対キューバジュニアチーム対抗戦・ライトウェルター級 Ortiz(team Cuba)ー井口崇通(薙沢県・国教大附属国際)
Ortiz(team Cuba)ー井口崇通(薙沢県・国教大附属国際)
ライトフライ級の判定騒動の余韻で井口の表情は極めて険しい。
自分の仲間が戦った一生懸命に対しケチをつけられた。
その扱いに対し彼の心中は荒れに荒れていた。
試合前のリング下、セカンドにつく顧問の西木匠が井口に声をかけた。
「デビューだね」
何の変哲もないその一言で井口の表情はふっと和らぎ
「はい!」
と、しっかり頷いた。
リングに上がりOrtizと井口が対峙。
180cm超の井口よりも更に長身で見るからに技巧派然とした佇まいのOrtiz。
リング中央で対峙した井口はOrtizと視線を合わせずに焦点の合っていない瞳を宙にさまよわせている。
レフェリーからの注意とグローブタッチを終えて首と肩をまわしながらゆっくりと青コーナーに戻り、リング中央に向き直ったところで、1ラウンドがスタートした。
軽快なフットワークでリング内を旋回し長いリーチからポンポンと左ジャブ、右ストレートをOrtizが放ってくる。
開始10秒ほどの間、それらをパリングやブロッキング、ヘッドスリップなどでやり過ごしていた井口が突如として両腕をだらりと下げて、ノーガードの状態となる。
そしてそれに構わず左を放ってきたOrtizに井口はアップライトの姿勢から突き上げるように左を顔面、胸元に散らせて連打!
ジャブだけではなく、手首を切り返しての左アッパー、ポジションを変えて左のボディアッパー、さらに半歩下がって左ショートフック続いて縦拳での左アッパー!
そのことごとくを外し切ることができず、特に最後の縦拳はOrtizの顔面を綺麗に捉えていた。
鼻から大流血し、驚愕の表情を浮かべてステップを使いながらエスケープを図るOrtizに対して、井口は構えを元に戻すと、さらに基本に忠実な左ジャブを上下に散らして追い立てる。
ただ、この時点で井口のレベルを悟ったOrtizは専守防衛のエスケープを決め込み、ガードを固めてフットワークとジャブでリング内をサークリングに費やし始めた。
2ラウンド目もほぼ同じ展開で、時折、井口の左がOrtizの顔面を跳ね上げる以外は展開に変化なく、業を煮やしたレフェリーがOrtizに対して
『完全遮蔽行為』
として減点1。
2ラウンド終了間際、ニュートラルコーナーにOrtizを追い詰めた井口がミドルレンジからのコンビネーションでボディを中心に攻め立てダウンカウントを奪っている。
最終3ラウンド。
ポイントでは完全に勝ち目がなくなったOrtizだが、専守防衛の姿勢は変わらず。
ジャブをついてひたすらサークリングに徹していたが、フットワークのパターンを井口に読まれてまたしても2ラウンド終了間際同様にニュートラルコーナーに追い詰められると井口から左のショートフックを浴び下を向いて崩れかけたところで右のボディアッパーが、みぞおちに叩き込まれOrtizはそのまま前のめりにノックダウン。
レフェリーがカウントを10まで数え上げて井口のKO勝利となった。
青コーナーに戻りながら右腕を上げて誇らしげに胸を張る井口に対してチームメイトである国教大附属国際高校ボクシング同好会のメンバーたちから祝福の拍手。
セコンドの西木匠顧問も笑顔で井口を青コーナーに迎え入れていた。
◯Takamichi Iguchi【KO3R.0.59】Ortiz⚪️
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全く、あのレベルの選手が、あ
そこまでエスケープに徹するとやりづらいなんてもんじゃねえな。
結局3ラウンドまでかかっちゃったよ。
俺、井口崇通。
Ortiz、やつはキューバジュニアのライトウェルター級チャンピオン。
だったら俺は宇宙一だな!
・・・なんてことを口走るぐらい最近は生活に余裕と充実を感じている。
試合前にかけられた言葉が直前までのモヤモヤ、これまでのUJ 絡みでのあれこれがリセットされた気分になった。
そう!
俺のデビューは今日なんだってな。
試合の前後も含めて本当にいい気分でやれたと思う。
だから今俺は、むしろあいつのことが心配だ。
地御前だよ。
今日、あいつが受けた仕打ち。
普通の選手ならあれだけで心が折れて二度と試合なんかしなくなるんじゃないか?
まぁ、いまの地御前は勝ち負けに対してのこだわりがほとんどなく、ボクシングの試合もあいつの知的好奇心を満たすためのものにすぎない。
だが、この先試合を重ねて行くに従って地御前はボクシングを自分の作品、創作物として捉えるようになってくるだろう。
そうなった時に今日みたいな仕打ちを受けて、言うなれば完成した作品に泥水をぶっかけられてボロボロにされたりしてみろよ。
芸術家の心理は俺には分からないが、普通の感覚で考えたら、まともなメンタルなんか保てないと思う。
今日の仕打ちはただの偶然なのか?
俺たちに対して向けられた悪意なのか?
どうにもすっきりしないが、いずれはっきりするだろうな。
その時はきっちりやらせてもらうからな。




