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Nice Fight!〜違う道が1つになって同じ夢を見ていた〜  作者: livingdead


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八つ当たりする地御前栄代

地御前栄代(じごぜんえいしろ)です。


最近周りからピリピリしているとよく言われます。


自覚はあります。


この前、キューバのガルシアくんと試合した後くらいから、なんだかすごく嫌な感じがまとわりついてきてるような気がして落ち着きません。


なんなんだろう?


最近学校は冬休みに入ったのですが、僕たちは次の試合に備えて、連日決まった時間に集まって練習に取り組んでいます。


直近の試合は来月の第1週目に高南県で行われます全国高校選抜大会沿岸ブロック予選です。


その大会が終わってすぐにまだ未定だけど、また海外から対抗戦の申し込みが来ているとのことでした。


どこの国だろう?


僕は今、朝のトレーニングをしています。


軽く走って、いつもの河川敷で動きとイメージの再確認。


そして、今日の練習テーマを決めて学校での練習に当てはめるようにしています。


ただ、最近はどうも思考のまとまりが悪い気がします。


やっぱりあの嫌な感じが影響してるのでしょうか?


みんなにも心配かけてるみたいで、申し訳ないと思ってます。


ふぅ・・・・


ダッシュ終わり。


思いっきり動けば無心になるかと思ってみたんだけど、そううまい話はないみたいです。


いつもならこのまま走ってサクッと帰宅するんですけれど、今日はちょっと気分じゃないのかなぁ・・・


周りを見ながらゆっくりと歩いて帰ることにしました。


色々と振り返ってみたいこともありましたので。


考えてみれば初めての練習試合の時、そしてこの前のガルシアくんとの試合の時もなんですけど、その時出た結果について、周りの人たちが随分と怒っていたなと言うことは感じています。


初めての対外試合で梶川さんとやった時、判定結果に井口くんが激怒していましたが、申し訳ないんですけれど、あの試合で僕の勝ちはないです。


正直な話、梶川さんとは何度やっても勝てそうな気がしません。


国体での試合を見た時、なおさらそう思いました。


はっきり言ってあの人は怪獣です。


ガルシアくんとの試合でも判定結果では大揉めに揉めていたようですが、勝ち負けを決めるのは審判であって僕ではないのです。


だから結果について思うところはないのですが、気になったのはそこに明確な悪意が向けられていたらしいということです。


その悪意というのも僕個人に対してというより国教大附属ボクシング同好会そのもの、そして西木先生に対して向けられた陰湿な悪意。


僕にとっては立派なイラつく理由です。


ただ、その結果普段の態度にそのイラつきが出てしまってて・・・


先生やみんなに気を使わせてしまい申し訳なくは思っています。


そう考えれば考えるほど心の中でモヤモヤが広がっていく。


まさに悪循環です。


そんな時でした。


この時間帯の田舎道にしては珍しく・・・あれってレクサスって言うんですかね?


黒塗りの車が結構な速度で走り過ぎたかと思ったのですが、突如として急停車。


そして車の中から男の人たちが5人ぐらいバラバラと降りてきました。


妙にいかついけど、誰だこの人たち?


嫌な予感がしたのでポケットに手を入れてポチッとな。


とりあえずはこれで安心。


さて、と・・・・


「やっぱりそうだ。あの時のチビだ!」


「俺らのジムに来て上等切って帰って行った奴らだな!?」


何のこと?


ジム?


・・・・・!、思い出した!


だいぶ前に出稽古のつもりで同好会みんなで行ったあの・・・


なんてジムだったっけ?


まぁ、なんでもいいや。


ろくでもない連中しかいなかった最低のジム、とだけ覚えておけば。


あ〜だめだ、イライラしてると口も悪くなってくる。


八つ当たりだなぁ・・・


「噂聞いてるぞ。調子に乗って色々とやってるみたいじゃねえか」


そりゃど〜も。


「だけどな、俺らのジムをコケにしてくれたことは落とし前つけてもらうぜ」


ふ〜ん?


「少しはやるみてえだが、こいつが相手ならどうする?」


あ、なんか出した?


スタンガンだね。


うわぁ、1人1個ずつ持ってる。


こんな頭が物騒な奴らと関わるのはごめんだから、さっさと帰らせていただきます。


「待てこら、逃がすか!」


「なあ、こいつ失神させた後、服脱がせてよ。動画撮らねえ?」


「あ、それいいな!変態たちに高く売れるわ!」


「モザイクなしで全部晒してやろうぜ。UJ デビューならぬ UGデビューだな!ギャハハ!!」


うわぁ・・・発想が終わってるなぁ・・・・


あ、スタンガン向けて来た。


「ヘヘッ、大人しくしろよ・・・うっぎゃああああ!!」


「ぎあぁぁああ!」


「ギギギギギ!!」


はい、正当防衛成立!


防犯スプレー濃縮還元カプサイシン噴射いたしました。


羆でも逃げ出すLvの代物です。


あ、ちょうどお巡りさん来ました。


お父さんも迎えに来てくれました。


お察しと思いますが、僕が先ほどズボンのポケット内でポチッと押したのは、まぁ高性能な防犯グッズとでも言っておきましょうか?


GPS 機能で現在位置を知らせて家族と警察にSOS サインを送るといった優れものなんです。


実は僕、小さい頃に2度ほどさっきの輩たちが言ってたような変質者に誘拐されかけたことがありましたので、その分、身の回りの安全については僕も家族もしっかりと対策済みなのでした。


え?


『梶川元貴の事は相当怖がってるのになんでスタンガンを持ったチンピラ5人相手にはあんなに余裕だったんだ?』


ですか?


そりゃ、あんな連中と梶川さんなら梶川さんの方が怖いに決まってます。


元から持ってる迫力が全然違います。


それにさっきも言いましたように、防犯対策もバッチリでしたからね。


お父さんご心配おかけしました。


でもしっかり対策してくれていたおかげで無事で済みました。


「本当に無事で良かった。近頃君の様子が少しおかしかったからみんな心配していたんだ。不思議なものでね、そんなメンタルの時こそ今日みたいなことに遭遇しやすくなるみたいだ」


今日のこととは直接関係ないですが、似たりよったりな悪意を持った人間がいることは間違いないです。


最近どうもそのことばかりが引っかかってて・・・・


「今日のことで悪い芽を1つ摘み取ったことで、いい方向に向かうといいね」


はい。


さて、翌日の新聞の片隅に小さく


『暴行傷害未遂でプロボクシングジムの所属選手5人逮捕』


の記事が載っていました。


あ〜、思い出しました。


あのジム、


『藍野ボクシングジム』


でしたね。


多分明日にはもう忘れてると思いますけど。

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