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Nice Fight!〜違う道が1つになって同じ夢を見ていた〜  作者: livingdead


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保護者会と薙沢県体育協会

こんにちは。


国際教育大学付属国際高校美術教師であり、ボクシング同好会顧問であり、薙沢県ボクシング連盟会長その他、いろんな役職を兼任させていただいております西木匠です。


突然ですが本日、井口くんの保護者であるおじい様から、僕とボクシング同好会のメンバー全員、そして学校長まで


「江波一成くんの御自宅に全員集合!」


と、グループ LINE に連絡が入りました。


同好会員の各家庭から最低1名はご家族様が呼ばれているそうです。


井口くんのおじい様といえば、この薙沢県以外でも複数の会社を経営している、この土地きってのお大尽だということ。


前々から井口くんがやらかすたびに


「申し訳ない✕100」


みたいなメッセージを届けて頂き、ボクシング同好会にあれやこれやの援助をして頂いていました。


1度、おじい様おばあ様とお会いすることがありましたが、なるほど。


井口くんとの適切な距離感を保って接しつつ、よく彼自身を観ています。


このお二方であれば多分今後、井口くんが少なくとも私生活で暴走するような事態は生み出さないでしょう。


でも思ったんですが、なぜ集合先が江波くんの家?


はい、だいぶ前にもありましたけど、区切り区切りの集まりがあれば遠慮なく使ってください、と江波くんのご両親から言われておりましたね。


だからといって、いつも当たり前のように利用させていただくのは、さすがに図々しいかと考え、これまでは遠慮していたのですが今回はどうも保護者さん方の間で、話がある程度出来上がっている様子でした。


そんな訳で、いま僕は校長と連れ立って江波くんの御自宅に向かってます。


ただ校長の様子が些かおかしい気がします。


「少しあってね。ま、君にも無関係な話では無いから後ほど説明しますよ」


憮然とした表情で言うのが不安を煽りますね。


さて、江波くんのお家に到着です。


お父上さまがいいところの役職者としてお勤めなので結構な大邸宅ですね。


国教大附属ボクシング同好会のメンバーたちは基本、育ちのいい子ばかりなんですよね。


今回の懇親会、参加人数はざっと20人前後といったところでしょうか?


江波くんのお家にはこれだけの人数を収容できる別棟がありまして、僕と校長もそこに入りました。


すでにボクシング同好会の生徒たちや家族さん方が見えられてまして、僕と校長が来て直ぐに井口くんのおじい様の挨拶で懇親会がスタートしました。


「皆さん本日はご多忙の中、ご足労いただきありがとうございます。国際教育大学附属国際高校の奮闘、顧問である西木匠先生のご尽力を労いささやかながら一席設けさせていただきました。ご交流、ご歓談、ごゆっくりお楽しみください」


テーブルには江波一成くんこだわりの水炊き鍋が2つ。


その他、軽食や飲み物。


保護者たち用にビール程度のアルコールも用意されています。


僕は特定のお酒しか飲めないので飲みませんけどね。


こら、井口くん!


手を出そうとしない!


さて、ちょっと生徒の家族さん達に改めて挨拶をしに行きますか・・・・

ーーーーーーーーーーー

・・・・校長です。


懇親会の前に少々面倒ごとがあり、げんなりしておりますが、それと同時になぜ私は今ここにいるのかという疑問にぶつかっております。


薙沢県随一の名士からのご指名とあって、お断りするという選択肢はなかったのですが。


とにかく大切な用件だから直接お伝えしたいとまで言われてしまっては・・・・ねぇ?


私が座っているテーブルには、いずれ劣らぬ土地の名士や芸術の大家、大企業の役職者や経営者など、この人たちがみんなボクシング同好会メンバーの父兄なのだと言うから、もう愛想笑で対応するしかないですな。


なんとまぁ揃いも揃って・・・


そんな彼らのうちの1人、地御前栄代くんのお父上が口を開きました。


「実はこの度、国際教育大学附属国際高校ボクシング同好会の保護者会が発足することになりました」


保護者会?


「これまで私どもは親として子供たちの頑張りを個別に支援して参りました。これを保護者会でしっかりとまとめてより良い支援の形を作ろうと考えてのことです」


支援・・・主に金銭面でですか?


「もちろんそれもありますが、メインとなりますのは、現時点では環境整備ですね」


そう答えたのは宮内白塔くんのお父さんですね。


環境整備?


「いくつか腹案があります。まず現時点での練習場である体育館に同好会専用のリングを設置」


え?


「あの体育館はやたらと広いですからね、試合用のリングを設置したところで、体育の授業に影響はないでしょう」


ちょ、ちょっと!?


あ、今度は銀山御幸くんのお父さん?


「第2案としまして、あのほとんど使われていない異様に広い校庭。適当なスペースに40坪ぐらいの広さでプレハブを立てて、ボクシング同好会専用のジムにするというのはどうですか?」


どうですか?


じゃありません。


確実に職員会議で却下される案件です。


もしリングは設置するだけにしてもそんなに安いもんじゃないでしょう?


その予算はどこから引っ張って来られるおつもりなのですか?


「保護者会で用立てようという話だったんですけど、西木先生が『そういう話ならこちらで何とかします』と言われましてね」


え?


それはどう言うことでしょうか、客野太郎くんのお父さん。


まさか西木くん、いつかの様に自分の結婚資金に手をつけるつもりじゃないでしょうね?


年長者として、さすがにそれは見過ごせません。


今度こそ彼の家庭が崩壊してしまいます!


「『予算の捻出自体はすんなり通ると思います。問題は他の教職員を納得させる落としどころですね』そう言っておられました」


そうなんです。


他の教職員たちからは最近、私と西木くんの関係性がズブズブである、と思われているようなのです。


前にあった体育館の使用許可の件についてもそうですね。


ボクシング同好会に便宜を図りすぎじゃないかと。


そうして今日、こうやって懇親会にまで顔を出してしまってるわけだし。


はああああ・・・・


それで、予算の捻出がすんなり通るとは一体どういうことなんでしょうか?


すると井口崇通くんのおじい様がこういうのです。


「国教大附属ボクシング同好会から薙沢県体育協会に申請を出して、体育協会から県に補助金を申請する、名目は練習環境の整備、体育教育に関わる申請で他と比べて高額というわけでもないので通るでしょう、とのことでしたな。西木先生やりますね」


ちょっと待ってくださいよ!


薙沢県体育協会?


薙沢県に体育協会なんてありましたっけ?


え?


あるにはあったけど、今まで稼働していなかった、ですって?


それが何でまた、このタイミングで県に申請を出せるような・・・・


とある国立高校の教師、すなわち国家公務員に該当する者が薙沢県体育協会の会長として登録申請し、県から承認・受理されたと・・・


まさか、薙沢県体育協会の会長に就任したのって


「西木匠先生が薙沢県体育協会の新会長ということです」


・・・のぉぉぉぉぉ!


なんたらことだ、いや、何ということだ!


スポーツ経験の1つもない一介の美術教師が薙沢県の体育教育界全体を牛耳ることになろうとは!


しかもここ数ヶ月の間で、彼はどこまで手を回していたというのだ!!


あまりのありえなさに、昼間にあったとあることがどうでもなレベルにまで感じられてしまっている。


その昼間にあったことについては、また後ほど話すので、今はただこの衝撃に浸らせておいていただきたいと思います。

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