四つ巴の戦い
御殿の玄関前に四人の英傑が、それぞれ武器を構え睨み合う。
「こうして四人で戦うのは久しぶりだな……さて、どれだけ強くなったのか力比べというこうか!」
『四つ巴の戦い』とは、当時のプレイヤーたちの中ではずば抜けた実力だった三人が、自分たちとは違う活躍を見せる九条を混ぜて競い合っていた力比べ。
「まぁ、今回も俺が勝つだろうけ……ど!」
余裕を見せる朱羅に御影と鬼塚が同時に飛びかかる。両者から振り下ろされた長物を、すんでのところで朱羅は避けた。
「待て待て!なんで二人がかりで俺なんだよ!九条もいるだろ!」
朱羅は方天画戟を構える。
「……九条くんは戦いにくいから、最後に戦いたい。それに……」「九条は俺よりも弱いから後回しだ。それに……」
「「お前は昔から気に入らないんだよ!!」」
御影が薙刀により攻防を仕掛け、生まれた隙を鬼塚が突く。二人の連携は見事なもので、朱羅は攻撃を防ぐことしかできない。
「俺の!どこが!気に入らないんだよ!」
声を発しながら二人がかりの攻撃を防ぐ朱羅に、内心御影と鬼塚は焦りを感じていた。
「そういうところだ!誰よりも強いくせに、頭が致命的に悪い!」
「お前が作戦を軽んじるせいで、どれだけこっちが苦労したと思ってる!」
四人が天鷹城で共に戦ってい頃のこと。いつものように城を攻めるため、九条と鬼塚が作戦を練り、仲間内で共有した。
しかし、時間をかけて練った作戦の一部は敵に筒抜けで、後に朱羅が放浪プレイヤーにうっかり話してしまっていたことが明らかになった。
それ以降もこういったことは度々あり、二人はその怒りを武器に乗せ、朱羅を攻撃し続ける。
「…………ッ!」
朱羅のガードが崩れ、鬼塚が槍を突き刺そうとした瞬間、鬼塚の背後から剣が突き刺された。
「このタイミングでか……九条!」
鬼塚は倒れ、リスポーン地点である自分の城へと強制的に帰らされた。
「な……鬼塚!」
御影が朱羅から目を離した、ほんの一瞬で御影の首は地面に落ち、その場には九条と朱羅、そして二人の装備だけが残った。
「あの二人は合戦となると厄介だが、こういう戦闘ではそこまでじゃないな。まぁ、それはお前も同じだがな九条。」
「まぁ、俺じゃ朱羅さんに勝てないのは分かりきってますよね……あぁ、ついでに言っておくと俺は修羅さんのこと嫌いじゃないですよ。やっぱり圧倒的に強いひとがいるだけで仲間は盛り上がりますから。」
朱羅は九条の言葉を心から喜び、そして動いた。方天画戟が九条を襲う……はずだった。
「な……ッ!」
朱羅の体には三本の棒手裏剣が突き刺さっていた。朱羅の気づかないうちに三本が突き刺さったということは同時に三本を突き刺したということ。
「流石は九条……武芸百般。あらゆる武器を使いこなすお前らしい初撃だな。」
「……こういうのもありますよ。」
九条は腰に刺した一つの武器を取り出した。武器の名前は『縄鏢』手裏剣状の武器に縄が通されたもの。縄を回転させることにより、突き刺さった際の衝撃は通常の棒手裏剣に勝る。
九条は縄鏢の縄を、まるで命綱のように腰で固定しており、片手で剣を握ったまま、もう片手で縄鏢を回し始めた。
「迂闊には近づけない……とでも言うと思ったか!」
朱羅は全速力で九条目掛けて突撃した。現実の痛みが完全に再現されているのであれば迂闊には近づけなかっただろうが、millionwarsのダメージの再現度は微弱な電流が流れる程度。静電気のような痛みなら堪えることができる。だが……。
「……ッガ!」
当然、九条もそのことは理解している。九条は縄鏢の回転を横回転に変え、朱羅のいる方向に飛ばした。横回転に変えた縄鏢は朱羅の首に巻き付き、九条が縄を引く力に耐えられず朱羅は地面に倒れた。
「…………完敗だ、俺の負けだよ。」
九条が朱羅の体に剣を突きつけたことで、朱羅は敗北を認め、四つ巴の戦いは決着した。
「先に棒手裏剣を俺の体に投げたのは、縄鏢の攻撃の目的が縄で体を巻き取るためだと気づかせないためか?」
「えぇ、まぁ。御影さんか鬼塚さんのどちらが残っていたら勝ち残れなかったでしょうけど。ずっと前から考えてた朱羅さんを倒す方法を実演できてよかったです。」
九条にとってこれが四つ巴の戦いでの初勝利。九条にとってはそれだけの出来事にすぎないが、他の三人にとっては武器での戦闘において、九条が三人と競うことができる程に強くなっているという証明でもあった。
「ところでよ……御影のとこの鈴村に勝った剣崎……だったか?今何してるんだ?できることなら、そいつともやり合ってみたいんだが……」
「ログイン状態じゃないってことは……彼は今頃トレーニングをしてるだろうね」
「トレーニング?」
剣崎のランニングルート。
(薙ぎ払いから、切り上げ、切り下ろし、位置を変え、薙ぎ払い……………………)
剣崎はランニングをしながら、鈴村との戦闘を脳内でシュミレーションしていた。剣崎は、このシュミレーションを剣道をしていた頃からしており、自分以上の相手と対戦した時はいつもこうして、走っている。
(前から俺と同じランニング中の男の人。お互い刀だと想定して、俺だったらどう動く。)
剣崎は速度をあげて、ランニング中の男性の一歩前で片足を沈め、勢いよく右手と右足を同時に前に出して抜き去った。
(……これじゃmillionwarsで通用しない。もっと体の捻りを意識しないと……)
満足するまで走りこみ、ランニングを終えて帰った剣崎のスマホにクラスメイトから一件のメールが届いていた。
(左近がメールを送ってくるなんて珍しいな。内容はマジクエの高難易度クエストに協力してくれ?)
マジックソードクエスト 通称マジクエ。魔法が存在するゲームのため、millionwarsとは違いライトなユーザーが多い。
当然millionwars同様、レベルやステータスのようなシステムは存在せず、魔法を覚えるには詠唱を記憶する必要があるうえ、前衛職にはある程度の身体能力が求められる。
(もしかしたら別のゲームから学べることもあるかもだしな……)
『四英傑』の戦いが終わった剣崎はマジクエに挑むことを決意した。




