丘に潜む罠
「天鷹城が攻撃された!?」「大悟がやられた!?」
大悟の率いる熊野城の兵士たちが倒されてから、数分が経った頃。両陣営に情報が伝達された。
「……まさか誰にも気づかれることなく天鷹城まで辿り着くなんてね。熊野城の城主さん……少し興味があるな。」
天鷹城の中に招かれていないプレイヤーが侵入するのは、これが初めて。九条は、天鷹城までの道のりに配置した見張りの目を掻い潜り、天鷹城へと辿り着いた熊野城の城主 大悟に並々ならぬ興味を示していた。
「……楽しそうなとこ悪いが、今は目の前の戦いに集中しろ」
「……それもそうだね。それじゃあ弓弦さん、鳴海さん、隼くん、前方の敵を蹴散らしてきて。」
「了解!」
前を走る三人を、弓騎馬五千と鳴海の槍騎兵五千が追いかける。
連合軍 須藤率いる弓騎馬隊
「ハッ!性懲りも無くまた来やがったか!いいぜ、何度でも蹴散らしてやる!」
連合軍の弓騎馬隊を率いる須藤は総大将である睦月への方向をせず、弓弦たちの率いる部隊へと突撃をかけた。
「散!」
弓弦の一声で一つの部隊が三つに別れた。弓弦と隼が弓騎馬を、それぞれ二千五百連れて左右に展開し、鳴海の率いる槍騎兵五千が須藤の率いる弓騎馬隊へと真っ直ぐ突撃した。
「こ……こんなのどうすれば!」
選りすぐりの弓使いが集められた連合軍の弓騎馬隊は動揺を隠さずにはいられなかった。
「お前ら落ち着け!俺たちもバラバラになって、それぞれで戦うんだ!一つに纏まっていたんじゃ蜂の巣にされちまう!」
須藤の命令で部隊はちりじりに分散し、連合軍の弓騎馬隊は馬を走らせながら敵に向けて弓を構えた
「……まぁ、普通そうしますよね。鳴海!隼くん!」
「あぁ、分かってる!」
連合軍の弓騎馬隊がとれる選択は大きくわけて三つ。
一つは全力で引き返す。これは敵に自軍の位置を案内することとなり、最も悪い選択と言えるだろう。
二つ目は玉砕覚悟での特攻。自分たちの部隊は壊滅するものの、相手へ小さくない損害を与えることができる。プレイヤーだけで構成されているため、死んだ後も陣幕から復活が可能。
そして三つめが須藤の命令した、散兵。的を分散させることで敵の狙いを定めにくくすると同時に、部隊の壊滅を防ぐことができる。
優秀なプレイヤーであれば散兵を選ぶ。それゆえ九条は弓弦たちに一つ命令を与えていた。
「突撃だ!」
目の前に立ちはだかる相手のみを倒し、残りは完全スルー。本陣への突撃である。
「……なッ!」
不意をつかれた連合軍の弓騎馬隊は動揺により行動が遅れた。
「……っ!全員集合しろ!あいつらを急いで追いかけるぞ……!」
ここにきて、須藤が伝達を怠ったことが痛手となった。遠くから近づく砂埃を連合軍のプレイヤーたちは須藤が戻ってきたと勘違いをしてしまう。弓弦たちの完全な不意打ちを受けることとなる。
「クソッ!追いつけない!」
天鷹城の早馬で構成された部隊は異常なほど速く、須藤たちの馬で追いつくことは不可能だった。
「弓弦、隼!そっちは任せた!」
鳴海の匹いる槍騎兵たちが踵を返して、須藤の率いる弓騎馬隊へと馬を走らせた。
「……ちりじりになり、本陣に向かった弓騎馬隊を迎撃しろ!」
鳴海の特攻をいなして須藤たちの迎撃へと向かう。この状況における最適解。しかし……。
「させるかよ!」
鳴海の率いる槍騎兵隊が先程までより格段に速くなった。先程までは弓弦たちとの速度を合わせていた鳴海の部隊は須藤の想像以上の速度で須藤たちの元へと辿り着き、連合軍の弓騎馬隊は瞬く間に蹴散らされた。
「隼待て……何かおかしい」
一方、敵本陣へと近づいていた弓弦は、敵本陣の違和感に気づいていた。
「ありゃ?気づかれちゃったみたいだね。本当はもう少し近づいて欲しかったんだけど……しょうがないか。」
睦月が合図を送ると、弓弦たちに大量の矢の雨が降り注いだ。
「(丘に弓兵を……!)隼、後退するぞ!」
睦月の指示によって丘に忍ばされた弓兵の一斉掃射により、弓弦たち弓騎馬隊は後退を余儀なくされた。
「申し訳ない九条さん。丘に忍ばされていた弓兵のせいで、弓騎兵五千が四千近くまで数を減らしてしまった。」
敵陣から距離をとった、弓弦、鳴海、隼の三人は九条へと戦況の連絡をメールで行っていた。
「よくそれだけ被害を抑えられたね、流石は弓弦さんだ。それと、丘の弓兵なら気にしなくても大丈夫。もうすぐ強力な助っ人が到着する頃だから。」




