肉の壁と銀山御幸
入学式の日、校内の掲示板を見た時、1つの張り紙に目が止まった。
『ボクシング同好会!新規会員募集中!』
妙に丁寧なボクシンググローブのイラストに紹介文はシンプルにそれだけ。入学した時に驚いたのが、この学校にはまともに活動している部活動が1つもないという事実。入試前にもらった学校のパンフレットに掲載されていた部活のほとんどが活動実態がないと漏れ聞いて正直、この学校にこのまま入学していいものか?1年我慢して違う学校を受験し直すか?どこかに編入させてもらうか?自分のリサーチ不足で親に迷惑かけるなぁ・・・と、まとまらない思考であれやこれや考えていたところで、ボクシング同好会の掲示物に目が止まっていた。
長々と失礼しました。俺の名前は銀山御幸、国際教育大学附属国際高校の新1年生です。先ほども述べていました通り、俺はボクシング同好会の募集に興味を持ちました。入学式の時に感じていた違和感がこの学校の噂を聞くにつけて確信に変わっていき、結果
「やばい学校に入学してしまった」
と、言った後悔の気持ちに包まれていた中、昔から好きでよくテレビやYouTube なんかで観戦していたボクシングの同好会がこの学校で立ち上がっている。いつか競技者としてボクシングをやりたいと思っていた俺は迷わず、この同好会に入会しようとボクシング同好会の本部らしい美術室に足を向けていました。中学生の時、いつかボクシングをやる時に備えて、朝晩のランニングは欠かさずやっていたから多分スタミナには自信を持っていいと思います。
調子のいいことを考えながらたどり着いた美術室。
「・・・・・・・・・・」
入り口のところに縦にも横にも巨大な肉の壁が鎮座していて、俺は思わず声が出てしまっていました。
「・・・で、でか・・・」
俺の声が聞こえたのかその肉の壁が俺の方に振り返り、ちょっと小さい目を見開き、慌てたように
「あっ、ごめん、ごめん。今どくから」
と巨体を端に寄せて、俺を美術室に招き入れてくれました。中にいたのはその肉の壁の他に多分顧問であろう、若い美術の先生らしき方と、そして通販で購入したであろう真新しいボクシンググローブやヘッドガードなど手に取って見ている小学生・・・・・小学生!?俺の思考を読み取ったのか、その小学生は俺の方に顔を向けて静かに笑みを浮かべ言いました。
「初めまして、新入生の地御前栄代です」
笑顔だったけど、額がピキッとなっていたのを俺は見逃していませんでした。顧問らしき若い先生は俺を見て
「入会希望?今のところ部員と言っていいのかな?部員はこの地御前くんともう1人、そちらの江波くん。見ての通り、まだ何にもない状態なんだけど、どこまでやれるか、ここに来てくれたみんなで作り上げていければと思ってるけど、参加してくれるかな?」
そう言われて俺は即答していました。
「入会します!」
一目見てわかっていました。この先生はおそらくですけど、ボクシングをやったことどころか触れたことすらない種類の人なんだと。どういう事情なのかはわか
りませんでしたが、これは俺の根拠のない勘だったと思います。この先生は本気だと。俺もボクシングそのものを好きなのは本気だから次は競技者として向き合いたい。何もないところから始める?多分それがいいんだと俺はあの時感じていたんでしょうね。そしてそれが正しかったことは言うまでもなかったことだと・・・・




