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怪物



 九条と朱羅が御殿へと向かってから一時間が経過した頃、対抗戦で勝利した剣崎と隼は、互いの実力を試したくなり、本来は木製の武器を使い腕を試す訓練場にて、自らの武器を用いて試合をしていた。


 (……流石は隼だな、吸収が早い。millionwarsを初めてから、まだ一週間しか経っていないのに、まるで結衣さんと戦ってるみたいだ。けど……)


 二刀流 対 薙刀。序盤は間合いに踏み込ませないよう戦う隼がリードしていたが、隼の薙刀術は結衣に『習った』以上のものではなく、九条からのアドバイスでオリジナルを発展させた剣崎が徐々に攻勢に転じ始めた。


 剣崎が二刀流へと至ってから一週間。剣崎は毎日のようにスローモーションで両手に握られた二振りの剣を振り続け辿り着いた答え。


『攻撃こそが最大の防御』。初めは守りに徹して相手の速度に目を慣れさせてから、隙をついて攻撃する隙を与えない程の連続攻撃を仕掛ける。


 二刀流による波状攻撃に隼が追い込まれ、防御に徹していると、奇妙な形の槍が二人の間に割って入った。


 「いい音が聞こえると思ったら……知らないプレイヤーだな。新人か?」


 二人は首を縦に振り返事を返す。


 「そうか、そうか!九条の所には本当にいいプレイヤーが集まるな。俺の名前は朱羅だ!お前たちの名前は?」


 「剣崎です……」「隼です……」

 

 「そうか、剣崎と隼覚えておこう。さて、自己紹介も終わったことだし……」

 

 朱羅が二人から少し離れた場所で槍を構える。


 「俺も混ぜてもらうぞ。二人がかりでいいからかかってこい!」


 剣崎と隼は顔を見合わせてから武器を構えた。


 (普段なら二人で戦うなんて卑怯な真似、絶対にしたくないけど。この人には二人でも足りないくらいだ。)


 剣崎は知識で隼は本能で悟っていた。目の前の男が自分たちよりも遥かに強いことを。


 「さぁ、こい!」


 朱羅のかけ声で隼が飛び出す。薙刀による薙ぎ払いを朱羅は石突きを下の地面に突き立てて防いだ。


 「おぉ、これはなかなか……」


 朱羅の腕力で地面に突き立てられている槍は、石突きがあるとはいえ、異様なほどビクともしない。


 「本命は君だろ?」


 朱羅の背後に回り込み剣崎を気配で捉えた朱羅は地面から槍を引き抜き、斬りかかってきた剣崎の攻撃を防ぐ。


 「お、お、お、!」


 剣崎の攻撃は止まらない。斬ると突くを織り交ぜながら朱羅に攻撃を畳み掛ける。お互い甲冑を身につけていない為、一度でも命中すれば致命傷を受けかねない状況で朱羅は笑顔を見せた。


 「いいねぇ!面白いよお前ら!」


 三人が訓練場内の一区画を使い、戦闘を繰り広げていると、三人の戦闘を見るため集まったプレイヤーでごった返し、その中には九条と杉下の姿もあった。


 「……いいんですか九条さん、止めなくて」


 「どうして?」


 「どうしてって……相手が望んた事とはいえ、仮にも城主ですよ?もしも二人が倒すようなことがあれば……」


 「大丈夫だよ杉下さん。『もしも』は起きないから」


 九条の声が聞こえたのか、朱羅は剣崎と隼から離れた場所で初めて槍を構えた。


 「……遊びはここまでだ。ここからは『暴力』の時間だ!」


 ここにきて朱羅が初めて攻撃に転じた。槍の柄を右手で持ち、大きく振りかぶり剣崎たちへと突撃する。


 (これはヤバイ!!)(これはヤバイ!!)


 二人の本能が、これから起こる出来事を予見する。大きく横振りかぶった体勢から放たれるのは、間違いなく右から左への薙ぎ払い。剣崎は距離を取り、隼は薙刀を縦に構えてガードを選択した。


 槍の間合いに入った朱羅が槍を振るう。


 朱羅が使っている武器の名前は『方天画戟』三国志演義にて呂布奉先が使用したことで有名となった武器。穂先の根元に三日月状の刃が左右対称になるように付けられた槍。


 槍としての使用方法は鎌槍と大きな変化はない。ならば何が違うか。それは『素材』。無論、刃にも特徴があるが、朱羅が方天画戟を使う理由は『よく、しなるから』


 中国の槍によく使われていた『白蝋樹』は『しなやかで折れにくい』性質を持ち、振るった際にしならせた槍は反動で大きな力を生み出していた。


 「……ガッ!!」


 朱羅の方天画戟の直撃を受けた薙刀は折れて、隼の体に方天画戟の一撃が食い込む。その一撃は非常に強力でアニメや漫画ようにとはいかないが、体を大きく吹き飛ばされた隼は一撃で倒された。


 「今度はお前だ!」


 朱羅の攻撃は隼を倒しても止まらない。再び横に大きく構えた方天画戟をしならせて剣崎を襲う。


 「…………!」


 方天画戟の攻撃を見ることで特徴を掴んだ剣崎は方天画戟を振るう瞬間、全力で間合いを詰めた。


 『しなり』は特性上、穂先が最も力の強い場所となり、槍を振るう手元に近づくほど力は弱くなる。戦闘中に特性に気づき行動に移すことができる剣崎は『天才』と言わざるおえない。だが……。


 「甘い!」


 朱羅は後ろへ飛び退きながら、右から左へ振るわれた方天画戟を逆方向に力を加えることで、しなる方向を変え、穂先の届く位置で再度剣崎に向けて振るわれた。


 途中でしなる方向を変えたことで反動は増し、朱羅の腕にかかる重さも、槍に加わる衝撃も倍増され、剣崎は隼の時よりも大きく吹き飛ばされた。


 「…………!」


 方天画戟の一撃を受けて死亡した剣崎が目を覚ますと、そこには道場のような空間が広がっており。壁には様々な武器が立てかけられていた。


 millionwarsにおける『デスペナルティ』。三十分間の道場への拘束。この間、フレンド一覧から同じく死亡したプレイヤーを招いて時間を潰すことができる。


 剣崎は隼を自分の空間に招いた。


 「やっぱ、お前でも勝てなかったか……」


 「……あぁ、控えめに言って怪物だよ、あの人は。」


 二人は何気ない会話をしながら壁にかけられた武器を手に取る。


 「今回は勝てなかったけど次は負けない。」


 「その為にも一分一秒無駄にできないよな!」


 二人はお互いの実力を高める為、今日も武器をぶつけ合う。


  

  

 


 

 

 

 


 

 


 

 


 

 

 

 

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