翔の独り言と家族の思い
これまでの会話の流れで、翔のセリフは意味不明。
おまけに聞き捨てならないワードが出た。
思わず、顔を彼に寄せる。
「男っ気?」
そして、なぜ〝安心〟なの。
彼はそのままの姿勢で続ける。
「だって、貰ったアクセサリすら、俺に、いる? なんて聞くし、バレンタイン他の男の分ないし、お泊りまでのプロセスにたどり着くの遅いし、腕組んで歩くの慣れてないみたいだし」
相当、私を観察してたなー。
翔だって、勘がいいというか、さ。
そして、理に適っている事実だが、よくも、つらつらと言えるもんだ。むしろ失礼だよ。
「イブも遅く帰っていないし、クリスマスは早朝からマンションで起きてるし、バラの花束を貰うことの反応の悪さとか、このホテルだって、いつか男と泊まる可能性、全然、考えてないし」
も、さ、口に出さんでいいこと。
まだ、言うか。
両手をグッと拳に握る。
目の前の頭をグーで叩きたいのをこらえて、声を押し殺したように言う。
「男っ気なくてなにか?」
「んー、やっぱり、こっちに来ようか。でもなー」
イヤイヤ、今度はホント意味不明なこと言い出すし。
イラッとして、翔の頭の両脇をがしっと掴む。
「何言ってんの」
彼は私の手首をつかんで、顔を上げた。
「朝陽の心配、だよ?」
翔は、思っていた表情と違い、瞳に強い光を宿れせて私を射抜くように見つめた。
たじろいて体を引く。
手首を握られているので、ほんの少し胸をそらした程度。
「これからだって、こんな心配するよ、俺。変わんないよ、ずっと」
「でも……」
言葉は、続かない。
だって、思いがけないこと言われてるから。
「それは家族だから、母さんも同じ。それをちゃんと伝えたくて、わかってもらいたくて来たんだ」
ことんと翔は私の肩に自分の額を乗せた。
彼の暖かい息が鎖骨にあたり、柔らかい髪が首筋にふれて体が固まる。
「俺は朝陽の側にいたいし、側にいてほしい、そう思っている。今は、そうじゃないけど、でも」
彼は少し震えながら、体を緊張させて、話しをしている。
「待ってて。ちゃんと……、考えてるから」
ふと、何かに気づいたように、翔が顔を上げ、困ったような泣きそうな顔をして、ほんの少し触れるくらいの優しい指先で頬に触れる。
知らないうちに、涙がこぼれてたから。
「朝陽が寂しいのも、わかってるよ。俺、も、母さんだって、同じだよ。いつだって」
お母さんも翔も家族でいられると側にいたいといってくれる。
私の寂しさもわかってくれて、考えてもくれてること。
その言葉に甘えようと思う、今は。
「……ありがとう」
本当は、笑顔で伝えたかったけど、なんだか、顔に力が入らない。
自分の意思とは無関係に瞳が閉じていく。
翔が、何かを言っている気がしたけど言葉が耳に入ってこない。
体がふわっと前に倒れていく感覚があって、そのあとは覚えがない。
もう何も考えられない、頭に入れたくない、キャパオーバ。




