翔の決意表明 朝陽?
通りすがりのスーツケースのタイヤの音で我にかえると亜紀と翔が側にきていた。
「亜紀、僕らは、もう、おいとましよう」
翔は失礼と言って、バックを足元に置き、大きくあくびをして両腕を伸ばした。
その姿に、くすっと笑った高坂さんが思い出したようにポケットをさぐって、
「ホント、眠そうだね。これ、もう封が切ってあるけど、気休めにどうぞ」
翔はお礼を言い、差し出された白いケースを受けとり、すぐにタブレットを数個出して口に入れ、ガリガリと噛む。
周りにふんわりとスペアミントの香りが漂う。
高坂さんは翔が返そうとしたタブレットのケースを押しとどめた。
「あげるよ。少し安心したせいかな? 急に眠気が出たのは」
翔は、ちらっと、上目づかいで高坂さんを見て、口元にニヤッと笑みをのせて、瞳を伏せた。
「時差ボケなんて、あなたには通用しなさそうだなぁ。そうです、ね」
「僕が、ちゃんとおせっかい出来てたら、あとは、ホント、君次第だよ」
「俺も、これから本気です」
高坂さんは、小さくうなずいてから、瞳を細め、ふんわりと微笑んで、
「次も、また〝来る″のかな?」
何かに突かれたように、痛そうな表情をした翔は、一瞬、私に視線を向け、すぐに、高坂さんを見た。
「随分前から、考えてるんですけどねー。選択肢としては、こっちの方がアリかもって」
亜紀も交えて、三人とも、うなずいて微笑んでる。
私は、笑えず戸惑いながら、ただ三人を見回すだけ。
聞いてても、全くわけのわからない会話。
でも、三人は通じてわかってて、私だけが疎外感、なんなの?
「亜紀さん、高坂さん、今日はありがとうございました」
と翔はふたりに頭を下げた。
亜紀と高坂さんはお互い顔を合わせてから、彼の方に向いて、うなずいて、
「またね」
と言って、帰っていった。




