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Nice Fight!〜違う道が1つになって同じ夢を見ていた〜  作者: livingdead


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対キューバジュニアチーム対抗戦・ミドル級 Espinosa(team Cuba)ー銀山御幸(薙沢県・国教大附属国際)

これまでのキューバの選手とは異なり見るからにがっちりして頑丈そうな体躯のEspinosaを見て銀山はいつになく人の悪そうな表情を浮かべてセコンドの西木匠に小声で言う。


「この試合、好き勝手にやらせてもらっていいですか?」


ボクシング同好会の顧問になり、いま所属しているメンバーたちと関わって数ヶ月。


こんな井口が言いそうなセリフを銀山から聞くと思っていなかった西木は困惑しながらも


「自分で思うところがあるのならやってみればいい」


とだけ答えた。


1ラウンド開始。


いきなり距離を詰めた銀山がEspinosaにガードの上から強引な右のスイングを叩きつけた。


この先制攻撃にEspinosaも反応。


粗粗しい左右フックで応戦すると、そのまま両者は打ちつ打たれつの凄まじいギブアンドテイクマッチに突入した。


銀山もEspinosaも真正面で押し合うような格好。


Espinosaが肩関節を360° 回転させるような打ち方で上下にパンチを散らせば、銀山はそれらのパンチをアームブロックでしっかりガードしながらショートアッパー、左フックなどを使い、少しずつ体のポジションをずらしながら打ち込んでいる。


この展開はセコンドの西木にとって確かに想定外だったが、それ以上に混乱を極めていたのが、赤コーナーのキューバ陣営であった。


リング上のEspinosaに対してセコンドが必死に大声で叫んでいる。


「何をやっているんだ、打ち合うな!って、言ってるね」


「へえ、相手の選手あんなガタイしてんのにですか?」


西木とサブセコンドの護山蒼次郎が言葉を交わす。


「たぶん、打ち合うと雑になる癖でもあるんだろう。いま、それを修正してる途中なんじゃないかな?」


「そこを銀山が看破した、と・・・」


呆れたように首を振る護山。


「先生、そりゃ今日初めて試合する選手の発想じゃねぇっすわ」


そんな声をよそに激しい打ち合いを続ける銀山とEspinosa。


相変わらずラフなパンチを振るい続けるEspinosaに対して銀山は開始直後に大根斬りこそ振るったものの徐々に脇を絞り込んで、インサイドからの攻撃に修正すると、有効打を重ねた。


1ラウンド残り40秒を切ったあたりで銀山の左ジャブで顔が跳ね上がったEspinosaにキューバ人レフェリーがダウンを宣告。


カウントが8まで数えられ試合が再開されたところで、1ラウンド目が終了した。


インターバル。


呼吸を整える銀山。


「次は考えてある?」


「はい!」


西木に聞かれて銀山は力強く答えた。


「なら、任せた!」


2ラウンド目開始。


インターバルでのセコンドの指示はEspinosaには伝わり切らなかった様子で、1ラウンド目と変わらず強引な前進を繰り返してくる。


銀山はポジショニングを最小限に、左ジャブを丁寧に突いて右を繋げるオーソドックスなボクシングを展開。


前のラウンドの興奮状態を引きずったままで試合をしているEspinosaは防御動作が明らかに雑になっており、銀山の左ストレートから右ストレート連打のつるべ打ちに遭い、なおも前進するところに左フックを叩き込まれここでレフェリーが再びダウンを宣告しかけたところで赤コーナーからタオルが投入された。


銀山御幸、デビュー戦で盤石ながらも金星をゲット!


◯Miyuki Kanayama【ABD2R.0.31】Espinosa⚪️


ーーーーーーーーーー


銀山です。


作戦大成功!


昨日練習してる時に、えらくキューバチームのコーチからガミガミ言われて窮屈そうにシャドーしていたエスピノサを見たんです。


俺の勝手な想像でしたが、自分のやりたいスタイルでボクシングがさせてもらえず、かなりストレスになっている、と感じました。


だからですね、開始早々にガードの上から大根斬りを叩き込んで煽ってやりました。


後はご覧になられた通りの結果です。


作戦としては実に単純なものでしたが、なんでこれを西木先生に内緒にしていたかと言いますと、西木先生って案外こういった奇策よりも正攻法のボクシングを好む傾向があるからなんです。


「地御前にあんなボクシング教えておいて何言ってるんですか?」


なんて声が聞こえてますが本当なんです。


因みに地御前は普通なボクシングの動きも出来て、井口曰く


「相当にハイレベル」


との事。


それか何であのスタイル?かと言いますと、まぁ西木先生と地御前の実験と検証みたいなものです。


地御前の持っている動体視力や空間把握能力、反射神経、観察能力その他美術的素養。


これらを全てボクシングの動きに落とし込んで最も効果的なのが今の地御前のスタイルなんだとか・・・・


この手の話になると正直、あの2人の言ってることの意味がわからなく、そして怖くなってくるので深くは突っ込みませんが。


試合の後、西木先生から


「相手のことをしっかり観察して傾向と対策ができていた、いいデビュー戦になったね」


そう言ってもらえました。


ありゃ?


こっちに来るのはエスピノサじゃないか?


目と鼻の腫れがひどいな。


冷やさなくていいのか?


と、何か言ってる?


西木先生、通訳お願いできますか?


以下、西木先生通訳による?俺とエスピノサとの会話です。


「ミユキ?だったっけ?俺を見事にはめてくれたな。おかげさんでロドリゴの親父にどやされて参っ たぜ」


「まあ夕べ練習見せてもらったけど、見てて窮屈そうだったな」


「わかるか!そうなんだよ!俺はもっとガシガシ打ち合いがしてえんだけど、それロドリゴに言ったらよ『馬鹿野郎!ボクシングは喧嘩じゃねえんだぞ!』って、ばっさりだよ」


「あ、でもそれなんとなくロドリゴとやらの気持ちわかるかも」


「なしてだよ!」


「そりゃあんな当てる気もなけりゃ当たるはずもない俺の大根斬りに反応してノーガードで突っ込んでくるようなやつに下手なこと教えられないだろう」


「・・・・あ・・・・でもそれならそうと言ってくれりゃ・・・」


「コミュニケーション不足だよ。お互いに。しっかり話し合いするんだな」


「そうしてみるわ。じゃあまたどこかで会えたら会おうぜ、兄弟」


「ああ!」


グータッチを交わした俺とあいつ。


また会えるのかな?

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