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瓦解する連合軍



 「丘の上の弓兵はお前のとこのプレイヤーが指揮してたはずだよな、どうなってんだ東城!」


 九条陣営の特攻部隊が去った後の連合軍本陣では、総大将睦月による責任の追求が始まっていた。


 「……丘上を任せたプレイヤーの一人、二郎から脱退のメールが届いた。恐らく、九条の命令で忍んでいたのだろう。気づくことができず申し訳ない。」


 (クソッ!どいつもこいつも、どうして俺の考えた通りに動きやがらねぇ!俺と九条(あの人)で何が違うってんだ!)


 即席で作られた連合軍の結束は脆く、連合軍に参加した城主たちは睦月の横暴な態度に嫌気が刺し、徐々に連合軍は崩壊へと向かっていった。


 「今頃向こうは大変なことになってるだろうな〜。」


 一方、矢を使い切った弓弦と隼の部隊が九条の本陣へと合流した。


 「九条さん、次はどうするんですか?」


 「彼らの出方次第かな?まぁ、連合軍は退却するだろうけどね。」


 間もなくして、九条の読み通り連合軍は兵士の補充のために退却した。


 「あーあ。やっぱり退却しちゃったね。」


 結束の脆い連合軍は撤退するべきではなかった。一度瓦解した組織の修復は難しい。信用を失った睦月に力を貸す城主は一度目より格段に人数を減らすことになるだろう。そして……。


 「たのもー!私は九条さんの配下の結衣と言います!お話があるので門を開けては頂けないでしょうか!」


 しばらく待ち「ギィィィ」という音を立てて開いた門の先には、大勢のプレイヤーが結衣を待ち構えていた。


 「私は熊野城 城主の大吾だ。結衣さん、単身ここに何をしに来た?」


 「何をしに来たか、既にご存知なのではないでしょうか?」


 「属国になれと言いに来たのか……」


 属国とは旗はそのままに、九条の軍門に下るということ。属国になった国にとって九条の言葉は強い強制力を働かせ、様々な状況に応じて強い影響を受けることになる。


 「ふざけんな!そんなもの頷くわけがないだろ!」


 城主の大吾を支える熊野城の副城主である夏が結衣に槍を向けた。


 「もちろんタダでと言うつもりはありません。九条さんの話では、あなたたち兵糧が残り少ないのではないですか?」


 「何故それを……!」


 「私たちの城主は凄いお方なので。それでどうしますか?属国になるなら、足りない分の兵糧は工面しますよ?」


 「その話受け……」「待ってください!」


 承諾しようとした大吾を夏の声が静止した。


 「……俺達には条件を飲む以外の選択がないのは、馬鹿な俺でも分かってるんです。だけど俺は……俺たちは自分より弱い奴の下に着く気はありまません!」


 「……では、どうしますか?」


  夏が槍を構える。


 「俺と一戦……お手合わせ願います。」


 それに答えるように結衣は薙刀を構えた。


 「こっちのが分かりやすくて、私も好きよ!」


 開始の合図はない。二人の距離がジワジワと縮まる。リーチの長さは身長の低い結衣が僅かに劣る。


 「……!」


 先に動いたのは夏。振る直前で手の中を滑らせ、ギリギリを掴んで振り抜いた一撃を結衣は薙刀を縦に構えることで防いだ。


 「重……ッ!」


 夏の攻撃を防いだ結衣は全体重を載せて薙刀を振るった。


 「ちょっ……待っ……!」


 一振……二振り……三振り……と結衣の薙刀による連続攻撃が続く。体の連動と体重を上手く載せた結衣の攻撃は女性による攻撃とは思えないほど重く、夏を追い詰めた。


 「そこまでだ!」


 夏が結衣の連続攻撃を何とか防いでいると今度は大吾が二人の戦いを静止する。


 「彼女の実力は、もう分かっただろ夏。」


 「そうですね……悔しいけど勝てる気がしないです。」


 夏は地面にへたり込み両手を上げて降参の意を示した。


 「改めて……我々熊野城のプレイヤー百三十名。九条様に忠誠を誓うことを約束します」


 「あ〜……そういう堅苦しいの私たちの色じゃないから、もっと気楽にいきましょ!改めてよろしくね大吾さん!」


 こうして熊野城は九条の属国となり、兵糧を得ることで城下に住むNPCたちによる一揆を回避することに成功した。


 「うん、想像以上の成果だね。」


 熊野城と同じように、連合軍から抜けて九条の属国となった五つの城。九条による連合軍への攻撃が始まった。

 


 

   

 

 

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