勝利への渇望
(今度はさっきの逆だ……朱羅さんの攻撃の起こりを見逃すな……)
槍を手にした剣崎は、朱羅との間合いを保ちながら、朱羅の攻撃を待った。
「相変わらず待ちの姿勢か……まぁ、俺には関係ねぇけどな!」
朱羅は方天画戟を脇に構え、凄まじい速度で剣崎までの距離を詰め、方天画戟を振るった。
(……そこだ!!)
剣崎は朱羅の攻撃の起こりを読み。完璧なタイミングで槍を振るうことで、方天画戟の出始めを潰した。
「……っな!」
刀と槍で攻撃や防御の受け方が違うのは、武術の経験のない朱羅にも分かる。問題は剣崎の実力を見誤ったこと。
剣崎の得意とする戦い方は後の先。攻撃を待ち、相手の隙を着く。そこに剣崎の適応力が加わることで。戦闘に時間をかければかけるほど、剣崎を倒すことは難しくなる。
「……ッ!」
しかし、朱羅も戦闘においては負け知らず。すぐさま方天画戟を握る位置を変え、柄を使い剣崎の頬を叩いた。
(たたみかけ……!)
頬を叩かれ、怯んだ剣崎に追い打ちをかけようとした朱羅の足が止まった。
(いつもの勝てる気配が完全に消えやがった……このままじゃダメだな……)
「スゥッー……ハァッー」
朱羅は大きく深呼吸をして、心を落ち着かせると、方天画戟を右手のみで持ち、左手で腰に携えた打刀を抜いて中段に構えた。
「……………………いけるな」
朱羅は両の手に構えた武器を何度か素振りした。振るう度に方天画戟の持ち方は調整されていき、剣崎へと向き直った。
「悪いな待たせて、準備完了だ。」
方天画戟と打刀による二刀流。それを見た瞬間、剣崎は自身の敗北を予感した。
「……いくぜ!」
やはり、先に攻撃を仕掛けたのは朱羅。剣崎はどちらの武器から攻撃が飛んでくるのか、選択を迫られていた。
「こうして……こうだ!」
「…………ッ!」
朱羅は方天画戟を支えていた左手の代わりに、自身の体を代用することにより、百パーセントとはよべないながらも、充分な威力で剣崎に方天画戟を振るった。
方天画戟の一撃を何とか防ぐことに成功した剣崎を、朱羅の左手に握られた打刀による突きが襲った。
「流石だな……まさか、今のを防ぎきるとはな」
剣崎は身につけている篭手により、突きを弾くことで九死に一生を得た。
(強すぎる……)
先程までの豪快な戦い方とは打って代わり、コンパクトに攻撃を仕掛ける朱羅に対し、剣崎は打つ手をなくしていた。
「ハァー……フゥッー(俺の勝ち負けは戦いに大きな影響を与えない……俺が今やるべき事は、この人を少しでも長く引きつけること……)」
大きく息を吸い込み、吐き出す。深呼吸をすると同時に、自身の役割を全うすることを決めた剣崎は、槍を中段に構える。
「は?お前……何のつもりだ剣崎!!」
怒りで顔を真っ赤にした朱羅が一瞬で剣崎の元までの距離を詰め、ガードの上から強烈薙ぎ払い一撃を叩き込み、よろけた体に蹴りを入れた。
(くそ……!強すぎだろ……)
地面に倒れる剣崎を見下ろしながら、朱羅は剣崎に怒りをぶつけた。
「受けに回るのはいい……二刀流の時は、それでヒヤリとさせられたからな。だけど、今のお前からは俺を倒そうって気持ちを感じられない。どんな時も勝利を求めろ剣崎!勝てないと諦めたら、お前の成長はここで止まるぞ!」
一騎打ち……ましてや、敵の城主からの鼓舞。剣崎は動揺と同時に勝利への渇望を胸に抱いた。




