天守攻防戦
辺り一帯に響いた法螺貝の音。法螺貝が響くと同時に「ギィィィ」と音を立てながら城門が開き、外からなだれ込むように九条の率いる部隊が城内へと侵入した。
「お疲れ様でした二郎さん。後は任せてください。」
九条は閂を外した二郎へと労いの言葉をかけると、高くそびえる天守へと向かった。
「グッ……!」「ガッ……!」
九条の率いる五百人のプレイヤーと五百人の天鷹城のNPC兵士により編成された、少数精鋭の部隊は、天守を守ろうと立ちはだかる鷲宮城のプレイヤーやNPCを次から次へと薙ぎ倒し。ついに、天守の前までやってきた。
「随分と暴れ回ってくれたみたいだな九条。」
九条がNPC兵士たちを掻き分けて、先頭へとやってくると、目の前には九条の城を攻撃しているはずの朱羅と朱羅陣営に所属する、millionwar内では名の知れたプレイヤーが五十人が天守の扉の前に立っていた。
「……朱羅さんこそ三日間も休まずに俺の城を攻撃してたじゃないですか。」
「どうやってここに……」普段であれば城へと戻った手段を聞いていた九条だったが、ここが事実上の最終決戦。尋ねる時間が今は惜しい。
「悪いんですけど、通らせてもらいますよ。」
九条が腕を上げると、一斉に九条の部隊が朱羅たちへと襲いかかった。
「……っな!」
朱羅の持つ方天画戟による連続の三連撃が、甲冑の上からプレイヤーの頭、喉、体を捉えた。朱羅の怪力による一撃を受けたプレイヤーたちが、立ち上がれるはずもなく武器と甲冑を残し、消え去った。
「おい、おい。何立ち止まってんだ? 来ないならこっちから行かせてもらうぜ!」
今度は朱羅と五十人のプレイヤーが呆気にとられていた九条陣営のプレイヤーとNPC兵士へと攻撃を仕掛けた。
圧倒的に人数で劣る朱羅陣営のプレイヤーたちは、持ち前の身体能力とゲームで磨いたプレイヤースキルで九条陣営のプレイヤーやNPC兵士を次々となぎ倒した。
「……ッ!」
朱羅陣営のプレイヤーの一人が倒れた。朱羅陣営のプレイヤーたちの視線は、自然と倒れた仲間の前に立つ二刀流のプレイヤーへと集まった。
(警戒するのは突きだけで充分……恐れずに一歩前へ!)
朱羅陣営のプレイヤーの多くは、リーチに優れた長物を好んで使用する。剣崎は、敵味方の入り乱れる混戦状態を逆手にとり、取り回しの効かない槍を捨て刀を選択。
味方に当たることを恐れ、薙ぎ払いという選択をとることができない朱羅陣営のプレイヤーに対して刀の間合いで切りかかる。
「舐めるな!」
しかし朱羅陣営のプレイヤーたちは一騎当千の強者。即座に槍を短く持ち直し、刀の間合いに対応。
(上手い……だけど鳴海さんほど速さはない!)
持ち直したところで突き以外の攻撃手段をとりにくいことには変わりなく、鳴海の突きの速さに慣れている剣崎にとっては躱すことは造作もない。
(二人目……!)
突きを躱した剣崎が、隙間を狙い刀を振り下ろそうとすると、右横から強い衝撃を受けて集団の中から弾かれてしまった。
「随分と強くなったみたいだな、剣崎。どうやら、お前を放っておいたら不味いことになりそうだな。」
九条の部隊と朱羅陣営の精鋭、四十九名が戦うすぐ横で、剣崎と朱羅の一騎打ちが始まろうとしていた。




