贅沢贅沢公式デビュー!
9月の強化合宿からしばらく過ぎて、僕たちは日常と日々の練習に明け暮れています。
宮内白塔です。
合同強化練習では練習試合でコテンパンにされちゃうわ、その後に世にも恐ろしい体験をして、トラウマになりかけるわで散々だったと思われそうですが、それでもまぁ日常に戻って同好会で練習していると、それなりに自分のレベルが上がっていることが見えてきて、次回に向けてのモチベーションは上がってきています。
こうして学校での学習とボクシングの鍛錬。
そして自宅では朝晩のランニングと自主練。
これまでの学生生活の中でも一番充実した日々を送れている、と思います。
そんなある日の事、ボクシング同好会の部室である美術室でみんなと練習前の準備をしていた時です。
顧問である西木先生のスマホがLINE を受信した様子で、先生は画面を確認して目を丸くしていました。
どうしたんだろう?
西木先生は少し考え込む仕草をした後、美術室の奥の個室・・・今では薙沢県ボクシング連盟の本部兼事務局となっている部屋に入って、どこかに連絡を入れてるみたいですね。
僕たちに関わることであれば後で必ず報告してくれますので、とりあえず練習に集中しようと思います。
「沿岸地区ボクシング連盟から連絡がありました。結構重要な話が続くからよく聞いておくように」
練習後のミーティングで西木先生が開口一番そう切り出しました。
「まず再来月11月だね。中旬に沿岸地区武領県に海外のジュニアチームが遠征してきます。そのチームとの交流戦に我々も招待されました」
おぉっ!
僕だけではなく、他のみんなも思わず声を上げて場がどよめいてます。
「海外のジュニアチームって国はどこなんですか?」
銀山くんが質問すると西木先生、少し気まずそうな表情になり短く答えました。
「・・・キューバ・・・」
・・・!?・・・
いま、何と!?
「これはこれは、またすっげえところに招待されたもんですね」
井口くんが心底愉快そうに声をあげてます。
いや、僕もボクシングを始めてかれこれ数ヶ月、色々と見たり聞いたりしたから知ってるよ。
キューバといえばアマチュアボクシングでも世界最強の国じゃない!?
ジュニアチームとはいえ、そんなところが日本の地方にわざわざ遠征してくるんですか?
「僕もよく知らなかったんだけどねぇ、実は僕たちがいる沿岸ブロックってボクシングの競技レベルが相当高いみたいなんだ。それこそキューバみたいな国が定期的に遠征してくるくらいには、ね」
うひゃー!
いや、本当にそれしか言葉ができませんね。
「ちなみに交流戦って言ってましたよね?てことは練習試合的なのあるんすよね?」
なんだか嬉しそうだね客野くんは。
「いや、今回は練習試合ではない。交流戦ではあるんだけど、実質公式戦扱いになる。つまり、この遠征が君たちの公式戦デビューとなるわけなんだよね」
なんとまあ、僕たちの公式戦デビューの相手が世界最強のキューバチームですか?
分かっている人からしたら、ありえないというか贅沢極まりないデビュー戦になりそうです。
「それだけ先日の強化練習での君たちが評価されたということだ。相手が相手だから大変だと思うけど、胸を張ってぶつかって行っていいんじゃないかな?」
それはもちろん、頑張りますよ!
てか、客野くんテンション上がりまくってるね。
「デビュー戦で世界タイトルマッチやるみてえなもんじゃん!これで気合が入らないわけねえって!!」
フフッ、その元気が羨ましいなぁ・・・・って客野くんを見ると急に顔を赤くしてそっぽを向きました。
何故?
「それで今回はだね、相手チームも結構大所帯で来るみたいだし試合数もそれなりにあるから。君たちも適正階級で試合に出場できるのでこれからしっかり仕上げていこう」
というわけで、大贅沢公式戦デビューのチーム編成すぐに決定しました。
ピン級 客野太郎
ライトフライ級 地御前栄代
バンタム級 宮内白塔
ライトウェルター級 井口崇通
ミドル級 銀山御幸
ヘビー級 江波一成
そうそう、江波くんね!
ついにヘビー級のリミット90kg に減量を成功したんだよ。
初対面の時と比べるともう引き締まってすごいんだから!
・・・・ところで、地御前くん?
その光の消えた瞳で何かブツブツ考え込んでるみたいだけど・・・・?
詮索するのはよしましょう。
さあ、何はともあれ公式デビュー戦思いがけず決まっちゃいましたので、やれることを精一杯頑張ろうと思います。
では、また今度!




