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Nice Fight!〜違う道が1つになって同じ夢を見ていた〜  作者: livingdead


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94/103

全国高等学校ボクシング選抜沿岸ブロック予選ライトウェルター級決勝

朴(ぱく) 忠次(ちゅうじ)(桑村産業)ー井口崇通(いぐちたかみち)(国教大附属)


試合前に一悶着発生。


当初主審を務める予定だった塩崎から欠場の報告。


代打として本人から委託されたのが平城山体育大学OBの審判員だった。


審判員ミーティングで検討された結果、その平城山体育大学OBが主審としてリングに立つこととなった。


その人物に過去目立ったファールもなく、それを拒む正当な理由がなかったからである。


そして開始された井口崇通(国教大附属)と朴 忠次(桑村産業)だが、開始早々から両者の力の差は歴然としていた。


フィジカルに任せて強引なパンチを振り回す朴だが、井口は余裕を持って外し、逆に左ジャブで朴をコントロール。


ただ、リング上のどうも異様な光景に誰もが違和感を感じ始めていた。


突進している朴の頭が明らかに低く本来ならばバッティングのファールを宣告されてもおかしくない。


だが、レフェリーは


「headup !」


のlightCAUTIONを繰り返すのみで一旦ストップして朴に注意を与えることすらしない。


井口も早々にそれに気づいた様子で、ならばと倒しに行かずに徹底的に左ジャブでコントロールを開始した。


ところがである。


突如としてレフェリーが試合をストップすると、井口に注意。


左ジャブをプッシングとみなしたようである。


場内が騒然とし始めた。


井口は慌てる様子なく、ならばと今度は朴をギリギリまで引きつけて、右アッパーをカウンター。


鼻血を流してよろめく朴に対して井口は追撃にかからず朴の退路を断つポジショニングを展開。


すると朴が頭を下げて突進してきたため、井口はバックスステップして左フックを決めると朴が膝をついた。


レフェリーはダウンを宣告し、カウント8まで数え上げた後、なぜか井口の方を指差し、ジャッジ席に向かって減点1を宣告。


井口が朴を倒した左フックをインサイドブローと判定したようである。


ここではっきりと井口の表情に怒気が浮かんだ。


ここで1ラウンド終了。


コーナーに戻ってきた井口にセコンドについている西木匠が声をかける。


「まだやれそう?」


井口は無言で頷くが、冷静さを失いかけてるのは明らかだった。


会場内からは明らかに異様なレフェリングに怒号が飛び始め、サブセコンドについている江波が不安そうに


「・・・先生・・・」


と声をかける。


西木は


(分かっている)


と、言った表情で頷き返した。


2ラウンド開始。


またもや朴は頭から突進してきた。


そして左右をフルスイングするが、もちろん井口にはヒットせず、井口の方はまるで打ち合いを放棄するかのようにフットワークを使ってリング内をサークリング。


するとまたしてもレフェリーが井口に対してエスケープ行為として注意。


打ち合いを促す。


井口は構えをハイガードに直して接近し朴のボディにショートパンチを集め始めた。


その次の瞬間、朴の頭が井口にヒットし、井口は思わず顔をしかめて横を向く。


左眉のあたりがカットして流血が見られていた。


ここでレフェリーが試合を止めたかと思うと、あろうことか井口の放ったボディブローをローブローと判定し、ジャッジ席に向かってさらに減点1を宣告。


その次の瞬間、井口側の青コーナーから西木の手によってタオルが投入されていた。


この瞬間にとんでもないアップセットが成立したのである。


◯朴 忠次(桑村産業)【ABD2R0.47】井口崇通(国教大附属)⚪️

―――――――――――

セコンドの西木が急いでリングにかけ込むと、井口をコーナーに連れ戻し、ヘッドギアを外して傷の様子を見る。


「深いな・・・・」


そう、つぶやくと主審に対して


「先にリング降りますから、あとはそちらでお願いします。すぐに処置をしてもらいますんで」


そう言って井口を連れてリングを降り、一直線にリングドクターの元へ。


「井口くん、わかってると思うけど、あの試合はやるだけ無駄だ。それよりも傷の処置を優先する。それでいい?」


「全然それでいいです。先生の判断が一番まともですよ。ただ腹ぐらいはたててもいいですよ ね?」


「まぁそうだね。僕も腹が立ってるから」


そんな中、赤コーナーサイドでは桑村産業高校のメンバーと指導者とおぼしき者たちが


『井口を破った』


ということに周囲の視線も気にせず盛り上がっていた。


心配して井口のもとに集まってきた国教大附属ボクシング同好会メンバーの中で特に険しい表情をした宮内がつぶやく。


「あんな試合のあの結果であそこまで喜ぶなんて、まともな神経じゃないな!」


リングドクターの処置を受けながら井口は


「ギリギリ冷静だったつもりだったんだが・・・最後のあれはさすがに・・・もし再開してたらレフェリーの方をぶん殴ってたよ。先生がタオル入れてくれたのは大正解だった」


そう言ってため息交じりに苦笑。


「それにしても朴、ひどくなってたな。あれならUJの時の方がよっぽどマシだった・・・どんな教わり方したらあんな風になるんだろうな?」


そう、つぶやく井口だった。

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