一応強化練習中〜その2〜
【井口と銀山のスパーリング】
体育館の中心に5m四方の低反発マットを据えてリングに見立て、その上で向き合う両者。
井口はアップライトに構えて膝のバネが効いたステップを踏む。
銀山はセミクラウチングに構え、ガードをしっかりと構えて、じわりと前進。
サイドに回り込んで井口が左ジャブから、半歩バックステップを踏み、右アッパーを突き上げる。
銀山はブロック主体で井口のジャブやワン・ツーを凌ぎながら、更にアッパーも左に体をかわして掠めた程度の被弾に抑えると、そのまま右のオーバーハンドライト。
井口は余裕をもってそれを外し、ステップバックした位置から左フックをカウンターで合わせにかかる。
銀山はダッキングで井口の左フックをかわすとそのまま左のアッパーを突き上げて、井口がそれをスウェイバックで外したところでラウンド終了。
「上出来、上出来!銀山、反応速くなってんじゃんね?」
「・・・避けた後に踏み込もうとしても何かが絶対飛んでくる圧を感じてうっかり踏み込めない。俺はまだまだだなぁ・・・」
【地御前と客野のスパーリング】
長身痩躯の客野がアップライトして見るからに膝のバネの効いたステップを踏み地御前に左ジャブを飛ばして牽制。
地御前は両拳を胸の前に置いて構え、上半身を揺らしながら客野の左ジャブの引きに合わせて手繰り寄せられるように踏み込み様、左ショートストレートを縦拳で放つ。
危険を察知した客野が飛び下がるように大きくバックステップを踏むと同時にワン・ツー・スリーストレートを放って地御前の踏み込みを牽制。
地御前の周囲を旋回しつつ高速のストレートや左フックで接近を阻みにかかる客野。
対して地御前は客野が放った左フックの打ち終わりに乗り掛かるような不思議なタイミングで距離を詰め右のショートストレートを放ちかけた所でラウンド終了。
「入ってくるタイミングが、かなり変!影に取り憑かれてる感じだわ・・・・」
「客野くんは届きにくいなぁ・・・」
【江波と井口のマスボクシング】
井口が膝のバネを利かせたリズムから的確で鋭いジャブを放つ。
江波は90Kgまで絞れた肉体でヘビー級としては出色のフットワークの軽さで左ジャブ左ジャブからの右ストレート左ストレートを繰り返し井口に対して伸ばし続けている。
江波が放つストレートには相当な伸びが感じられ、井口も驚愕を隠さない。
また、井口が江波の眼前まで伸ばす、もしスパーリングならば大ダメージを被りかねないパンチから目を離さずに、しっかり防御動作を行っている。
「井口くんのパンチをよく見て外して外したら即打つ!これでヒット率アップ!」
「・・・いまの日本のヘビー級で江波が普通に打つストレートをかわせるやつなんかいないと思うんですけど?」
【地御前の動体視力強化】
体育館の板壁を背に構えている地御前。
試合用10オンスのグローブを装着した宮内が地御前に向かってランダムに知ってる限りのコンビネーションを放つ。
それらの全てを最小限の動作で外して被弾をしないまま2ラウンド終了時点で宮内がGive up!
「・・・空振ると余計に疲れる・・・」
「宮内くん、パンチ速くなってるね」
【銀山と江波の重心並びにボディの強化】
両者グローブをつけて接近し、しっかり重心を落とした構えでポジションを変えながら、お互いのボディのみを叩き合う。
重量級同士で体育館内にボディを叩き合う鈍い音が響き渡り続ける。
「やっぱりヘビー級のパンチは受けててやばい」
「腹筋割れないなぁ・・・」
【地御前と宮内のスパーリング】
開始25秒あたり。
慌てる地御前。
「お〜い宮内くん、大丈夫?」
以上!
【練習後のミーティング】
今日も練習お疲れ様。
キューバジュニアチームとの交流戦に向けたいい練習ができてるようで何より。
もう見てると思うけど、キューバチームの監督から挨拶というかお礼状みたいのが届いていただろう?
どうした、客野くん?
「そうそう、何であれがここにあったんですか?主催するのは武領高校でしょ?」
そう、その武領高校の佐竹監督から頼まれてね。
読めないから翻訳してほしい、とね。
「なるほど、あの佐竹先生ならスペイン語なんか読めるどころか日本語だって怪しい・・・え?先生、スペイン語とかわかるんです?」
銀山くんが意外そうな顔をするので一応説明しておくと、僕は日常会話程度なら英会話、スペイン語、イタリア語なら大体わかる。
割と僕のような芸術畑の人間は英会話以外にも外国語に堪能な人が結構いるんだよ。
地御前くんはスペイン語わかるよね?
きっかけは何だった?
「スペインという国が芸術大国で個人輸入で画材を購入したりしていたんです。あちらにしかないものも結構あるんで。その取説を解読しているうちに分かるようになってました」
と、言うことなので納得したかな?
それじゃみんな、今日もお疲れさん!
「・・・・納得できるかぁぁぁぁ!!」
客野くん、もう遅いから騒がない!




