初めての練習
ボクシング同好会がスタートしたからと言って早速ボクシングのトレーニングができるなんてことはありません。
こんにちは、地御前栄代です。誰もボクシングをやったことのないメンバーだけのボクシング同好会がスタートしました。いきなりでまず最初に何をやったらいいのか、本当ならわからなかったと思うのですがメンバーに客野くんが加わったことがすごく大きかったです。
客野くんは中学時代は元野球部で、後から聞いたのですが、レギュラーで相当活躍していたとのことでした。もっと驚いたのは、身長は僕より少なくとも10cm 以上は高いはずなのに、体重の方は僕とそう変わらないということ。客野くんが言うには元々個人競技をやりたかったんだけど、この体重の軽さも野球を諦めるきっかけになったそうです。
「ボール投げてもさ、スピードは出るんだよね。ただ俺が投げる球って軽いらしいんだよ。なんか昔の野球の漫画でもそれに苦しむ主人公がいたよな。結構これって致命的なんだよな。それにクロスプレイになったら体重軽いから吹っ飛ばされちゃうんだよ」
野球のことはよくわかりませんが、確かにボクシングなら体重で階級が分かれているみたいなので、同じ条件で試合ができるというのは魅力的かもしれませんね。そんな客野くんが野球部時代の経験を生かして基礎体力作りのトレーニングを主導してくれているんです。柔軟体操に始まって簡単な瞬発力を鍛える体操、ランニング、短距離ダッシュ、2人1組になっての腹筋、背筋腕立て伏せのサーキットトレーニングなどなど他にも色々ありましたけど客野くんは結構情け容赦なく僕らを削りにかかってきました。そしてジムワークの場所である。空き教室に戻って、まず宮内くんがその場で大の字に伸びてしまいました。
「おーい宮内くん、大丈夫?」
「・・・大丈夫だ。さぁ次やる・・・ぞ・・・」
意地になって起き上がろうとして、宮内くんはそのまま前のめりにぐったり、客野くんが声をかけます。
「宮内はここでリタイアしとけよ。明日も最低このくらいはやるから。まずはこのレベルをクリアしようぜ」
「明日やろうわ大馬鹿野郎!まさしく今日の俺だな」
宮内くんはメニューをこなせなかった悔しさで自嘲混じりにつぶやいてました。銀山くんはボクサーになるために、朝晩ランニングを欠かさなかったと言っていたからさすが、客野くんのトレーニングメニューにきっちりとついていけていて、僕もハアハア言ってましたけど意外と最後までこなせていました。ちょっと嬉しかったです。
びっくりだったのが江波くんで準備体操の時にも驚いたのですが、あの体型でびっくりするぐらい体が柔軟で、聞いてみたら日頃から体調管理のためにストレッチは欠かさずにやっていると言っていました。体調管理・・・・美術系の人間は何かと不摂生になりがちだから僕も気をつけようと思いました。
国教大附属ボクシング同好会顧問の西木です。ほとんど見切り発車に近い形ではあるんですけど、ボクシング同好会はついに走り出しました。今、ここで僕が自覚している役割というのは彼らが正しいボクシングを理解して正しいトレーニングを積み重ねたという事実を持って、無事にこの高校から卒業していく、その一助を担うということ。
素人顧問の適当なトレーニングを3年間続けさせる、なんてそんなことは教育者としてありえないと僕は思っています。だからこそ教本をしっかり読み込んでその内容と意味を理解すること。わからないところは近隣県のボクシング強豪校の先生に連絡を入れて色々と質問をさせていただきました。連絡を受けた県の関係者は
「薙沢県にボクシングのチームができたんですか?」
と半信半疑なご様子でしたが、僕の聞いたことにはしっかりと答えてくれて本当に感謝です。
今日は客野君が主導してみんなに基礎体力のトレーニングをつけてくれていたみたいで助かりました。僕はみんなが柔軟体操を終えるタイミングで、資料としてここ2、3ヶ月でかき集めておいたアマチュアボクシングの基本動作を収めた動画を流してメンバー全員にしっかりと見て学んでもらうことにしました。
構えの意味
ガードの意味
パンチの出し方の意味
足の運びの意味
体のリズムの意味
体の体幹の意味
僕は動画を見ていて意外と僕たち美術芸術畑の人間とこのスポーツは相性がいいんじゃないかなと・・・なんだか視覚の面で捉える感覚が似てる気がしてきたんですよ。今度ちょっと地御前君で試してみようかな?




