抜け道
(……なんだ?何を話しているんだ?)
隼が屋根の上から足を止めた鬼塚陣営のプレイヤーを狙撃していると、突然、鬼塚陣営が後退を始めた。
「……ここはもう十分だ。九条がすぐそこまで来ているはずだ、迎え撃つ準備を整えろ。」
声が聞こえた訳ではないが、天守を目指すのを辞め、城門を固めはじめた鬼塚の部隊を見て、隼は陽翔が倒され猪ヶ倉城が陥落したことを理解した。
(さて……これからどうするか。天守を狙おうにも差し替える旗がないし、かといって死んでリスポーンしたら天鷹城から移動してこないといけない。どうやってか今の状況を活用できないか……ン?)
考え込む隼の元に九条から一通のメールが届いた。
『君は鬼塚さんを倒すことだけを考えて動いてくれ。方法は問わない。』
「……っぱ。うちの城主が一番怖いわ。」
次の行動を考えている時に、まるで見えているかのようなタイミングで届いたメールに不気味さを感じながらも、隼は鬼塚の動きを把握出来る場所へと移動した。
猪ヶ倉城前
「待たせたな鬼塚」
「むしろ早いくらいだ……陽翔って城主と戦ったんだろ、どうだったんだ?」
「実力はもちろん、時間を稼ぎたいだろうに、全力で戦ってくれた良い奴だったよ……」
「そうか……」
陽翔を倒し、旗を差し替えた御影は九条を待ち構える鬼塚と合流した。
「こっちはどうなんだ?九条の部隊がまだ来ていないようだが……」
「……リスポーン地点は更新してきたか?」
「……あぁ、だが何故だ?予定では陣幕にリスポーンしたプレイヤーで集まって、挟撃するんじゃなかったか?」
「わかんねぇのか?九条の天鷹城から猪ヶ倉城までの距離はそう離れてねぇ。それなのに未だに姿を見せやがらねぇ」
「つまり、山や森、林の中に隠した陣幕を破壊していると……そう言いたいんだな」
「そうだ……弓のガキにやられた俺のとこのプレイヤーが、陣幕じゃなく、自分の城にリスポーンしたことから間違いない。」
「どうする……今回は諦めるか?」
「いや、俺に考えがある。」
鬼塚と御影の会話から三十分後、九条陣営到着。
「……本当はお前が到着するまで持たせるつもりだったんだがな」
「勇さんたちは充分よくやってくれたよ。」
裏門(搦手門)から猪ヶ倉城を脱出した勇は九条の部隊と合流を果たし、鬼塚、御影陣営の部隊を目視できる距離まで近づいていた。
「それにしても、ゾンビアタックか……あれされると面倒くさいんだよな〜」
九条たちと対面している鬼塚、御影陣営の部隊は少数。一つの城に所属できる限界が二百名。城に所属することでリスポーン地点を更新した二百名が一万のNPC兵士を従えて立ち塞がっている。
「残りは城で籠城……ゾンビアタックでこっちの戦力を減らすつもりなんだろうね。まぁ、そうはならないんだけどね。それじゃあ行こうか」
九条が動くと、陣形を崩さないまま九条陣営の二十部隊、総勢二十万超える大群が猪ヶ倉城へ向けて走り始めた。
「正面からやり合う必要はない!側面に回って攻撃を仕掛けるぞ!」
猪ヶ倉城へとリスポーン地点を更新した御影陣営のプレイヤー二百名は、一万のNPC兵士に命令を与え、馬を走らせた。
「あっちは鳴海さんたちに任せてよさそうだね。」
鳴海や火室たちの右翼の部隊が御影陣営の一万ちょっとの部隊と衝突する。その間に戦闘を避けた九条陣営の部隊はあっという間に猪ヶ倉城を取り囲むことに成功した。
それから三十分が経ち、猪ヶ倉城内。
「お前ら……どこから入りやがった。城門が破られたという連絡は入っていないぞ」
天守から全体に指示を出していた御影、鬼塚の前に九条と仲間のプレイヤーたちが現れた。
「この城には抜け道があってね。陽翔くんの趣味が幸を奏したよ。」
「抜け道!?彼はそんな物まで……だけどちょうどよかったんじゃないか?『四英傑』と呼ばれた俺たちが、戦わずに終わるなんて味気ないからな。」
御影は、槍を九条に向けて構えた。
「……この雰囲気の中、申し訳ないんだけど。御影さんと戦うのは俺じゃないよ。」
剣崎が九条の横に並び立ち、御影、鬼塚と向かい合った。




