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Nice Fight!〜違う道が1つになって同じ夢を見ていた〜  作者: livingdead


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交渉

いま私がいるのは、この学校つまり、国際教育大学附属国際高校での私の仕事場、校長室である。


そこで私は今、1人の若い教師と向き合い、かなり緊張感のある話し合いを強いられているのだ。


その若い教師とは、美術教諭の西木匠。


去年の今頃は、彼が元々受け持っていた美術部が廃部となり、すっかり意気消沈していたというのに今はどうだ?


薙沢県が含まれている沿岸地域の教育委員会から度々報告が入ってくる。


「薙沢県から突然現れた貴校のボクシングチームが今沿岸ブロックで非常に注目されている」


だの


「国教大附属としては今後どのようにこの新しい若い力を盛り上げていくのか?ビジョンを示してほしい」


とか・・・・・そんなこと言われてもなぁ・・・・・


元はといえば、文科省からの言いがかりをかわすために作ったダミーのようなものだったんだ。


ボクシング同好会・・・それが半年ちょっとで運動しか能がない脳筋高校の連中に認められてしまうほどのレベルにあの美術教師が押し上げてしまっていた。


こんな理不尽、まかり通るのか?


などと愚痴っていても仕方ないか。


まずは当面の問題として、私の目の前に居座って私の返答いかに?と、こちらを凝視している西木くんをどうかわすべきか、教員としてのキャリアは私の方がはるかに上であるはずなのに、なぜこうも圧倒されてしまっているのだろうな?


「・・・校長、僕はそんなに難易度の高い提案をしてるつもりはないんですけどね?」


普段、人畜無害そうな人間が仕掛けてくる圧というのは、ここまで人を追い込むものだったんだろうか?


要するに西木くん、君が言いたいのは今後のことも考えてボクシング同好会の練習環境をもう少し整えたいということだろう?


その一環としてまずはこれまでのような空き教室を使った練習ではなく、放課後に体育館の使用を許可してもらいたいと・・・・だからそれについてはだな、1度職員会議に諮って・・・・


「それで話が通ると、まさか思ってはいませんよね?」


うっ・・・・・


「僕の経験上、この学校での職員会議は基本的に変化を嫌います。これまでの流れを変えるような質疑は全て現状維持、もしくは様子見という形で自然消滅に追い込まれています。ただ、現状これでは済まされないところまで来てるということはお分かりでしょうか?」


一気に現在、我が校が置かれている状態を理解させられた。


私は知っている。


この西木くんという教師が生徒たちから人望があり、教育に対してしっかりとした理念を持っており、また何事につけても有能であるということを。


だが、それゆえに以前にもあった西木くんを嫌う教員の暴走から起きた生徒へのハラスメント事件。


変化を嫌う教員からしたら西木くんは正論しか言わない、鬱陶しい存在でしかない。


実際、いま詰められている私も本音を言えば落としどころで妥協してもらいたいものなのだが・・・・


「校長としましては、適当な落としどころが欲しいところなんでしょうが、今僕に関わっている生徒たち、彼らは僕のことを全面的に信用してくれている存在なんです。だから、僕はこの件に関して妥協するつもりは一切ありません」


口調はめちゃくちゃ穏やかなんだがなぁ・・・・その内容から感じられる覚悟が怖い。


・・・・腹をくくるか・・・・


分かったよ、で?私はどう立ち回ったらいいのかな?


「ご理解ありがとうございます。単純な話ですが、校長の裁量において、ボクシング同好会が体育館を練習場として使用することを許可したと周知していただければ良いだけの話です」


校長としてのいわば強権発動だな・・・・


こうすれば私が正式にボクシング同好会の活動を学校として承認したことになるわけだし・・・はぁ、この若造にはしてやられた・・・


「報告が遅れて申し訳ないのですが、いま我がボクシング同好会には海外からの遠征チームとの交流戦にも招待が来ています。その時の内容、結果次第で我が校のブランド価値は相当跳ね上がると思われます。教育の究極とは文武両道、校長が求める形とはいささか異なるかもしれませんが、この点をしっかりご理解いただければと思います」


魅力的でもあり、なんとはなしに将来が思いやられるような・・・・


そう感じているのは私だけなのだろうか?

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