50話:私にぞっこんのようね!
どう見ても高位貴族の令息が、私に声をかけてくれた!
これには嬉しくなり、勿論、快諾。
この美貌な貴公子が私のエスコートを始めると、道が拓ける。彼が「失礼」と声を掛けながら歩き出すと、振り返り、彼を見た令嬢マダムは……喜んで道を譲った。紳士たちは彼に圧倒され、自然と道を譲っている。
そんな眉目秀麗な貴公子にエスコートされている私は……もう鼻高々だ。
しかも!
「レディ、わたしはこれから第一会場へ向かうのだけど、それでもいいですか? 無粋な質問だったかな。どう見ても君は高位貴族。招待状を持っているよね。でもここはわたしの同伴者として入場すればいい」
私が高位貴族に見える。
これには頬が緩んで仕方ない。
それに。
なんてついているのかしら!
第一会場へ入場できるなんて。
しかも招待状を持っているということは!
この美貌の貴公子は間違いなく、高位貴族確定だ。
第一会場の入口には、警備兵がズラリと並び、招待状は騎士が確認していた。
貴公子が招待状を渡すと、騎士が姿勢を正し、敬礼している。
その様子に同伴されている私は、またも鼻高々だ。
リギル殿下はこの仮面舞踏会に、私を同伴してくれようとした。だがその時はまだ、あの澄ました顔の公爵令嬢が、婚約者としてのさばっていたのだ。ゆえに私は第一会場に足を踏み入れることはできなかった。
よって今回、初めて第一会場に足を運んだのだけど……。
すごいわ。
まるで宮殿の中にいるようだ。
元々庭園に飾られている彫像もあったが、それがランタンに照らされることで、存在感が増す。さらに黄金の装飾品が、庭園の木々や草木に飾られているのだ。こちらの黄金もランタンの明かりを受け、キラキラと輝いている。
あちこちに天幕が設置され、そこには宮殿の一室にあるようなソファや椅子が置かれ、そこで貴族達は寛ぎ、お酒や軽食を楽しんでいた。ひと際ゴージャスな天幕には、王族達がいる。
そこを見ると、忸怩たる思いになる。
本当は、私はあの場にいるはずだったのよ!
それをメリディアナに奪われた……。
そう言えば、あのメリディアナもここに来ているのかしら?
周囲を伺おうとすると、美麗な貴公子に「ダンスはいかがですか、レディ?」と尋ねられた。彼とダンスを踊れば、私に注目が集まる! 当然、これは快諾だ。
早速、ダンスが行われている一画に向かい、気品あふれる貴公子と向き合う。
曲はすぐにスタートした。
メリディアナもこの会場にいるなら、この麗しの貴公子とダンスする私を見て、歯ぎしりするに違いない。例えリギル殿下と破局しても、もうこんなにイイ男を同伴しているのだと、メリディアナが悔しがることを期待した。
そう思い、秀麗な貴公子とのダンスに臨んだが……。
この仮面とかつらで、私であると……気づかないかもしれない。
現に今も、顔の半分を覆うハーフマスクやフルマスクの仮面をつけている人は正直、誰なのか分からない。例え目元を覆うアイマスクだけでも、あるとないとでは印象が変わる。それに仮面舞踏会の時は、アイマスクだけではなく、かつらを被り、衣装に趣向を凝らす。
そもそもメリディアナを見つけることができなければ、あっちも私に気づかないということ。
残念だけど仕方ない。
「レディ、ダンスが上の空ですね。わたしとのダンスは、つまらないでしょうか?」
「! 失礼しました。そんなことはございませんわ。少々緊張してしまい、上の空になっていたようです」
「そうでしたか。でもダンスもいいですが、少し二人きりでお話をしましょうか」
二人きりで話したいですって!
完全にこの品のある貴公子は、私にぞっこんのようね!
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