47話:野垂れ死んでいると思ったのに
メリディアナがリギル殿下から婚約破棄されるような埃がないか。
探すことにした。
でも……。
ない。
さすが才色兼備の優等生。しかも公爵家の令嬢。
非の打ち所がない。
些末な嫌がらせのでっちあげは、いくらでもできる。
でも婚約破棄につながるようなものではない。
それに現状だと、婚約者のいるリギル殿下に言い寄ったと、私が悪者にされかねないのだ。それは困る。私がリギル殿下と婚約しても、皆から、納得してもらえなきゃダメだ。
何か方法は……。
そこでメリディアナの粗探しはやめ、いかにして私が悲劇のヒロインになり、皆の同情を買い、そしてリギル殿下の婚約者に収まることができるか。それを考えることになった。
それから一週間後。
方法を思いつく。
それは完璧に思えた。
なんだかんだで卒業舞踏会が近い。
この栄えある舞踏会の場で、メリディアナを蹴落とし、私がヒロインになる。
リギル殿下に相応しい令嬢が誰であるが、みんなに知らしめるつもりだった。
時間もないので、リギル殿下に発破を掛け、動き出したが……。
「ラーン、本当にそこまでやる必要があるのか?」
当日になっても、まだ及び腰。
一線を超えるギリギリのこともしているのに!
不甲斐ないわ。
でもなんとしてもリギル殿下を手に入れる。あのツンと澄ましたメリディアナから、絶対に奪ってやると決めた。
私の方が愛らしくて好かれる令嬢だって、思い知らせてやるんだから!
怒鳴りたくなるのを我慢して、私はにっこり笑顔で答える。
「ええ、必要よ。相手は公爵家。娘が婚約破棄されたとなったら、正統な理由がない限り、噛みついて来るでしょう。向こうが一切抵抗できない事由を用意しなきゃダメなのよ」
「まあ、それはそうだね」
打っても響かない、生温い返事。
仕方ないのでダメ押しで畳みかける。
「それに本当に轢かれるつもりはないわ。わざと飛び出して、直前でちゃんと避けるから、問題なし。御者は買収済みで、私が飛び出すことも話している。ちゃんと避けてくれるわ。それに馬車にメリディアナ以外が同乗していても、その証言は主や身内を庇うものと見なされるはず。私を信じて、リギル殿下!」
そこでようやく、リギル殿下が笑顔になる。
結婚したら完全に尻にひける。御しやすいリギル殿下。
そこで私は計画通りに動く。
馬車の御者は買収済み。
行くわよ――。
◇
計画通り、上手く行ったのに。
私は轢かれそうになり、メリディアナはその罪に問われ、卒業舞踏会でリギル殿下から婚約破棄された。私はリギル殿下の新しい婚約者として内定もしているのに……。
黒の塔へ連行されるはずのメリディアナが消えた。
その場にいた宰相の息子や兵は殺害されたのに、メリディアナの遺体はなく、行方をくらましたのだ。当然、メリディアナが犯人。彼女を救おうと父親である公爵が手を回した――そう思ったら……。
暗殺者ギルドの仕業だと言うのだから、驚くしかない。矢のべインが公爵家の私設騎士団のものではなく、暗殺者ギルドのものであると、匿名で情報が寄せられたという。
全く。この期に及んで、メリディアナはなかなかしぶとい。
そもそも暗殺者ギルドになぜ、害されなかったのかしら?
悪運の持ち主ということ?
ともかくメリディアナは消え、リギル殿下は全力でその行方を追わせた。どうやら南へ向かい、隣国へ逃げ伸びようとしている……という情報までは手に入っている。南へ兵を向かわせ、隣国にも連絡をとっているが、行方は分からない。でも容疑者であることに変わりなく、見つかり次第、黒の塔へ連行となっている。
勝者は私と決まったのだ。メリディアナのことは気にしなくていい。それよりも正式な婚約に合わせ、婚約式の準備など、すべきことがある。そちらに集中した。
ところが!
まさに青天の霹靂。
突然、隣国で野垂れ死んでいるかと思っていたメリディアナが、提訴をしたのだ。リギル殿下と私に対して! ここからだ。ここから私の計画が狂い始める。
証人がいると分かり、でもそれは論破できると弁護士が言ったのだが、もう一人、証人が現れたのだ。しかもそれは轢き殺し未遂の事件の際、馬車で手綱を握っていた御者が証言台に立った。
これは……本当に予想外。母方の親戚の領主のところで、この御者は預かってもらっているはずだった。それがどうして王都にいるのか。しかも証言台に立つなんて!
最悪なのはリギル殿下だ。


















