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猫又城攻略開始!



 (さてと、どうしたものかな……)


 天鷹城内の御殿。九条は隣に座る桜姫と共に、現在の状況をどう打開するか考えていた。


 (動きを見せない朱羅さんたちも不気味だけど、今の問題は鬼塚さんと御影さんだ。協力関係にはないみたいだけど、同時に攻められるとなると少し厄介だな……。)


 九条がmillionwarsの地図を見ながら考え込んでいると、先程まで、ただ、その光景を眺めていただけの桜姫が口を開いた。


 「申し訳ありません九条様……。お慕いしている殿方が頭を悩ませているというのに、私はお力になることができないようです……」


 桜姫は大粒の涙を流しながら、自分の未熟さを嘆いた。とはいえ桜姫は、城に付属する単なるレアNPC。優しい言葉を投げかけた所で強くなる訳でもなく、賢くなる訳でもない。


 (やっぱり、どうにも姫様のことは苦手なんだよな……天鷹城のNPC城主の娘。父親の城主を殺したこともあって、邪険にもしにくいし……邪険?)


 九条は涙を流す桜姫の方を掴んだ。


 「桜姫!」


 「……!」


 突然の九条の行動に涙を拭う桜姫の両の手の動きは止まり、涙でぐしゃぐしゃになった顔を九条に晒した。


 「そうだよ……なんでこんな簡単なことに気づかなかったんだ!ありがとう、桜姫。君のおかげで今の状況を抜け出せるかもしれない!」


 なぜお礼を言われたのか理解できないまま桜姫は、笑顔で誰かへメールを送る九条の様子を笑顔でただ見つめていた。


 鶴巻城 城内。御影の元に九条より一通のメールと馬車に積まれた大量の物資が届いた。


 「『荷物はあげます』か……自分が標的にされないための手土産なのだろうが……こちらとしては好都合。ありがたく利用させてもらうよ」


 蓄えのお陰で物資に余裕のある九条は、義理を通す真面目な性格の御影に対して物資を送ることを選んだ。


 物資を送ることで協力関係を結んだ訳ではない。受け取った上で攻撃をするという選択肢も御影はとることができる。


 だが九条は知っていた。様々な理由から御影が九条に執着しなくなることを。


 「やっぱり御影さんは真面目だな〜」


 九条の読み通り、御影は九条から鬼塚へとターゲットを変えて攻撃を始めた。鬼塚へとターゲットを変えた理由は大きくわけて二つある。


 御影が九条の城へと大群で攻め込むには、初日に奪い取った城へと兵士を一度送り込む必要がある。


 しかしそれをするには、朱羅 鬼塚の領地を通り抜ける必要があり。当面の敵が同じという理由で鬼塚が見逃してくれていたが、いつ行軍を阻まれるか分からない。


 そして何より自身と同程度の戦力しか持たない鬼塚を倒し、吸収することが、御影と鬼塚にとっての混戦を勝ち抜く唯一の勝ち筋。


 それらを加味した上で御影は鬼塚へとターゲットを変更した。そしてこれにより、御影 鬼塚による九条への集中攻撃は終わり、九条による攻撃が始まった。


 「まさか、俺たちだけで朱羅さんの所有する城を一つ落としに向かうことになるとはな」


 剣崎 隼 火室の三名は五千の兵を率いて、朱羅陣営の猫又城へと向かっていた。


 「……本当に俺たちだけで勝てるんですかね?」


 いくら天鷹城のNPC兵士が優秀とはいえ、二百人近いプレイヤーの集まっている城を攻略するのは不可能に近い。


 「速攻で陥落させてワンチャンじゃないか?援軍を呼ばれたら……その時点でアウトだろうな」


 三人が猫又城へと向かいながら作戦を立てていると、前方から大きな砂埃がこちらへと向かってきていた。


 「来たな……作戦通り頼むぞ」


 「……行ってきます!」


 剣崎は単身、砂埃のまう方へと馬を走らせた。


「我が名は剣崎!猫又城のプレイヤーに一騎打ちを申し込む!腕に覚えのある者は前に出ろ!」


 砂埃の主……猫又城のプレイヤーと大勢のNPC兵士へと近づき、声の届く位置から一騎打ちを申し込んだ。


 「どけ……俺が倒す」


 そう言って兵士の中を掻き分けて現れたのは、百八十cmを超える大柄な槍使い。朱羅陣営で前線を任せられているプレイヤーの多くが、この男同様にデカくて強いことが重要視されている。


 「俺の名前は轟鬼(とどろき)。俺が相手をしてやる、かかってこい!」


 (あの槍は……)


 男の持つ槍は十文字槍。三又に枝分かれした槍の総称で、この槍を喩える言葉に『突けば槍、払えば薙刀、引けば鎌』という物が存在する。


 三又に分かれた形状から「突く」「薙る」「巻き落とす」「引っ掛ける」など、戦闘において多くの役割を果たす。

 

 (だけど、あの構えなら……)


 脇構えで待ち受ける轟鬼に対し、剣崎は槍を中段に構え、飛び込んだ。


 (ここだ!)


 轟鬼の脇構えから放たれる十文字槍による薙ぎ払いを、振り切る前に槍で抑え勢いを殺した。


 「……ッ!」


 勢いを殺した剣崎は素早く槍から手を離し、腰の刀を鞘から引き抜き、防御の薄い顔面へと突き刺した。


 「……次!」

 

 

 

 


 

 


 

  


 


 


 

 


 

 

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