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二刀流



 勇の敗北の後、天鷹城の多くのプレイヤーが敗れる中、剣崎は目を瞑りシュミレーションを繰り返していた。そんな、暗闇の中シュミレーションを繰り返す、剣崎に声がかかる。


 「さて……そろそろ、君もどうだい剣崎くん。」


 九条の声で剣崎は目を開ける。


 「行けます!」


 剣崎は声をかけた九条に振り返ることなく、メニュを開き、一騎打ちイベント開始のボタンを押した。


 一騎打ちイベント開始のボタンを押した剣崎は闘技者の入場する入口へと飛ばされ、目の前には『宮本武蔵』『佐々木小次郎』の名前が刻まれた、眩い光の射す入場ゲートが配置されていた。


  (『佐々木小次郎』も魅力的だけど……今回は!)


 剣崎が宮本武蔵の扉を潜り抜けると、そこは闘技場の中央で、目の前には、あの『宮本武蔵』が立っていた。


 開始の合図はない……剣崎はすぐに『一鉄』により新しく打たれた、大小長さの異なる二振りの刀を握り、左手に持つ短刀を前へと突き出し横に構え、右手持つ打刀を上段に構えた。


 対する宮本武蔵は、やはり、他の挑戦者の時と同じように刀を鞘から一振だけ抜き、中段に構える。


 (勇さんの敗因は宮本武蔵に二天一流を使わせたこと……この戦いで二天一流は使わせない!)


 構えをそのままに、ジワジワと両者が距離を詰める。先に動いたのは宮本武蔵、運営による悪ふざけと呼ばれるほどの剛腕から放たれる、頭上からの肩に向けての一撃を短刀で捉え、力入れず、短刀の峰(刃の逆側)が自分の体に当たるようにすることで、斬撃を衝撃に変え撃ち殺した。


 がら空きになった体に上段に構えた打刀を宮本武蔵に振り下ろした。


 「な……!」


 しかし、打刀が命中する直前に宮本武蔵が体当たりをすることにより、剣崎の体制が崩れ宮本武蔵に距離を取られた。


 (逃がさない!)


 二振り目を抜かせるわけにはいかないと、剣崎は勇猛果敢に攻め立てる。


 右手の打刀による、腹部を狙った横一文字(水平に斬る)宮本武蔵からは避けようとする気配も防ごうとする気配も感じられない。むしろ、その逆で、今度こそはと、上段に再び構えた刀が剣崎の首元を狙う。


 プログラムによって作られた宮本武蔵には恐怖心というものがない。腹部を切られれば致命傷となり、時間経過で死ぬこととなるが、その前に首を落とすことを選択した。


 剣崎の一歩踏み込んだ右足が沈むと同時に横一文字に宮本武蔵の腹部が切り裂かれた。しかし、切り裂くと同時に頭上から迫る不可避の一撃。


 「……!!」


 宮本武蔵が異変を感じた。本来なら到達しているはずの刀が首に届いていないのだ。


 (ここで、もう一歩前に!)


 剣崎が膝を抜くことにより生まれた、頭一つ分の余裕が剣崎の体をもう一歩前へ突き動かした。


 「ドスッ」という鈍い音と共に宮本武蔵の首に剣崎の短刀がくい込んだ。観客席から勝利を祝う大歓声が響く。


 (ここまでやれば選ばれるだろう……後は!)


 剣崎には歓声など聞こえてはいなかった。剣崎の意識は依然倒れずにいる、目の前の作られた大剣豪にのみ注がれていた。


 二天一流。二振り目の短刀を宮本武蔵が抜くと同時に観客席の歓声が静まり返る。


 「いざ、尋常に……勝負!」


 宮本武蔵の構えは中段。二振りの大小異なる刀を切っ先を合わせるように持ち、相手の視線に合わせる。剣崎の構えは変わらず、左の短刀は中段で右の打刀は上段。


 宮本武蔵に残された時間は残りわずか。戦いを急いだ剣崎が先に仕掛ける。両の手により突き出された大小異なる大きさの刀が剣崎を牽制する。


 「……!」


 剣崎の体が宮本武蔵を前に急ブレーキをかける。近づけば近づくほど理解させられる、隙のなさ。


 どの角度から切り込もうにも、突き出された二振りの刀が邪魔をして、宮本武蔵の体には届かない。


 (……ならば!)


 宮本武蔵の刀の届かない距離で宮本武蔵を翻弄するように剣崎は構えを解き、全力で走り回った。


 宮本武蔵は体を動かして、動き回る剣崎に狙いを定め続ける。


 (ここ!)


 急激な方向転換による、一瞬の硬直。右手に握った刀を再び上段に構え、宮本武蔵の左手を狙った。しかし……。


 「が……っ!!」


 宮本武蔵は腕を庇おうとする様子を見せず、それどころか差し出した左腕と引き換えに、右手の刀で剣崎の喉を突き刺した。


 剣崎の視界が霞み、倒れる前のほんの一瞬、剣崎の前から宮本武蔵が姿を消した。

 

 


 


 


 

 

 

 


  


 

  

 

 

  

 

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