最強への挑戦
以前、圧倒的な暴力を前に隼と二人がかりでも倒すことの敵わなかった朱羅。その朱羅を前にして剣崎は臆することなく二振りの刀を構えた。
「剣崎……お前は確かに強くなった。だけどなんでか、お前に負ける気は一ミリもしねぇんだよなぁ!」
朱羅の鍛え抜かれた強靭な足腰は、三メートル先の剣崎までの距離を一瞬で詰めた。
(くる!!)
朱羅の剛腕から放たれた方天画戟による薙ぎ払い。剣崎は過去に戦った際の、朱羅の薙ぎ払いを受けるイメトレを何百と繰り返していたお陰もあり、すぐに行動に移すことができた。
(受けるのは薙ぎ払いの終着点!)
方天画戟による薙ぎ払いの恐ろしさは方天画戟の持つ『柔軟性』である。この柔軟性から薙ぎ払いの際に発生する『しなり』が破壊力をもたらす。
剣崎は薙ぎ払いのスタートから終着点までの勢いを、十段階で考え、威力の落ちた終着点で受け止めた。
(……ッ!七じゃダメか……もっとギリギリで受けないと勢いを完全に殺しきれない)
薙ぎ払いのスタートが一と考えた場合、剣崎の考える薙ぎ払いの威力が最高に達するのが五。剣崎は朱羅が薙ぎ払いの構えをとると同時に左前に移動することで、威力が衰える位置で攻撃を受けることに成功していた。
「ハッ!いいじゃねぇか、俺対策ってか!やれるもんならやってみなぁ!」
突き、叩きつけ、薙ぎ払い、技術もへったくれもない力任せの攻撃。しかし、学んで知り得た訳でもない戦闘のセンスだけで補われた、間合いや攻撃のタイミングにより、ただの力任せの攻撃はmillionwars内で対人戦最強と言わしめる程の勝率を誇っていた。
「どうした!どうした!避けてばかりじゃ、あの時の戦いと何も変わらないぞ!」
剣崎は朱羅の攻撃を見事に受け流し続けた。
(まだ……まだ……まだだ……今!!)
完璧なタイミングで動き、完璧な位置で受けた薙ぎ払いは、剣崎に右手の刀で受け止められるほど勢いが衰えていた。
(このまま、攻撃に!)
剣崎は方天画戟の柄を受けた刀で滑るように移動し、左手の脇差の間合いまで近づくことに成功した。
(このまま……!)
剣崎は勢いのままに脇差を朱羅へと突きさそうと、さらに一歩踏み込んだ。
「……っが!」
しかし、朱羅から放たれた後ろ回し蹴りが剣崎の腹部に命中し、体が後ろへと吹き飛んだ。
「あっぶねぇ……ハッ!小細工抜きで俺を追い込むなんてな、やるじゃねぇか」
朱羅は方天画戟を脇に構え、薙ぎ払いを予告する。それを見た剣崎も、すぐさま起き上がり、攻撃を受ける心の準備を整える。
(さっきの感覚を思い出せ……)
再び自分から攻撃を仕掛ける朱羅。剣崎は先程の感覚を頼りに、攻撃の終着点を見切り、刀によるガードを試みた。
「……なっ!」
しかし、朱羅が回転と体重の力を方天画戟に加えたことにより、方天画戟による攻撃の終着点は大幅にズレ、朱羅の攻撃を二度も受けた剣崎の刀は「ミシミシ」と音を立て、破壊されてしまった。
(ここまでかな……)
刀の軋む音を聞いた瞬間に、何とか後ろへと飛び退くことに成功したものの、右手に持っていた打刀が破壊されたことにより、剣崎の心は折れかけていた。
「受け取れ……剣崎!!」
(隼!?)
隼の声と、ほぼ同時に手放したはずの槍が剣崎の前に突き刺さった。
「あいつ……槍投げの才能もあるのかよ……」
礼を伝えたい気持ちを押し殺し、槍を手に取り、右脇に槍を構えた。
「第二ラウンドってか!かかってこい剣崎!!」




