(閑話)扉の陰から
皆さま、はじめまして。
そうでない御方は御無沙汰しております。
うふふ・・・
あら、失礼致しました。
今この場所にいられることが嬉しくてつい笑いがこぼれてしまい、はしたなさに赤面の限りでございます。
申し訳ございません。
私のお話を聞いていただくのに名乗りを失念しておりました。
失礼の段、ご容赦いただければ幸いでございます。
私は弥能礼文。
薙沢県立中央病院、脳外科、脳神経科医師、薙沢県ボクシング連盟医事委員長外薗峰允の実妹で国際教育大学附属国際高校美術教諭、西木匠先生の・・・・こ、こ・・・
申し訳ございません。
まだ恋人とか婚約者とかお答えするにはおこがましすぎまして・・・お話が進むまでもうしばらくお待ちいただければと・・・・
え?
恋人も婚約者も何もそもそもまだ会ったことないでしょ?
ですか?
確かにその通りでございます。
私はお見合い写真で見させていただきました、あの方しか存じ上げません。
だからこそ今日、お兄様のスマホをジャック・・・コホン・・・然るべき筋から情報を収集いたしまして、あのお方を一目だけでも瞳に焼き付けるために業務スケジュールをこの唐河県に誘導したのです。
スケジュールの管理調整は秘書を生業とする人間の心得でございますので。
すでにここで察しておられる方も多いのでは?
と思います。
私は今、唐河中央高校の体育館、ちょうど高校生ボクシングの合同練習が行われておりますアリーナ前の入り口扉で中の様子などを見させていただいております。
え?
せっかくここまで来たのだから、中に入ってお兄さんに顔を繋いでもらってお話でもしたらどうですか?
ですか?
・・・そんな・・・西木先生は今大事なお仕事の最中です。
私の気持ちを優先して西木先生にご迷惑おかけすることなんてとんでもございません!
お兄様にしても、ここに遊びに来ているわけではないのです!
私のわがままに付き合わせることは絶対にありえません。
え?
随分と節度のあるストーカー女ですね
・・・ですか?・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・うふふ・・・・・・・あなたですか?
今のご発言は?
ちょっとこちらでゆっくりお話をさせていただきますね。
(15分後)
大変お待たせして申し訳ございません。
私どもの方は始末・・・コホン!
意見のすり合わせが終わりましたのでご心配なく。
うふふ・・・
今日私がこちらを訪れましたのは、あくまでも西木先生を扉の陰から見守り私の想いを感じ取っていただくためで・・・・あら?
西木先生の傍らにいます、ちっちゃなお子さんが軽く身震いをした後・・・偶然でしょうか?
今私がいる扉の方に怪訝そうな視線を向け・・・
あら、西木先生のT シャツの裾を引っ張る仕草が可愛いですわ。
でも何かこちらに向かって指を指して西木先生に訴えているようです。
・・・(先生、あちらからぞわっとする気配がするんですけど)・・・
あぁお気になさらないでください。
ただの読唇術ですので。
ゾワッとする気配?
何のことでしょうか?私も用心しないといけませんね。
あら?
どなたかしら??
西木先生のチームの方ですわね。
え?
「もしよろしければ中で見られてはどうですか?」
ですか?
随分とお顔立ちが整っておられる方が私にそう勧められるのですが、それは私の主目的に反しますので、丁重にお断りさせていただきました。
ただこの方、私がその旨を伝えますと、突然その場に座り込んで小さな悲鳴をあげていざるような動きで震えながら離れて行かれたのです。
体調でも悪くなったのでしょうか?
心配です・・・・
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前置きをすっ飛ばします。
銀山です。
たった今、うちの宮内が腰を抜かした状態で這いずりながらチームの集合場所に戻ってきて、隅っこの方で膝を抱えて真っ青な顔になりガタガタ震えています。
こんなダメージを食らうほど長時間試合はしてないはずですし、何かしら別の体調不良が?
ともかく俺たちに同行して強化練習に来ていただいてる外薗先生に事情を伝えてきていただきました。
「バイタルは正常だね。嘔気とか目眩は?」
(宮内ガタガタ震えて返答が困難・・・不意に声をあげる!)
「ヒィィィッ!!!怖い怖い。怖い怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い!ヒィィィ!!」
怪訝そうな様子で宮内の反応を見る外薗先生でしたが、不意に何か思い当たったらしく顔面蒼白となり冷や汗が止まらなくなっていました。
そして外薗先生は西木先生に懐から出した錠剤のシートを手渡し
「入眠前に宮内くんにこれを服用させてあげてください。頓服のようなものなので、宮内くんぐらいの年代の子にはきつい副作用はありません。これを飲んでぐっすり眠れば翌日には大丈夫かと」
なんだか一気に巻くしたてるように説明していた気がします。
一体何だったんだろう?
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皆様、私はいつでも西木先生を見守っておりますわ。
またお会いしましょうね♥




