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Nice Fight!〜違う道が1つになって同じ夢を見ていた〜  作者: livingdead


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蠢く者

因縁。


平城山体育大学ボクシング部監督、多満井穐比子(たまいときひこ)の脳裏に甦る不快な記憶。


国教大附属ボクシング同好会の試合動画を見た時、あまりの屈辱に封印していた記憶が強引に揺り起こされた。


数年前、当時多満井は平城山体育大学と並行して平城山体育大学附属高校の指導にも当たっていた。


そして当時から、あらゆる試合会場に出入りしては有望な選手を強引にスカウトしていた。


そして多満井の目に留まったのが当時、中学1年生だった井口崇通(いぐちたかみち)。


中学生同士はおろか高校生を相手にしても圧倒的な強さを誇り、多満井にとって間違いなく極上の逸材だった。


早速両親に接触し、奨学金等の好条件を示し、好感触を得ていたのだが肝心の井口本人が凄まじい拒否反応を示したのであった。


「てめえ、俺をなめてんのか?何で俺がてめえみたいな脳筋野郎がいる学校に行かなくちゃいけねえんだよ!」


とても中学1年生とは思えない凄みを聞かせ怒鳴りつけてきたあげく、好条件に浮かれている両親に対しても


「奨学金ってのはな、借金だってことも知らねえのか?平城山体育大学附属?借金してまで行くような学校か!?」


そう啖呵を切ったものだから、さすがにプライドを傷つけられた多満井が


「この野郎、何だ?その態度は!」


と井口の胸ぐらを掴んだ瞬間逆に井口から頭突きをくらい、うずくまりかけたところに蹴りを入れられて、試合会場内は大騒ぎに。


制止に入った関係者や同級生たちも井口に殴り飛ばされたり蹴り倒されたりと、収拾がつかなくなり最終的には警察沙汰にまで発展した。


この結果、井口は数えて何回目かの出場停止処分となり、この騒ぎのきっかけとなった多満井は附属高校の指導から外されることになった・・・・


そして現在、動画を見ている多満井の目に映っているのは、国教大附属のユニフォームを着てリングに立ち、対戦相手を圧倒している井口の姿。


自分が


「絵描き崩れの素人顧問」


と見下して憚らない西木匠の指示を素直に聞き、理性的に試合を組み立てている姿。


これだけでも苛立つには十分な上に、最終ラウンドに相手を仕留めてコーナーに戻ってきた時に実に充実感に溢れた笑顔を浮かべて西木とグータッチをかわしている。


「ふざけんなあ!!」


額に太い青筋を浮かべて怒鳴り声をあげた。


まだ直接関わったわけではないが、それでもここまでの屈辱と苛立ちを与えてくる存在。


国際教育大学附属国際高校ボクシング同好会。


客野太郎(きゃくのたろう)、銀山御幸(かなやまみゆき)のスカウトに失敗し、国教大附属の校長に見下され、沿岸ブロックの取り巻きたちを使って粉をかけたところ、逆に処分を食らってしまい、自分たちの勢力が削がれる結果に。


挙句の果てに過去に自分を散々コケにして暴力まで振るってきた井口崇通が国教大附属でのびのびとボクシングに向き合っている。


受け容れられない。


許しがたい。


こんなことがあってはならない。


ボクシングを冒涜するな。


ボクシングの正義を損なうな。


あのふざけたボクシングをする地御前栄代は潰す、と、すでに決めていたが、井口に対しても同様かそれ以上の怒りが湧き出ている。


ここで多満井は、ふとあることを思い出していた。


「沿岸ブロックに平城山体育大学のOB が監督やってる学校があったな・・・あいつ、こっちと全然関わろうとしないが、ちょっと揺さぶってみるか・・・」


多満井がスマホのアドレス帳から検索した連絡先。


『桑村産業高校ボクシング部』

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