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成長



 轟鬼との一騎打ちから十分が過ぎ、剣崎の足元には幾つもの、猫又城のプレイヤーたちの装備が転がっていた。


 「なぁ隼……あいつってあんなに強かったか?」


 「ついこの間、鳴海さんに槍の特訓付き合ってもらったらしいですよ?なんでも、コツを掴んでからは鳴海さんと互角に戦えていたそうで、鳴海さんが焦りを感じてたとか……」


 「そりゃやべーな。刀だけじゃなくて槍も使いこなせるようになったのかよ……」


 「まぁ、あいつは『天才』ですからね。そんなことよりも火室さん、そろそろ……」


 「あぁ、分かってる。」


 火室は引き連れている五千のNPC兵士たちへと振り返り、声を上げた。


 「見たか野郎ども!人数でこそ我々の部隊劣るが実力はこちらが上であることを剣崎が示したぞ!臆することなく突き進め!」


 「「「ォオオオオオーー!!!」」」


 地面に響く仲間の雄叫びが聞こえた剣崎は直ぐに馬に跨り、仲間の元へと引き返した。


 「逃がすか!」


 猫又城のプレイヤーとNPC兵士たちは、仲間の元へと逃げる剣崎を追いかけた。


 「どけぇ!邪魔だぁ!」


 火室の部隊に剣崎が合流するとほぼ同時に、猫又城の部隊と接触した。


 「……!おい!何逃げてんだ!」 


 九条陣営とは違い戦闘に勝利することでNPCとの『高い友好度』を維持していた朱羅陣営。しかし、一騎打ちにより剣崎が猫又城のプレイヤーを五人倒したことで、勝利することで保たれていた『友好度』は下がりきってしまった。


 結果、敵に背を向け、猫又城へと、殆どのNPC兵士は逃げてしまい。プレイヤーを合わせ千人を超えない部隊となってしまった。


  (クソ……!こいつら粘りやがる!)


 いくら天鷹城のNPC兵士が強いとはいえ、所詮はNPC。戦闘経験の豊富な朱羅陣営のプレイヤーを倒すのは一筋縄ではいかない。


 だが、一筋縄でいかないのは猫又城も同じ。


 (殴っても、斬っても、刺しても立ち上がってきやがる……ゾンビかよ、こいつら!)


 これまで、圧倒的なプレイヤースキルで不利な人数差を覆してきた自信から、援軍の要請を怠った猫又城は城内の兵士を出し尽くしていた。


 「……ここは俺が引き受ける!まだ生きてるプレイヤーは全員、城内に立て篭り援軍が来るまでの時間を稼げ!」


 猫又城のプレイヤーがとった、現在においての最適解。しかし……。


 「……隼!」


 「……弓騎兵千人!俺に続け!」 


 敵部隊を横切り、隼の率いる弓騎兵が門へと逃げる猫又城のプレイヤーの背後をとった。


 「横隊(おうたい)陣形!」


 弓騎兵たちは横に広く展開し、弓を構えた。


 「…………討て!」


 一斉に放たれた矢が、頭上から肩や背中、馬へと突き刺さる。矢が命中したことにより落馬したものは馬から降りた、隼たちによりトドメを刺され。矢の直撃を避け、城門へと辿り着いた者は二十人にも満たなかった。


 (ここまでは計画通り……後はアドリブで!)


 猫又城の生き残ったプレイヤーたちは、城門へと辿り着いたのはよいものの、肝心の門が開くのには時間がかかってしまい、火室はその隙を見逃さなかった。


 「全軍突撃!」


 火室の命令により、騎馬が走り、敵の僅かなNPC兵士から部隊に穴を開け、歩兵を合わせた四千の部隊が猫又城 城門へ向けて走った。


 「しまっ……!お前ら!門を開くな!!!」


 一人残りNPC兵士を指揮していたプレイヤーの声は城門前のプレイヤーには届かなかった。


 (クソ……!急いでメールで……)


『門を開くな』たった一言の内容を送りきることすらできず、一人残ったプレイヤーの首に剣崎の槍が突き刺さった。


 (この戦い、俺たちの勝ちだ!)


 火室の想像通り、猫又城は呆気なく陥落した。敗北を予見した猫又城の城主が、城内の物資と共に城から脱出したため、大きな損害こそでなかったものの、得たものも少ない。


 猫又城を手に入れてから二時間もしないうちに、数万を超える朱羅陣営が奪い返しにやってきて、せっかく手に入れた猫又城は再び朱羅陣営が所有することとなった。


 「えっと……どうして三人はそんな顔をしているの?」


 剣崎 隼 火室の三人は城を奪還されたことを九条に報告と謝罪をするため、天鷹城の御殿へとやってきていた。


 「なんでって……勝てる人数ではなかったせよ、一度は手に入れた城を手放して逃げ帰ったんですから、こういう表情にもなりますよ。」 


 「あれ?もしかして、伝えてなかったっけ?君たちに猫又城を攻めてもらったのは、朱羅さんたちから横槍を入れられないためであって、本命は大群による鬼塚さん潰しだよ?」


 「え?」


 火室たちが猫又城で戦いを繰り広げる中、残りのプレイヤーたちは大群を率いて、鬼塚陣営への攻撃を開始していた。


 御影陣営と同時に攻撃されたことで、鬼塚陣営は必死の抵抗虚しく、幾つもの城を奪われた。


 「鬼塚さんの命令なんだろうけど、物資を全部燃やされちゃったせいで、城下に住むNPCたちのために食料とかを定期的に送らないといけなくなっちゃったんだけどね。……大丈夫?」


 「すいません気が抜けちゃって……」


 こうして猫又城攻略に向かった三人は、城を奪還されはしたものの、目まぐるしい成長を九条へと示すこととなった。

 

  


 

 

  

 

 

 

 

 

 

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