手配人
「本当に助かったよケンザキ!」
黒騎士との戦闘が終わり、アリスの魔法によりユウキが蘇生され、役割を終えたケンザキはサコンたち三人にお礼を言われていた。
「別にいいって……俺も西洋騎士と戦うのは初めてだっ
たから楽しかったし。」
結局、黒騎士を倒した報酬は剣ではなく鎧だったようで。黒騎士に体を乗っ取られたユウキの装備は黒騎士の使っていたものへと変化していた。
「今度お礼させてくれよ!また、学校でな!」
サコンに別れを告げたケンザキはログアウトをしてマジクエの世界から現実へと戻った。
(思ったより早く終わったな……まだ、夕方か。夕飯食べたら、少しだけmillionwars覗いてみるか。)
母親が作ってくれた健康に気を使われた食事を、米粒一粒残さず食べ、ケンザキはmillionwarsの世界へと潜った。
いつもより騒がしい天鷹城。皆が忙しなく動いている。
「剣崎!ちょうどいい所に来てくれた!小鴉城に向かうぞ、早く馬を用意してこい!」
火室さんに言われるがまま馬を準備して小鴉城へと馬を走らせた剣崎は、道すがら天鷹城が騒がしかった理由を聞いた。
「連合軍だよ連合軍。まだ噂の段階だけど、もし本当になった時のために金が必要だってことで、戦いが得意なやつは手配人を狩りに向かってもらってるんだ。」
倒すことで、装備と大量の金銭をドロップする手配人。だが、手配人を積極的に探そうというプレイヤーは殆どいない。なぜなら……。
天鷹城 城下町
「……俺がやられたら後は頼むぞ」
人混みの少ない夜にしか出現しないうえ、特定の場所に現れる訳ではないため探すのが困難だからだ。加えて言うならば相手は人斬りで、すれ違った際に切られていた、なんてことも少なくはない。
「誰か来たぞ、気をつけろ。」
向かい側から笠を深く被った男が真っ直ぐこちらへと歩いてくる。
(帯刀……してるな。)
剣崎は腰の刀に手を添え、火室は肩に担いだ槍を握る手に力を込めた。
「なんだよ……違うのか……」
通り過ぎた牢人(特定の主従関係を持たない武士)を見送り、周囲への警戒を怠ることなく二人は手配人を探した。
「助けてくれぇ〜〜〜!!」
しばらく手配人を探していると、離れた場所から悲鳴が聞こえ、二人はすぐに悲鳴の聞こえた場所へと駆けつけた。
「いいね……おあつらえ向きじゃねぇか。」
橋の上に立つ人斬り、人斬りの足元には悲鳴の主であるだろう骸が転がっていた。
「剣崎。油断せず二人がかりでいくぞ。」
剣崎は腰の二つの剣を手に取り、火室は槍を構えた。
「……この城の者ではないな。どこの城に所属する者か知らぬが、お命頂戴する。」
「随分と堂々とした手配人だな……不意打ちをする必要するないってか!」
火室の振り下ろした槍が、手配人に避けられ橋を叩きつける。
「某も必要とあらば、闇に紛れることもあれば、石ころを投げつけることもある。しかし、相手はたかだか二人。危うくなれば、逃げることは容易かろう。」
橋へと叩きつけられた、火室の槍を足で押さえつけたまま余裕を見せる手配人を剣崎二振りの刃か襲う。
「……一振目を防いでも、即座に二振り目で追い打ちか……自身の間合いということは、相手の間合いでもあるということ。その胆力、実に見事だ。」
一振り目の攻撃を防いだ手配人は、二振り目の攻撃を後ろへと飛び退くことで避けてみせた。
「まだ……だ!」
橋に押さえつけられた状態からの強引な突き。手配人は、たった一歩で距離を縮め、腰の刀を抜いた。
「…………ッ!」
鞘を下に引きながら、斜め上に向けて抜かれた刀は目にも止まらぬスピードで火室の首元に迫った。しかし、『居合』で来ることを読んでいた剣崎の刀が二人の間に割って入る。
重さのない引いて切ることだけを意識した『居合』は防いだはずの剣崎の刀をなぞる様にすり抜け、次の攻撃へと繋がった。
「間に合わ……!」
一瞬のことだった。瞬きする間に放たれた、二刀目が剣崎の頭に振り下ろされ、剣崎の視界は闇で覆われた。




