籠城
『両脇の乗馬している全プレイヤーは騎馬一万づつを連れ、朱羅の率いる大群を無視して朱羅陣営の城を目掛け行軍を開始しろ。残りの全プレイヤー、全NPC兵士は鼠入城に籠城して城を守る。』
鼠入城の城主 栁から届いた一斉メールの意味を九条陣営の殆どが理解していなかった。
「理解し難い……だが、これは命令だ。お前ら!迷ってる暇があったら体を動かせ!」
九条陣営において戦場を九条により任された者の命令は絶対。その意識がプレイヤーたちから迷う、一瞬の時間を消し去った。
「急に何をして……」
「朱羅さん!倉田さん!門を閉じさせるな!」
丈二の声が朱羅、倉田の二名の耳に届いた頃には既にほとんどのプレイヤーとNPC兵士は城内へと逃げており、門の前には鼠入城のプレイヤー二百名が門が閉じるまでの時間を稼ぐため殿として残っていた。
「自分の部下だからって栁も人使いが荒い」
鼠入城二百人のプレイヤーたちは、朱羅と倉田の部隊へと攻撃を仕掛け、門が閉まるまでの時間を見事に稼いで見せた。
「それで?あいつらはどうして籠城なんてことしたんだ?俺と倉田に命令したってことはお前には籠城の意味に気づいているんだろ?」
籠城にはメリットとデメリットが存在している。メリットは籠城することによる仲間の援軍が到着するまでの時間を容易に稼ぐことができること。だが、既に二十五万のNPC兵士を集めている九条陣営はNPC兵士の余裕はない。
そしてデメリットは、他の城とのパイプを絶たれてしまうこと。多くのNPC兵士と共に籠城している鼠入城の兵糧が尽きるのには、そう時間はかからない。兵糧が尽きた城はNPCからの『友好度』が下がるだけではなく、『士気』も低下して戦闘に大きな影響を与える。
援軍という使いこなすことの難しいメリットのうえ、デメリットが戦闘に大きく関わる『友好度』と『士気』のため、millionwars内の城主たちの多くは籠城という手を打つことは少ない。
「……鼠入城の柳は、こちらに馬がないことを利用して我々の城に攻撃を仕掛けるつもりなんです。」
「追いかけようにも馬がいなくて追いつけないってことか。」
「籠城されたことにより、この城を陥落させることはほぼ不可能となり、我々に取れる選択は、ここに居座り物資の供給を断つことで兵糧攻めを行うか、強引に石垣を登り城門の閂を外して押し入るしかありません。」
「……上手くいくと思うか?」
「……先程も言いましたが、ほぼ不可能です。堀は深く、石垣が高い。守られると攻めにくい城なんですよ、この城は。」
「だったらどうすればいい?」
「……僕が部隊の半分を指揮して鼠入城前に止まるので、朱羅さんは九条陣営の城を落として来てください。後から到着する予定だった騎馬隊にはこちらから朱羅さんと合流するようメールを入れておきます。」
「まずは部隊を大雑把に再編成するとこからだな……」
鼠入城 城内
「栁さん。あいつら動き始めましたよ……追わなくてもいいんですか?」
「お……追わなくても大丈夫だから。ぼ……僕たちの仕事はこれで終わり……後は九条さんが何とかしてくれると思うよ?」




