出会った日
宮内白塔です。
高校生になるまで普通に学校と塾と家での勉強の繰り返しで、何の変哲もない日常を送ってきた僕なんですけど、父さんや母さんが何かしら運動の1つもやっておいた方が良くないかと言ってきたのと、正直僕も運動は得意ではないけれど、やっぱり人間なんだから動かないとよね、みたいな気持ちでいたんです。
でもついうっかり入学してしまった高校が「アレ」だったからすっかり困ってしまっていたんですよ。しかもこの辺りって街中に出てもスポーツができる環境ってのがほとんどないんですよね。
だから僕は考えた。とりあえず自宅周辺は結構見晴らしのいいだだっ広い場所が多いからまずは早起きしてランニングでもしてみようと。
そんなわけで早速始めたランニングの初日、さすがにハイペースはきついから本当にジョギングの感覚で文字通りちんたらって感じで走っていたら向かい側から妙にバネが効いた感じがある走り方で威圧感たっぷりな人影が向かってきているんですよね。
善良な一般人の僕でもわかるぐらい圧が強い人で、すれ違った瞬間ビリビリ感じましたよ。これが最初の出会い。
進学した高校のボクシング同好会で仲間に入れてもらって、しばらく経ったある日の昼休み、同好会のメンバーは暇な時にはすっかりボクシング同好会の部室化した美術室に集合して道具の手入れをしたり、雑談したりが日課になっていました。ただ1人小学生・・・げふんげふん・・・地御前くんは空いてる時間、美術室内にあるありとあらゆるものをクロッキーノートにスケッチしていました。たまに僕たちの様子もスケッチしていますから、油断も隙もありません。うちの両親に地御前くんの描いたスケッチを見せたらすごく感心してましたけどね。
きつい練習をしながらも、そんなほのぼのとした空気を満喫していたある日のこと、美術室の入り口が開いたかと思うと・・・・
「今日から練習に参加させてもらっていいすか?」
なんだか覚えのある感じの生徒がドスの効いた声で言ってました。この感じ・・・間違いない!朝ジョギングの時に遭遇した彼じゃん!?
ゆっくりした足取りで部室に入ってきた彼はなぜか地御前くんのクロッキーノート覗き込んでいました。すると銀山くんが彼に声をかけます。
「客野から聞いてるよ。お前、井口だろ?」
井口くんは頷いただけでただスケッチを続けている地御前くんのノートを見続けていました。銀山くんは小声で井口くんに話しかけます。
「練習に来るのは全然オッケー!歓迎するさ。1つだけ、そこにいる地御前は俺たちとタメだからな。間違っても小学生とか言わないでくれよ」
「ハァ!?何言ってんだよ?」
井口くんが声をあげています。
「小学生がこんな精密なスケッチとかできるわけねえじゃん?そのぐらい俺にだってわかるんですけど?」
井口くんの素直な賞賛の言葉を聞いてスケッチペンを走らせながらも地御前くんは嬉しそうでした・・・が・・・
「中等部の1年生でしょ?さすがに高等部の美術室に紛れ込んでるのはまずいと思うから、誰か中等部の校舎に・・・・えっとあれ?よく考えたらこの学校って中等部ってなかったような気が・・・」
井口くんの暴走発言にその場にいたみんなが頭を抱え、地御前くんの顔面はピキットマークで埋め尽くされていて、この日から練習に参加した井口くんでしたがとても気まずそうにしつつ僕が見てもわかる超一級品のシャドーボクシングを披露してくれてました。
僕が見てもわかる・・・紛れもない天才です!




