朝陽の家族
ツインの部屋は思ったより、広かった。
部屋に入って、ひと通り冷蔵庫、トイレやバスを見たり、窓の端から端へ移動しながら外を角度を変えて眺めた。
その間に、翔はバックの中から、可愛いラッピングの箱を二つ出して、私に差し出した。
一つは母おすすめのアロマのバスソルトとオイル、もう一つの箱は有名ブランドのロゴが入っていてネックレスだそうだ。
受け取ったほんのりラベンダーの香りがする箱をなでて、二つともバックにしまう。
それを待っていたように、翔が喉をんんっと一回鳴らした。
少し、身構えてバックをテーブルに置き、彼と向き合う。
「母さん、あのパートナーと一緒になる、結婚する」
〝あのパートナー〟あのチョコ売り場で会った人だ。
お父さんが亡くなって何年も経つし、とうとう来たと思った。
秘めた恋、「伝えられない恋は、つらいわね」お母さんも、だったね。
パートナーを得るのは、お母さんの方が早かった、ね。
私、間に合わなかったのか。
いずれくるだろう、こういうとき。
嬉しくて。
お母さんよかった、おめでとうって言うんだって。
けれど、実際は。
笑顔にしようとしても顔の筋肉が引き攣るのがわかる。
口元だけ、無理矢理、どうにか引き上げることができただけで。
「そう、なんだ。そう、かぁ」
これ以上、続かない。
頭の隅のいつもシミュレーションしてた言葉は、口に出てこない。
彼は私の表情を見て、痛そうに顔をしかめた。
「朝陽、いい? 母さんの結婚」
嫌な言い方だけど、ちって舌打ちしたくなる。
そんなこと、私の了解が必要なの?
「私に何か言う権利ないじゃない」
翔の母親に似ている顔を見ていたくなくて、瞳をそらし、うつむく。
「朝陽」
うつむいている視界に、私の腕に触れようとする翔の手が入った。
はっと違和感に気づく。
ずっと、何かが引っかかっていた、こと。




