ホテルと朝陽と翔
私の部屋をでて、夕飯を食べて、今度は翔のホテルに行くことになった。
お母さんひとりのときは、私の部屋に泊まるけど翔が泊まれないから、日本での滞在はいつもふたりとも、大体、ビジネスホテル。
でも、今回は、ちょっといいホテルに泊まってる。
お母さんからのプレゼントを部屋に置き忘れたという彼にお願いした。
「ホテルの中を見てみたい」
新築のホテル、一度入ってみたいと思っていたから。
翔はうなずいて、
「うん、部屋まで来ていいよ。ここで、ちょっと待ってて」
フロントでキーの手続きを待ってる翔の背中から、視線を外して、ぐるりと周りを見渡す。
ポーターが荷物を持って、お客を案内したり、台車にスーツケースを載せて運んだりしてる。
なんだかキラキラしてる感じの広いロビーに高い天井、大きなフロントには何人かのコンシェルジュ。
明らかに日本人じゃない人達、ふわっと耳に入る英語以外の外国の言葉。
やっぱり、訪日する外国の人、多いんだなと、こういうところで改めて、実感する。
多くのひとが動いているのに、バタバタしていなくて、ゆったりな雰囲気。
ほーっと息を吐きながら、天井を見上げて、つぶやく。
「場違いな感じ、私」
翔が、カードキーをひらひらさせながら、
「今回は特別だよ。こんなとこ、いつもなんて泊まれない」
「だよね。こういう、いいホテルって、入るチャンスなかなか、ないからなー」
「でも、朝陽んとこ、男は泊まれないなら……って」
翔は話しながら、急に余計なこと言ったというように、口をふさいだ。
「そうだよね。ごめんね、毎回」
「いや、そうじゃなくて……」
小首をかしげて、彼を見ると、口元の手を拳にして、うつむいてる。
そして落ち着きなく、拳を口にトントン当てながら、
「ん、まだ、そのほうが、いいか」
「どうしたの? 耳、赤い」
ちらっと、口に拳を当てたまま、私を見て、ため息をつく。
「なんでも、ない」




