朝陽と翔とお母さんと
「母さんもそうやって、朝陽が自分がひとりぼっちになるって追い詰めるんじゃないかって心配してた。本当は一緒に来るはずだったんだけど……」
モニタで見ていたお母さんが痩せたような気がした。
体調を気づかったら、頬に手をあて困ったような微笑みを一瞬した。
お腹に手を置く仕草も。
お腹が痩せてるなんて、モニタから見ていなかったのに。
それがずっと、気になっていた。
そのタイミングで翔がひとりで日本に来た。
ピースを順々に埋めれば、わかること。
病気なら現地からでも言えるはず、だから。
「赤ちゃん……子供できたの、よね」
「え?……なんで」
翔の握る手の力が緩んで、私の両手がふらっと下に落ちた。
そして、はぁーっと長いため息。
それは、肯定ということ。
私は自分勝手だ。
いよいよ自分の居場所がなくなることの不安しかない。
翔に家族でいてほしくて姉さんと呼べと言いつつ、その彼に家族が増えることに喜べない自分に嫌悪する。
自分のことばかり。
翔だって、こんなにおめでたいこと喜んでいるはずだ。
こんな私がいるとそれに水を差す。
翔にもお母さんにも、あのパートナーもきっと、気をつかわせている。
悲しさよりも、激しく落ち込んできた。
涙が完全に引っ込んで、気持ち悪いくらいの後悔が襲ってくる。
もう、ここに、翔の近くにいたくない。
テーブルに置いたバックを奪うように持ち、ドアに走った。
「あ、朝陽!」
ドアノブに手を伸ばした瞬間、後ろから羽交い締めされるように抱きしめられ、手が引っ込んだ。
カッと頭に血が上る。
「離して! 帰る!」
「ダメだよ。帰さない!」
翔の怒鳴るような声に負けないようにもう一度、体に力を入れる。
「ほっておいて!」
「朝陽! 聞いて!」
泣き出しそうな声音に変わって、はっと息をのむ。
それでも、名前で呼ぶの。
姉さんって呼んでってあんなに言ったのに。
「ここにいて、朝陽」
もう、ダメなんだ。




