54話:合格です
「アンブローズ公爵令嬢、わたしは君のことがずっと好きです」
えっ……!
「幼い頃に出会って、君に励ましの言葉を言われた時に、恋に落ちていました。君の性格が変わろうと、婚約者ができようと、目が離せなかったのです。自分でも不思議でした。ですが強烈な一目惚れをしていたので、もうどうにもなりません。君はわたしの心を捕らえ、ずっと離してくれないのです」
これには……もう、驚き、目が点。
何か言おうとするが、声にならず、口をパクパクさせてしまう。
「君が勘違いしている意中の令嬢。それはメリディアナ・リズ・アンブローズ、君のことです」
「ふあっ」
驚き過ぎて変な声を出してしまい、エリダヌスが秀麗に笑う。
「衝撃的でしたか? わたしは不思議でならないですが。これまで好意をそれなりに示してきたのに。本当に、お気づきではなかったのですね」
すべて、すべて、推しの親切心だと思っていた……!
「返事、すぐにいただきたいです。さすがにわたしも我慢の限界。もしも君もわたしと同じ気持ちなら。君の名を呼ぶので、頷いて目を閉じてください」
な、なんと……!
これは現実なの?
でも耳には先程から花火と楽団の演奏、人々の喧噪が聞こえた。
それはこれが現実だと教えてくれている。
「メリディアナ公爵令嬢。わたしを君の伴侶にしてください。わたしの求婚、受けてくれますか?」
「!」
核心を突く一言。
これは間違いない。
そして頷かないわけにはいかない!
急いで何度も頷くと顔を手で押さえられた。
「目を閉じてください」
そうだった!と思い、目を閉じると……。
ふわりと鼻孔に届くアクアの爽やかな香り。
唇に感じる優しく甘い感覚。
推しに、好きという気持ちが沢山込められたキスを……されていた!
◇
“花恋”こと『花と恋~ドキドキ学園生活~』という乙女ゲームの世界に転生していると気付いたのは、断罪終了後だった。
もう詰んだ状態でいきなり死の危機に直面し、まさかの推しに助けられた。
でもその時の推しは氷点下の冷たさで……。
どうなるかと思った断罪後の私の人生は、娼館から再スタートで、その後、いろいろなことがあった。最終的に裁判で勝利を手に入れ、執拗なヒロインともようやく離れることができた。幼なじみを害するよう指示した黒幕も、国王と宰相の手で逮捕されている。
そして……まさかの推しからの溺愛プロポーズ。
全てが詰んだ後の悪役令嬢、命の危機に瀕したが、悪いことばかりではなかった……!
しかも彼は“私”のことをずっと好きでいてくれた。
「メリディアナ、出発ですよ」
「! はい、ウェリントン団長!」
「君はわたしの部下ではないのですから。これからはエリダヌスと呼ぶ約束でしょう」
そう言うと、マントと共に、完璧コーディネートしたオーダーメイドの衣装を着たエリダヌスが、優美に微笑む。これは私が選び、プレゼントした衣装一式だ。
ああ、眼福。尊い……!
「ちゃんと、わたしの名を呼んで」
抱き寄せると、自身の鼻を子犬のように私に摺り寄せながら、推しがおねだりをする。
キュン死そうになりながら、私はなんとか答える。
「エリダヌス様」
「様、は不要です」
「エリダヌス……」
「合格です」
そう言って輝くような笑顔のエリダヌスの唇が、私の唇にそっと重なった――。
お読みいただき、ありがとうございます!
ハッピーエンドの本作、読者様が楽しめたなら嬉しく思います。
よろしければ
☆☆☆☆☆をポチっと、評価を教えてください!
【完結】一気読み派の読者様へ
『悪役令嬢は我が道を行く
~婚約破棄と断罪回避は成功です~』
https://ncode.syosetu.com/n7723in/
【『風媒花とヒヤシンス:変わらぬ愛の物語】が完結。
章見出しに登場する風媒花の謎も解けます!
ページ下部に目次ページへ遷移するバナーを設置済み!
読みやすい全10話をご覧いただけると幸いです☆彡


















