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一騎打ちイベント開催



 剣崎と鳴海の訓練場での特訓から六日が経ち一騎打ちイベント当日。六日間の間リアルでもゲーム内でも特訓を重ねた剣崎は、土曜の朝、指定された時間に天鷹城の天守閣の前やってきていた。


 「今回の一騎打ちイベントのNPCは誰なのか」という話題で天鷹城の天守閣前に集まったプレイヤーが盛り上がる中、剣崎は目を瞑りシュミレーションを繰り返していた。


 「みんな、今日はよく集まってくれた!早速、始めようと思うが……最初に挑戦したいという人は名乗り出てくれ!」


 天守から聞こえる九条の声に集まったプレイヤー全員が上を見上げ、一人のプレイヤーが名乗りをあげた。 


 「最初は俺がやりますよ!ただ、何も相手の情報が得られていない状態で戦うんだ。優しく採点してくださいね!」


 「では、火室さんにお任せします!火室さんが一騎打ちを開始したら、メニューを開いて城内のプレイヤーの中から火室さんを選択して、一騎打ちを観戦を押してください!」


 九条さんの説明が終わると、火室さんの姿は消え。続くように九条さんの指示に従い、メールで以外では使うことの少ないメニューを開き、城内のプレイヤーの中から火室さんを選択して、複数の項目の中から一騎打ちを観戦を選んだ。


 一騎打ち観戦を押すと同時に、天守閣の前にいたプレイヤーたちは古代のローマのコロッセオのような闘技場の観客席へと移動させられていた。


 「火室、頑張れよ〜!!」「簡単に負けるんじゃねぇぞ〜!」


 などという野次の向かう先、闘技場の中央には二振りの大小異なる長さの刀を腰に携えた百八十センチ以上の大きさの男と、火室が向かい合っていた。


 一騎打ちイベントに開始の合図はない。闘技場へと足を踏み入れた時点で戦いは始まっている。


 槍を構える火室に対して、男は打刀を鞘から抜いた。


 「まさか、有名なあの剣豪と戦えるとはね……」


 火室の独り言は当然、観戦しているプレイヤーたちには聞こえていない。当然、目の前の男に対して話している訳でもない。誰もが知る男が目の前に立っている、その事実を飲み込むため自然と口から出た言葉だった。


 (動く……)


 観客席から見守っていた、天鷹城の多くのプレイヤーは、火室が一歩前に踏み出した左足を深く沈めた瞬間、先に仕掛けることを確信した。


 深く沈めた左足で勢いよく地面を蹴り、右へと体を深く捻り、一歩で槍の間合いへと距離を詰めた。


 地面を左足で蹴ることにより生まれた力を右足で踏みしめる際に地面にではなく、まるで倒れるように前へと、力を槍に乗せて放った。


 力の連動による強力な刺突。並大抵のプレイヤーでは避けることさえ叶わない一撃。


 「な……!」


 火室の目の前に立つ男は、その一撃を避けるでも、受けるでも、捌くでもなく、あろうことか掴んで見せた。


 男の手に握られてしまった槍は、火室がどんなに力を加えようと押し込むことも引くこともできず、男が右手に持った打刀により火室は一撃で首から腰にかけて切られ、倒されてしまった。


 「くっっそ!ふざけんなよあの野郎、舐めやがって!」


 死亡した火室は観客席へと移動させられると同時に、悪態をついた。


 「まぁ、あれだけあっさりやられたんじゃな……」


 火室は天鷹城の中でも五本の指に入る槍の達人。そんな火室がいとも容易く負けたことに観客席で見ていた天鷹城のプレイヤーたちは驚きを隠せずにいた。


 「負けたことはいいんだよ!俺の実力が足りなかっただけだからな……だけど、あいつはもう一本の刀を抜きやがらなかった!」


 もう一本……その一言で、火室と相対していたNPCの正体にその場にいる誰もが気づいた。


 「今回のNPCは宮本武蔵か……」


 「……正確に言うには、今回の一騎打ちイベントに登場するNPCは巌流島の二人だ。」


 巌流島の二人。二天一流 宮本武蔵。巌流(岩流)佐々木小次郎。日本人ならば、誰もが知る二人の剣豪。観客席にいるプレイヤーたちは、作られたものとはいえ、剣豪と戦えることに感情が昂ると同時に、頼りになる仲間が圧倒的な実力を前に敗れた事実に戦う前から意気消沈してしまっていた。


 「今までの一騎打ちイベントもだが、これは勝てるように調整されてないな。九条さん、今からでもあんたが対抗戦のメンバーを決めるべきだと思うぜ。あんたが決めたんなら誰も文句は言わないだろうしな。」


 火室の意見はもっともなものであった。過去に行わていた一騎打ちイベントも今回と同様に、およそ倒せるとは思えない強さに調整されており、ほとんどのプレイヤーたちは倒せると考えて挑んでなどいなかった。


 「……誰も敵わないようなら火室さんの言う通り、僕が決めることにするよ。さぁ、次に行きたい人!」


 先程の一振で倒された仲間を見た天鷹城のプレイヤーのほとんどが、戦う気が削がれていた。


 「……俺が行こう。」


 天鷹城の副城主が、低い声でそう言いながら、メニュー画面開くと、次の瞬間には闘技場の中央、宮本武蔵の前に立っていた。


 


  

  

 


 

 

 

 

 

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