『四英傑』の策略
「さぁ、作戦会議を始めようか!」
『四英傑』の陣営を襲った連合軍は九条陣営以外の三人の陣営に少なくないダメージを与えることに成功したが、最終的には敗れ去り、吸収された。
そんな中、九条陣営の城主たちは天鷹城の御殿に集められ、作戦会議を開いていた。
作戦会議で話された内容は三つ。
一つ目は、プレイヤーの移動。連合軍との戦闘で大きな損害を受けなかった九条陣営は 朱羅 鬼塚 御影の三者から真っ先に狙われる可能性が高い。
それゆえ、戦闘能力とイン率(ログインしている時間)が高いプレイヤーを攻め込まれる可能性のある城へと移動させる。
二つ目は猪ケ倉城 城主の朝飛が知りうる限りの敵城内の構造の共有。
傭兵として活動していた際に記録した朝飛のメモは、集まった全ての城主に共有された。
三つ目は、どう戦うか。三つの陣営から狙われる可能性が高い以上、初めは守り徹せざるおえない。出陣後は各々の城主が指揮をするが、攻撃目標やタイミングは九条の命令に従わなくてはならない。
作戦会議から一ヶ月後、『四英傑』の陣営、全てのプレイヤーの元に九条の城が二つ落とされたという情報が届いた。
多くの優秀なプレイヤーの集められた二つの城だったが、朱羅と御影、二人の陣営から同時に攻撃を受けたことで九条は助けを送ることを諦め、陥落してしまった。
「ハメられた……!」
しかし九条もタダではやられない。九条は前線の城を食料の生産にのみ特化させ。育った作物は必要最低限のみを残し別の城へと運ばれていた。
つまり、朱羅と御影は備蓄のない空っぽの城を落とすために、少なくない資源を投入したことになる。
そして『四英傑』の陣営に所属する全てのプレイヤーに新たな情報が伝達された。
情報の内容は鬼塚により御影の所有する城が落とされたというもの。
九条の策を見抜いていた鬼塚が目をつけたのは、敵城へと行軍したせいで、守りが手薄となった御影の城。攻撃を受けていることに気づいた時には既に手遅れ。見事な手際の良さで陥落させてしまった。
一進一退の攻防の中、一人の城主が至極当然の疑問が九条へと投げかけられた。
「どこかの陣営と手を取りあった方が戦いを有利に運べるのでは?」
「こちらのメリットは大きいけど、相手にとってメリットが小さいから無理なんだ。」
兵力を数値化すると、九条陣営が九十。朱羅陣営が六十。鬼塚陣営、御影陣営が四十。『四英傑』による射手の湖の戦い、そして連合軍との戦闘、二つの戦いにより大きな被害を受けた鬼塚、御影の陣営は九条、朱羅の陣営以上に疲弊していた。
普通なら協力を選択する状況だが、このサーバーでの戦いも終盤戦。
協力した結果として九条、朱羅の被害が少なくなれば勝ち目は無い。とはいえ、兵力の少ない鬼塚と御影が協力した結果、九条と朱羅が協力することになってしまえば目も当てられない。
ゆえに、鬼塚と御影の選んだ選択は混戦による勝利。被害は抑えつつ、落とした城を吸収しながら戦う。最善の選択といえる。
二人に比べ兵力を残している朱羅も同様に九条と組むのは論外。鬼塚、御影のどちらかと組んだ場合、もう片
方が九条と組む可能性がある。
そんな中、最も兵力で劣る御影が行動に移した。
「全ての城は前線の城門前に陣幕を貼れ!」
リスポーン地点としての役割である陣幕を前線に配置させることで、プレイヤーのみで構成された二万を超える部隊を結成した。
一つの陣営に多くのプレイヤーが集まる終盤だからできる力技であり。一つの目的に向かい突き進む、御影陣営の得意とする戦法。
「御影さんが潰し合わないために攻撃しないことを利用する鬼塚さんも。プレイヤーだけの部隊を結成した、御影さんも、やることがえげつないなぁ〜。さて、ジョージさんはどう動くかな……?」
二人の城主の動きは九条の情報網にかかり、知ることができたが。依然として朱羅陣営の動きは捉えることができていなかった。
「今はまだ、我々の城を攻撃する陣営は出てこないはずです。チャンスを待ちましょう。」
朱羅陣営の影には、朱羅の右腕にして軍師として陣営の軍略を一身に担う男、丈二が常にいた。
朱羅陣営の一見無鉄砲に見える戦い方も、全て丈二が指揮することで、成り立っている。そんな丈二の命令は『待機』。
九条 鬼塚 御影の三人が、朱羅の元に集まった一騎当千のプレイヤーによって構成された部隊を恐れて攻撃してこないという予想からの命令。
実際に丈二の予想は当たっており、しばらくの間、朱羅の陣営を除いた三陣営での戦いが続いた。特に九条陣営への攻撃は激しく、九条たちは防戦を余儀なくされていた。
「いつも悪いな丈二。俺は頭を使うのはからっきしだから、お前にばかり頼ることになっちまって。」
「気にしなくていいですよ。あなたという飛び道具を使うのを私も楽しんでいるのですから。」
「……そうかよ。所で常識よ、このまま俺たちの作戦は「」上手くいくと思うか?」
「ハァ……そんなわけないでしょ。あなたの方が知っているんじゃないですか?あの人を相手に思い通り運ぶ作戦なんて存在しないってことは。」
「……まぁな!さて、九条……お前はどんな手で俺たちを出し抜くつもりだ?早く動かねぇと手遅れになっちまうぞ?」
こうして、後に『四英傑の戦い』として語られる初めの一週間が終了した。




