翔へのフォローは朝陽の戸惑い
「何が、でしょうか」
思わず、低い声が出た。
とたん、彼は眉を下げ、微笑む。
それは優しそうで頼りがいのある大人の顔。
「君たち、朝陽さんは、本音で話せないでしょう? 遠慮じゃなくて、怖いから」
ドキンと心臓に嫌な一音、ひととき、呼吸が止まった。
「えっ?」
とくとくと早くなる心音を収めるように、胸の前で、指を組んだ。
「画面越しでもケンカしたり、機嫌を損ねたり、気まずくなって、シャットアウトされたら、どうしようもなくなるから」
「でも、翔、とは、そんな風になる話し、なんて」
ないんじゃない、しないよ、気をつけてる。
だって、怖い。
翔が、もう会いに来てくれなくて、離れてしまう気がして。
「彼は何かあったら、すぐにでも駆けつけるだろうけど。君は、自分から行けないから」
その通りだ。
彼らは、今回みたいに短い滞在になっても会いに来てくれる。
「お母さんや翔を怒らせたり、呆れさせるようなことは、しない。気を使わせるようなことも。当たり前です、離れて暮らしてるんだから」
突き放されること、置いてきぼりが怖くて、心配させるようなことも無いように暮らしてる。
彼らがいつ来ても、部屋はきちんとして。
恋だって、お母さんや翔が安心するような相手じゃないとって。
すねたり、わがままだって、ふたりが気を使わない程度に。
自分から、許しを請う様な事はしない無いように。
だって、直接、会いに行けないから。
でも、翔も、桃のジュースの事は言い出せてなかった。
私が、がっかりするとこを見たくなかったかもしれない。
自分のせいで、相手が消沈するのは、嫌だもの。
「それは、お互いだと思いなさい。彼には、もう少し甘えたっていい、頼りにしなさい」
「弟、に?」
高坂さんは、微笑みながら、小首をかしげて、うなずいた。
「一度、フィルタを外しなさい。もう一度言うけど、考えて。そうしたら、ふわっと自然にわかるよ」
フィルタ?
はっと思い浮かんだのは、〝姉さん〟と呼ぶ、翔の声。
なぜだろう、それを振り払うように頭を何度も振る。




