二人とも気分を害するかもしれません」

「それなら敵の気を逸らす事に留めておくか」


 話し合いを終えた候成と張遼が戦場に姿を見せたので幷州軍兵士が歓声を上げた。


「幽州の猛者よ、お前たちの兄弟はこの通りだ!」


 一騎打ちを続けていた四人の視界に馬上で横たわっている劉備の姿が入った。馬体の一部が赤く染まっているので重傷以上の傷を負っているのは明らかだった。


「兄者!」

「兄貴!」


 関羽と張飛は大声で呼び掛けるが全く反応しない事から二人は最悪の状況になっていると判断した。


「てめえら、絶対に許さんぞ!」

「戦場に出れば死ぬか生きるかだ」

「黙れ、黙れ!」

「感情的になるようでは」

「うるせえ!」


 劉備の死を察した関羽と張飛の勢いは怒りも重なって凄まじいものになっていたが、高順と呂布は冷静に対処していた。


「髭、そろそろ降伏したらどうだ?」

「仇に降伏するなどありえん」

「そうか。経験を積めば大軍を率いる力があると思ったが、儂の勘違いだったな」

「どこまで私を侮辱すれば気が済むのだ!」

「侮辱ではなく事実だ」


 関羽の攻撃が力任せの単調なものになっているのを高順は見逃さなかった。高順が突然馬首を返して逃走を始めた。普段の関羽なら誘っていると判断してその場に留まっていた可能性が高かったが、怒りの感情に支配されている状態だったので無理な話だった。


「掛かったな!」

「何っ?」


 高順は手に持っていた長刀をいつの間にか鞘に収めており、手には長弓が握られていた。素早く放った矢は関羽の右肩に命中して手に持っていた偃月刀を地面に落とした。


「しまっ」


 高順は容赦せず二の矢を放ち関羽の左肩に命中させた。関羽は武器を握る事が出来ず馬に掴まっているので精一杯になっていた。


「儂が弓を携えているのを見ていたなら距離を取るのがどういう事を意味しているのか分かるはずだ」

「兄者の事で気を逸らすとは、不覚を取ったようだな」

「もう一度尋ねる。我々に降る気はないか?」

「何度聞かれても同じだ。仇に降る気は一切ない」

「相分かった」


 高順は再び長刀を持つと関羽に近付き一閃した。


「敵将関羽は高順が討ち取った!」


*****


「兄貴!」


 馬上から落ちた関羽を見て張飛は茫然自失になった。一度の戦いで劉備と関羽を相次いで失った事は衝撃的なものであり、俄には信じられなかった。


「張飛、降伏しろ」

「巫山戯るな!」

「多勢に無勢だ。止めておけ」

「てめえらだけは許さねえ、絶対にな!」


 呂布の忠告に聞く耳を持たず、張飛は狂気に取り憑かれたように攻撃を続けた。しかし時間が経つにつれて勢いにも翳りが見え始めた。


「そこまでだな」


 張飛が一瞬気を抜いた時を見逃さず、呂布は方天戟を振り下ろして張飛の矛を叩き落とした。


「畜生!」


 張飛は刀を抜こうとしたが目の前に方天戟の切っ先を突き付けられたので動く事が出来なかった。


「興醒めだな。今のお前は斬る価値がない。この場から去れ」


 残念ながら張飛に抵抗する力は残されておらず、その場から逃げるしか道は無かった。


「俺に情を掛けた事を後悔させてやる。必ずな!」

「いつでも来い。相手になってやる」


 張飛は馬首を返すと北方に姿を消した。呂布は馬を降りると主を失った矛を拾い上げた。


「郭図や高順から怒鳴られそうだな…」


 前世の因縁を知らない郭図や高順から手負いの敵将を見逃すとはどういう了見だと叱責される事を考えつつ呂布は退却した。


*****


 集結地点に戻った呂布は郭図の前に出向くと張飛を逃がした事を謝罪した。


「呂布殿には敵将を見逃した真意を聞きたいと言いたいところですが…」

「済まなかった」

「呂布は奴の本気を引き出した上で引導を渡したいと考えているようだ。軍師殿、今回だけはその辺りを汲んでやってくれんか?」

「あの張飛という男は見たところ一本調子の猪武者。大勢に影響は無いと思いますが、呂布殿が責任を持って対処される事を条件に今回は罪に問わないでおきましょう」


 高順の執り成しで呂布は罪に問われなかったが、郭図も最初からその意図を持っていなかった。体裁上厳しく接する必要があったので敢えてやっただけの話である。


「それでは公孫瓚を追撃するか」

「白馬義従に警戒する必要はありますが、劉備と関羽を失ったので戦力的には大幅に減退しているでしょう」

「軍師殿はどの辺りまで考えているのだ?」

「幽州の南下を防ぎつつ冀州に圧力を掛けたいので西部五郡(代・上谷・涿・広陽・漁陽)は最低限確保したいところです」


 幷州軍は趙雲を配下に加えると共に劉備と関羽を仕留める戦果を挙げて緒戦は完勝と言っても差し支えない結果になった。郭図はこの勢いを利用しつつ冀州を確保する事で河北と呼ばれる黄河以北の地域を勢力下に収める事で一大勢力を築くという考えを持っていた。

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